著者
野崎 真澄 堤 俊夫 小林 英司 竹井 祥郎 市川 友行 常木 和日子 宮川 和子 上村 晴子 辰己 佳次
出版者
日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.p156-168, 1976-06
被引用文献数
3

The spawning habit of the puffer, Fugu niphobles (Jordan et Snyder), was observal at Arai Beach and Aburatsubo Inlet from late May to early August in 1975. One spawning ground was found at Arai Beac (A in Fig.1), and four at Aburatsubo Inlet (B-E in Fig.1). The puffer laid eggs on any spawning bed with sandy (A), pebbly (B, C and D) or rocky shores (E). They spawned at beaches facing any direction (Fig.1). The spawning season extended from May 25 to July 28. Spawning ran 5-7 days at Arai Beach, and 2-6 days at Aburatsubo Inlet following each full or new moon. A large school of puffers, consisting of about 1000, approached each spawning bed with the rising tide. Spawning took place repeatedly in small groups of 10-60 puffers only in the evening high tide. Each spawning observed at Arai Beach started 110±6 minutes and finished 39±8 minutes before the full tide, except for the first day. Thus, most of the eggs were washed away from the beach by waves. The number of spawnings by small groups ws very small on the first day and became highest on the 3rd or 4th day. There was no difference in total length between males and females found at the spawning beds. The number of females was notably less than males. A large school of puffers approached the spawning beds with the rising tide in the morning, but spawning was not observed.
著者
竹井 祥郎 宮野 悟 兵藤 晋 井上 広滋 坂内 英夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

海は概して生物にとって棲みよい環境であるが、海水の高い浸透圧はそこに生息する魚類に脱水という試練を与える。海水中における体液調節にはホルモンが重要な役割を果たしていると考えられるが、陸上動物におけるバソプレシン・バソトシンのようなきわめて重要なホルモンはまだ見つかっていない。私たちはバイオインフォーマティクスの第一人者である医科学研究所の宮野教授のグループと共に、フグやメダカなど真骨類のデータベースからナトリウム排出ホルモンを探索した。その結果、ナトリウム利尿ペプチド、アドレノメデュリンなどのナトリウム排出ホルモンが真骨類で多様化しており、独自のホルモンファミリーを形成していることがわかった。さらに、これらナトリウム排出ホルモンが強力な海水適応促進作用を持つことが明らかになった。心臓のホルモンである心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、飲水抑制作用、腸からのナトリウム吸収抑制作用、鯉の塩類細胞を淡水型(吸収型)から海水型(排出型)に変える効果を持っ成長ホルモンやコルチゾルの分泌を促進する作用、尿のナトリウム濃度を上昇させる作用、などを持っ。ANPを海水ウナギに投与すると、飲水量と腸におけるナトリウムの吸収が抑制されるため、血疑ナトリウム濃度が減少する。いっぽうANPの抗体を投与して血液中のANP.をなくすと飲水量が上昇して血漿ナトリウム濃度が上昇する。また、腸のホルモンであるグアニリンは、腸の管腔側に分泌されて上皮細胞の管腔側の膜にあるクロライドチャネルを活性化してナトリウムを分泌させる。その結果、Na-K-2Cl共輸送体が活性化されて水の吸収が促進される。このように、グアニリンは哺乳類ではClを管腔に排出させることにより下痢を起こさせるホルモンであるが、魚類では2分子のClを排出することにより4分子のイオン(Na, K, 2Cl)を吸収するためそれにともない水が級数され、その結果海水適応が促進される。以上、本研究によりこれまで未知であった主要な海水適応ホルモンが明らかになってきたといえる。
著者
海谷 啓之 竹井 祥郎
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.13-27, 1997-03-15 (Released:2011-08-04)
参考文献数
46
被引用文献数
1
著者
塚本 勝巳 西田 睦 竹井 祥郎 木暮 一啓 渡邊 良郎 小池 勲夫
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2000

5年間の研究活動により,次の研究成果を得た.【総括班】海と陸の物理・化学的環境特性と生物の生活史特性を比較することにより,陸の生命について得られた従来の生命観とは異なる「海の生命観」を考察した.【生命史班】魚類全体の大規模分子系統樹を構築した.DNAデータの時間較正を行い,条鰭類の根幹を構成する主要な系統間の分岐年代を解明した.深海化学合成生物群集の主要な固有動物群について,生態学的調査と分子系統学的解析によって,それらの進化過程の全貌を明らかにした.【機能系班】心房性ナトリウム利尿ペプチドが新しいウナギの海水適応ホルモンであることを生理実験で証明すると共に,その分子進化を明らかにした.アコヤ貝の貝殻形成に関わる新規基質タンパク質を同定し、そのアミノ酸およびcDNA配列を決定すると共に,その発現部位を明らかにした.ワムシの個体数変動過程に密接に関わる遺伝子を同定し,高感度定量法を確立して個体数変動に伴う遺伝子発現パターンの変動を明らかにした.【連鎖系班】海洋生態系の生物・非生物粒子の分布,動態を定量的に解明するための高精度解析系を整備した.非生物態有機物と微小生物群集の鉛直分布を明らかにすると共に,それらの相互の動的平衡メカニズムを解明した.植物プランクトンの色素組成,動物プランクトンの微細構造,細菌群集の系統群別の増殖特性の解明を通じ,海洋生物のミク仁な連鎖過程を解明した.【変動系班】高緯度水域において海洋生物資源が大きく変動する理由は,初期生活史パラメタの変動がその後の大きな加入量変動を引き起こしているためと明らかになった.化学物質による海洋汚染は海洋動物の生理や繁殖機能に障害を与えており,汚染の国際監視体制を構築することが重要であると指摘した.非定常性,複雑性,不確実性という特性を持つ海洋生物資源は,MSY理論に代わって順応的理論で管理されるべきであると結論した.
著者
竹井 祥郎 安藤 正昭 坂本 竜哉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究において、グアニリン、アドレノメデュリン、リラキシンなどのイオン排出・降圧ホルモンが魚類で多様化しており、それらが魚類の浸透圧調節に重要であることを明らかにした。また、飲水を抑制するナトリウム利尿ペプチドと促進するアンジオテンシンが、延髄の最後野に作用して嚥下による反射的な飲水を調節していることを明らかにした。この結果は、前脳に作用して「渇き」という動機づけにより飲水する陸上動物と異なる。