- 著者
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足立 明
山本 太郎
内山田 康
加藤 剛
井上 昭洋
清水 和裕
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1999
本研究の目的は、非西欧世界における「清潔さ」「衛生」「健康」「身体」概念の変容を、保健医療に関わる開発現象を中心に検討することであった。そのため、これまでの公衆衛生の社会史、文化史の成果を整理し、また各研究者の蓄積してきた諸社会の民族誌的・歴史的経験をもとにして、保健医療の導入と「清潔さ」「衛生」「健康」「身体」概念の変容に関する分析枠組みの検討・整理を行おうとしたのである。平成11年度は、西欧世界を中心とした保健医療の導入とその社会文化的影響に関する既存の文献を収集し、それらを分担して検討した。その主な内容は、上下水道の導入に関する社会文化的影響、保健医療の制度化と宗教の世俗化、保健医療の導入と疾病傾向の変容、キリスト教宣教師と「清潔」「衛生」概念であった。これにたいして、平成12年度は、各自の蓄積してきた諸社会の資料を整理した。その結果分かってきたことの一つは、20世紀初頭の植民地下で西欧の健康概念と西欧的核家族概念が結びつき、社会変容に寄与する可能性である。また、このようなテーマで研究する上で、新しい研究視角の議論も行い、人、モノ、言葉のネットワークをいかに把握するかという方法論的検討も行った。もっとも、現地調査を前提としていないこの研究では、資料的に限界があり、その意味で、本研究は今後の海外学術調査の予備的な作業という性格が強いものとなった。今後は、さらなる研究に向けた体制の立て直しを計る予定である。