著者
髙橋 美貴 井上 重治 羽山 和美 二宮 健太郎 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.255-261, 2012 (Released:2012-12-15)
参考文献数
11
被引用文献数
17 14

われわれは, 4種の飽和脂肪酸 (カプロン酸 C6, カプリル酸 C8, カプリン酸 C10, ランリン酸 C12) について, 2.5% ウシ胎児血清含有 RPMI1640培地 (基礎培地) を用いてカンジダ発育に対する作用を検討した. さらに抗真菌活性の強かったカプリル酸, カプリン酸についてマウス口腔カンジダ症に及ぼす作用を調べた. 4種の飽和脂肪酸のin vitro での Candida albicans の増殖に及ぼす効果を調べた結果, カプリル酸, カプリン酸, およびラウリン酸を終濃度0.78μg / ml 以上で添加すると, その菌糸形発育が抑制された. 口腔カンジダ症マウスモデルを作製し, カプリル酸, カプリン酸を1回につき50 μl (3% 濃度) を C. albicans 接種3時間後, 24時間後および27時間後に, 3回口腔内に投与したところ, 舌の症状が改善され, 病理標本でも菌の定着が少なくなることが示唆された. カプリン酸においてはより少量で効果を示し, その改善も著しいものであった. カプリン酸が少量の投与でマウス口腔カンジダ症に効果を示すことから, 口腔カンジダ症の予防および患者への補完代替医療としての使用が期待される.
著者
井上 重治 高橋 美貴 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.33-40, 2012 (Released:2012-03-30)
参考文献数
16
被引用文献数
3 1

日本産弱芳香性ハーブ 18種について,それぞれの新鮮葉および乾燥葉のハーブウォーターを作製して Candida albicansの菌糸形発現阻害効果を測定した.その結果,乾燥によって揮発成分の種類と含有濃度が大きく変動するハーブウォーター13種は阻害活性も大きく変動し,成分変動の少ないハーブウォーター 5種では活性の変動も少なかった.多くのハーブウォーターの活性はそれぞれの主要成分の活性に比例した.とりわけドクダミ乾燥葉と桜新鮮葉のハーブウォーターが強い菌糸形発現阻害活性を示し,その主要活性成分はそれぞれn-capric acid と cyanide であることが判明した.8種のハーブウォーターが C. albicansに対して中程度ないし弱い増殖阻害活性を示した.
著者
丸山 奈保 滝沢 登志雄 久島 達也 石橋 弘子 井上 重治 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 第51回 日本医真菌学会総会 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
pp.135, 2007 (Released:2008-08-08)

【目的】膣カンジダ症は発症頻度の高い感染症でありながら、一部では抗真菌剤だけで解決できない場合も多い。本症にアロマセラピーとして植物精油が経験的に用いられているが、有効性を得る最適な投与法に関する研究は少ない。ここでは、膣カンジダ症マウスモデルを用いその検討を行った。【方法】実験1.C.albicans TIMM2640を、エストラジオールを投与したBALB/cマウスに接種し、翌日より植物精油を3日間連続膣内投与後、4日目に菌を回収した。一部のコントロールマウスでは、投与6時間後に膣の洗浄操作を加えた。実験2.菌接種48時間後に膣を洗浄後、ゼラニウム油及び主成分であるゲラニオールを膣内投与し、投与6、24、96時間後に菌の回収・洗浄を行った。【結果と考察】1.クロトリマゾールでは効果が認められたが、ゼラニウム油、ティートリー油などの植物精油では、生菌数の低下は認められなかった。ただし、膣洗浄により生菌数の有意な低下が認められた。2.植物精油投与96時間後にはゲラニオール1%で生菌数の有意な減少が、ゼラニウム油1%で減少傾向が見られた。すでに、ゼラニウム油及びゲラニオールはin vitroでC.albicansの菌糸形発育を阻止し、基材への付着性を低下させることを明らかにしている。以上より、これらは、膣洗浄との適切な組み合わせにより、膣カンジダ症に有効性を示しうると考えられる。
著者
井上 重治 瀬崎 正次
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.327-349, 1993-04-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
189
被引用文献数
6 6

Recently, opportunistic fungal infections are becoming more important in the compromised patients.The review summarizes current attempts to find new and useful antifungal antibiotics mainly active against opportunistic fungal pathogens. Based on the chemical structures, antifungal antibiotics reported since 1987 are conveniently classified into 12 types : 1) polyene macrolide and related antibiotics, 2) lipopeptide antibiotics, 3) glycolipid antibiotics, 4) glycolipid/lipopeptide related antibiotics, 5) alkylphenol antibiotics, 6) terpenoid antibiotics, 7) cyclodepsipeptide antibiotics, 8) peptidonucleoside antibiotics, 9) amino acid antibiotics, 10) condensed polycyclic aromatic antibiotics, 11) halogenopyrrole antibiotics and 12) miscellaneous antibiotics. Finally, the principles and strategy for screening of antifungal antibiotics are discussed.
著者
井上 重治 高橋 美貴 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.305-313, 2011 (Released:2011-11-28)
参考文献数
37
被引用文献数
5 6

抗真菌活性を有するブラジル産プロポリス2種,ニュージーランド産プロポリス,日本産プロポリス各1種の成分組成を HPLC/MS で分析した.ブラジル産はいずれも artepillin C と drupanin が主体,ニュージーランド産は pinocembrin と galangin, chrysin, alkylphenol と caffeic acid ester が主体であった.日本産プロポリスにはポリフェノールは存在しなかった.ニュージーランド産プロポリスはタイムチモール精油と比較して,白癬菌殺菌活性,カンジダ菌糸形発現阻害活性,遊離ラジカル捕捉効果が強かったが,カンジダ増殖阻止活性は弱かった.ブラジル産と日本産プロポリスの抗真菌活性は弱かったが,ラジカル捕捉活性は精油より強い.これらの結果はプロポリスには植物精油には期待しにくい特性があることを示しており,今後の抗真菌療法の開発にプロポリスを利用できる可能性を示唆するものである.