著者
大橋 一智 上田 浩史 山崎 正利 木村 貞夫 安部 茂 山口 英世
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.112, no.12, pp.919-925, 1992-12-25
被引用文献数
19

The biological activity of a preparation of heat killed cells of Enterococcus faecalis, FK-23 which was isolated from the feces of a healthy human, was investigated in C3H/He mice. Intraperitoneal injection of the preparation caused an accumulation of neutrophils and macrophages in the peritoneal cavity of the mice 6 h later. As a parameter of the activation of macrophages, the effect of the FK-23 preparation on the production of tumor necrosis factor (TNF) was examined. The mice were given two consecutive intravenous injections of the preparation at a dose of 10μg/mouse and, 3 h later, of 300μg/mouse. The TNF level in the sera reached 99 U/ml in mice 2 h after the second injection. This preparation also stimulated peritoneal macrophages to produce TNF in vitro and increased the capacity of neutrophils to adhere to plastic plates and to release active oxygens, but did not induce blastogenic transformation of lymphocytes. These results suggest that the FK-23 preparation is a biological response modifier (BRM) with various activities on phagocytes similar to a streptococcal antitumor agent, OK432.
著者
髙橋 美貴 井上 重治 羽山 和美 二宮 健太郎 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.255-261, 2012 (Released:2012-12-15)
参考文献数
11
被引用文献数
17 13

われわれは, 4種の飽和脂肪酸 (カプロン酸 C6, カプリル酸 C8, カプリン酸 C10, ランリン酸 C12) について, 2.5% ウシ胎児血清含有 RPMI1640培地 (基礎培地) を用いてカンジダ発育に対する作用を検討した. さらに抗真菌活性の強かったカプリル酸, カプリン酸についてマウス口腔カンジダ症に及ぼす作用を調べた. 4種の飽和脂肪酸のin vitro での Candida albicans の増殖に及ぼす効果を調べた結果, カプリル酸, カプリン酸, およびラウリン酸を終濃度0.78μg / ml 以上で添加すると, その菌糸形発育が抑制された. 口腔カンジダ症マウスモデルを作製し, カプリル酸, カプリン酸を1回につき50 μl (3% 濃度) を C. albicans 接種3時間後, 24時間後および27時間後に, 3回口腔内に投与したところ, 舌の症状が改善され, 病理標本でも菌の定着が少なくなることが示唆された. カプリン酸においてはより少量で効果を示し, その改善も著しいものであった. カプリン酸が少量の投与でマウス口腔カンジダ症に効果を示すことから, 口腔カンジダ症の予防および患者への補完代替医療としての使用が期待される.
著者
井上 重治 高橋 美貴 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.33-40, 2012 (Released:2012-03-30)
参考文献数
16
被引用文献数
3 1

日本産弱芳香性ハーブ 18種について,それぞれの新鮮葉および乾燥葉のハーブウォーターを作製して Candida albicansの菌糸形発現阻害効果を測定した.その結果,乾燥によって揮発成分の種類と含有濃度が大きく変動するハーブウォーター13種は阻害活性も大きく変動し,成分変動の少ないハーブウォーター 5種では活性の変動も少なかった.多くのハーブウォーターの活性はそれぞれの主要成分の活性に比例した.とりわけドクダミ乾燥葉と桜新鮮葉のハーブウォーターが強い菌糸形発現阻害活性を示し,その主要活性成分はそれぞれn-capric acid と cyanide であることが判明した.8種のハーブウォーターが C. albicansに対して中程度ないし弱い増殖阻害活性を示した.
著者
丸山 奈保 滝沢 登志雄 久島 達也 石橋 弘子 井上 重治 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 第51回 日本医真菌学会総会 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
pp.135, 2007 (Released:2008-08-08)

【目的】膣カンジダ症は発症頻度の高い感染症でありながら、一部では抗真菌剤だけで解決できない場合も多い。本症にアロマセラピーとして植物精油が経験的に用いられているが、有効性を得る最適な投与法に関する研究は少ない。ここでは、膣カンジダ症マウスモデルを用いその検討を行った。【方法】実験1.C.albicans TIMM2640を、エストラジオールを投与したBALB/cマウスに接種し、翌日より植物精油を3日間連続膣内投与後、4日目に菌を回収した。一部のコントロールマウスでは、投与6時間後に膣の洗浄操作を加えた。実験2.菌接種48時間後に膣を洗浄後、ゼラニウム油及び主成分であるゲラニオールを膣内投与し、投与6、24、96時間後に菌の回収・洗浄を行った。【結果と考察】1.クロトリマゾールでは効果が認められたが、ゼラニウム油、ティートリー油などの植物精油では、生菌数の低下は認められなかった。ただし、膣洗浄により生菌数の有意な低下が認められた。2.植物精油投与96時間後にはゲラニオール1%で生菌数の有意な減少が、ゼラニウム油1%で減少傾向が見られた。すでに、ゼラニウム油及びゲラニオールはin vitroでC.albicansの菌糸形発育を阻止し、基材への付着性を低下させることを明らかにしている。以上より、これらは、膣洗浄との適切な組み合わせにより、膣カンジダ症に有効性を示しうると考えられる。
著者
丹生 徹 沖永 功太 丹生 茂 安部 茂 山口 英世
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.463-469, 1996-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
16

ヒト好中球のCandida albicans発育阻止能が, 中心静脈栄養 (IVH) に用いられる高カロリー輸液によりどのように影響を受けるか検討した.ヒト好中球が, C.albicansの発育を阻止するin vitro実験系において, グルコース濃度を1~2%に高めることによって, ヒト好中球の抗Candida活性は強く抑制された.これに対して, 市販高カロリー輸液の添加により, グルコース濃度を上昇させても, ヒト好中球の抗Candida活性の低下は, ほとんど認められなかった.この中に含まれるグルコース拮抗物質について検討を行った結果, アミノ酸分画に有効成分が存在することが明らかになった.このアミノ酸分画には, dexamethasoneの好中球機能抑制をも緩和する効果が認められた.さらに再機構アミノ酸混液でも同様の結果が得られた.したがって, 高カロリー輸液にアミノ酸液が混入されているのは, 通常の栄養補充の目的以外にも, 好中球機能の保持という面でも有用であり, 適切な濃度のアミノ酸液を投与することが重要と考えられた.
著者
丸山 奈保 安部 茂
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.199-210, 2012-05-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
43

かおりのある植物精油を用いたアロマセラピーは,近年,代替医療のーつとして感染症に対する効果に大きな注目が集まっている.精油は,既存の抗真菌剤にはない特徴を有しているが,その代表的なものに揮発性がある.精油は,真菌に直接接触できなくても,揮発成分の拡散により,抗真菌効果を示すことが可能である.また,感染症で臨床的に問題となる炎症症状をも抑制することができる.これらより,表在性真感染症に対する新たな治療法としての精油の有効性が期待される.
著者
安部 茂 山口 英世
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.77-81, 2000-04-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
27
被引用文献数
5 5

真菌感染症の中でカンジダ症とアスペルギルス症に焦点を絞り生体防御機構についての最近の研究の進展を概説した.特に,感染過程において,真菌が存在する生理的条件によって生体防御機序が異なってくることから,ここでは,真菌が1)粘膜上で,外分泌液中にある場合,2)血液循環がある組織中に侵入した場合,3)血流の制限された感染部位にある場合に分けて,それぞれの主な防御機構について考察を加えた.
著者
羽山 和美 石島 早苗 小野 佳子 出雲 貴幸 井田 正幸 柴田 浩志 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.J123-J129, 2014 (Released:2014-09-18)
参考文献数
17
被引用文献数
6 8

Lactobacillus pentosus S-PT84加熱死菌体(以下,S-PT84死菌細胞)の,カンジダ増殖に対する影響をin vitroおよびin vivoで検討した.C. albicansに各濃度のS-PT84死菌細胞を添加し培養したところ,S-PT84死菌細胞は2 mg/mlの添加濃度でC. albicansの菌糸形発育を著しく阻害し,残存した菌糸にはS-PT84死菌細胞と思われる粒形が付着している像が観察された.次に,本菌の口腔および胃内C. albicans感染モデルマウスにおける感染防御効果を検討した.その結果,S-PT84死菌細胞は2 mg × 3 回の口腔内投与で口腔カンジダ感染モデルマウスの舌症状を有意に改善し,口腔カンジダ症の治療に有効性を発揮する可能性を示した.さらに,C. albicansの胃内増殖に対する効果として,少なくともS-PT84死菌細胞を 0.5 mg口腔内+ 2 mg胃内× 3 回投与することで,胃内C. albicans生菌数が有意に低下することが明らかとなった. S-PT84死菌細胞はすでに機能性食品素材として使用されていることから,粘膜カンジダ症,特に消化管カンジダ症に対する補完代替医療として使用できる可能性が示唆された.
著者
山本 真紀子 影島 宏紀 志津田 陽平 瀬戸口 明日香 小笠原 茂里人 南 毅生 丸山 奈保 鈴木 基文 安部 茂
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.133-141, 2019 (Released:2019-09-20)
参考文献数
23

マラセチア皮膚炎は犬では一般的な皮膚疾患であるが,再発性となりやすい。従来のアゾール系抗真菌薬の内服・外用療法は,耐性菌出現や肝毒性が問題であり,シャンプー療法は簡便とは言えない。そこで今回ヒトの介護現場で用いられているスプレー剤に着目し,犬9頭のマラセチア皮膚炎が疑われる皮膚病変部に1日2回ずつ3週間用いて臨床的な効果を検討した。試験期間を通した有害事象として1頭に軽度の一過性の発赤が認められたが,すぐに自然に消退した。スプレー使用により皮疹の重症度スコアとPVASは統計学的に有意に減少した(P<0.01)。病変部のマラセチア菌数は減少する傾向があるものの統計学的な有意差は認められなかった(P<0.01)。皮疹の重症度スコアとPVASが改善した要因としてスプレー剤の主成分であるD-LYZOXの抗炎症作用が考えられたことから,主成分であるD-LYZOXの抗炎症効果についてin vitroで検討した。抗炎症効果の検討には健康犬の好中球活性の抑制作用を用いた。D-LYZOXは犬由来の好中球の粘着反応を抑制し,抗炎症作用の存在が示唆された。以上よりヒト用のD-LYZOX含有スプレーはマラセチア皮膚炎が疑われた犬の皮膚病変部に対してPVAS,皮疹の重症度スコアを改善することが示唆された。またこれら臨床的な効果と,好中球機能の抑制との関連を明らかにする必要性を考察した。
著者
安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.227-231, 2004
被引用文献数
7

老人における口腔カンジダ症,および吸入ステロイドの使用に伴う咽頭・食道カンジダ症は,患者が非常に多い疾患であり,しかも一部の患者では難治性となる.これら粘膜カンジダ症は,主として常在菌である<i>Candida albicans</i>が,宿主の低下した防御能をくぐり抜け,感染が成立する感染症である.鵞口瘡がこれら口腔咽頭カンジダ症の一般的な状態であり,舌,咽頭などに偽膜性の白苔を生じる.私達は新たにマウス口腔カンジダ症および咽頭カンジダ症のモデルを作成した.これら動物モデルは,口腔カンジダ症では,クロルプロマジンをマウスに投予することで,<i>C.albicans</i>の口腔内への菌の定着が容易におこるのみでなく,舌白苔などの症状を示し,その数値化が可能となるものである.すでにこの口腔カンジダ症モデルで,ウシラクトフェリン,クローブ,植物精油の経口投与により防御効果が得られており,その免疫学的機序も一部明らかにされてきている.さらに,アゾール系抗真菌剤に耐性を示す<i>Candida albicans</i>による本感染症に対しても植物精油が有効なこと,また,ヒト唾液が感染防御に働くことも明らかにされつつある.
著者
山崎 正利 池並 通裕 来生 淳 油井 聡 安部 茂 水野 伝一
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.p769-774, 1984-07

The present study shows that some selected anti-cancer drugs induce tumor lysis in vitro in cooperation with phagocytic cells (drug-dependent cellular cytotoxicity ; DDCC) and that chemotherapeutic drugs augment the mediator-dependent killing activity of macrophages. Tumor cells pretreated with the drugs were susceptible to phagocytemediated killing. Tumor necrosis serum can also cooperate with some drugs in killing tumor cells. Moreover, some selected drugs can induce cytotoxic macrophages and the quantitative changes of phagocytes such as polymorphonuclear leukocytes. These results suggest that some anti-cancer drugs have the activities of inactivation of tumor cells and/or activation of host cells. Thus, tumor cells may be killed effectively in vivo by anti-cancer drugs through these mechanisms.
著者
大橋 一智 上田 浩史 山崎 正利 木村 貞夫 安部 茂 山口 英世
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.112, no.12, pp.919-925, 1992-12-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
10 10

The biological activity of a preparation of heat killed cells of Enterococcus faecalis, FK-23 which was isolated from the feces of a healthy human, was investigated in C3H/He mice. Intraperitoneal injection of the preparation caused an accumulation of neutrophils and macrophages in the peritoneal cavity of the mice 6 h later. As a parameter of the activation of macrophages, the effect of the FK-23 preparation on the production of tumor necrosis factor (TNF) was examined. The mice were given two consecutive intravenous injections of the preparation at a dose of 10μg/mouse and, 3 h later, of 300μg/mouse. The TNF level in the sera reached 99 U/ml in mice 2 h after the second injection. This preparation also stimulated peritoneal macrophages to produce TNF in vitro and increased the capacity of neutrophils to adhere to plastic plates and to release active oxygens, but did not induce blastogenic transformation of lymphocytes. These results suggest that the FK-23 preparation is a biological response modifier (BRM) with various activities on phagocytes similar to a streptococcal antitumor agent, OK432.
著者
井上 重治 高橋 美貴 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.305-313, 2011 (Released:2011-11-28)
参考文献数
37
被引用文献数
5 6

抗真菌活性を有するブラジル産プロポリス2種,ニュージーランド産プロポリス,日本産プロポリス各1種の成分組成を HPLC/MS で分析した.ブラジル産はいずれも artepillin C と drupanin が主体,ニュージーランド産は pinocembrin と galangin, chrysin, alkylphenol と caffeic acid ester が主体であった.日本産プロポリスにはポリフェノールは存在しなかった.ニュージーランド産プロポリスはタイムチモール精油と比較して,白癬菌殺菌活性,カンジダ菌糸形発現阻害活性,遊離ラジカル捕捉効果が強かったが,カンジダ増殖阻止活性は弱かった.ブラジル産と日本産プロポリスの抗真菌活性は弱かったが,ラジカル捕捉活性は精油より強い.これらの結果はプロポリスには植物精油には期待しにくい特性があることを示しており,今後の抗真菌療法の開発にプロポリスを利用できる可能性を示唆するものである.
著者
大橋 一智 里中 勝人 山本 哲郎 山崎 正利 木村 貞夫 安部 茂 山口 英世
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.113, no.5, pp.396-399, 1993-05-25
被引用文献数
10

The antitumor activity of a preparation of heat-killed cells of Enterococcus faecalis, FK-23. Intraperitoneal injection of the preparation prolonged the lifespan of C3H/He N mice which were intraperitoneally inoculated with MM46 mammary carcinoma. Not only intraperitoneal but also oral administration of the FK-23 preparation inhibited the growth of these carcinomas inoculated intradermally. The tumor-bearing mice produced tumor necrosis factor (TNF) in their sera 2 h after intravenous injection of OK432. This TNF level increased after the mice were fed with food supplemented with the FK-23 preparation. Additionally, the FK-23 preparation inhibited the growth of Meth A fibrosarcoma in cyclophosphamide-treated BALB/c mice.