著者
井元 信之 小芦 雅斗
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.17-24, 2001-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
53

物理における位置づけを主な視点として量子暗号(あるいは広く量子情報処理)を解説する.これまで扱われてこなかった基礎的な問題が解明されつつあることや,一つの量子系が客観的存在でなく複数主体から相対的に見えるという量子力学本来の側面が重要となるところに,量子暗号研究の面白さがある.
著者
横田 一広 井元 信之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.606-613, 2010
参考文献数
14
被引用文献数
1

量子力学では,時間発展の途中で物理量を問うことが困難である.ハーディー(L.Hardy)のパラドックスはこれを顕著に示した例だが,パラドックスに陥るのは,実際に測定できないものを議論しているからだと考えられてきた.測定自身によって時間発展が乱される為,そもそも検証ができないのだ.ところが,近年アハラノフたちによって弱い量子測定が提唱されて以来,時間発展を乱さずに測定はできないという反論が必ずしも正しくはなくなった.我々は弱い量子測定を用いて実際にハーディーのパラドックスを観測した結果,測定器がパラドックスを反映した値を示すのを確認した.この解説では,弱い量子測定と我々の実験結果について説明する.
著者
小川 哲生 上田 正仁 井元 信之
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.781-788, 1993-10-05

量子力学の観測問題のなかでもマクロ系での波束の収縮に関する問題は,「シュレーディンガーの猫のパラドックス」でも知られるように積年の論争の対象である.『量子力学はマクロ系にも適用可能か?』この問いに答えるべく実験が始まっている.本稿では,この問題の意義を振り返りながら最近の状況を報告し,「シュレーディンガーの猫状態」(マクロな量子力学的重ね合わせ状態)を実際に作り出すフォトンカウンティング法を紹介する.この議論を通して,時間的に連続な量子力学的測定,すなわち波束の連続的収縮を概説し,波束が時々刻々収縮することと観測によって得られた情報との関連を,「番犬効果」を例にとり具体的に説明する.
著者
井元 信之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.845-851, 2014-12-05 (Released:2018-09-30)

量子もつれの基本的概念を2体の2準位系から多体の多準位系を例にとり解説する.量子もつれと切り離せない量子テレポーテーション,量子もつれの強度,生成法,弱い量子もつれから強いもつれへの濃縮法,情報や物性等各方面との関係について述べる.
著者
井元 信之
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1317-1322, 2006-12-15

量子暗号,量子コンピューティング,量子テレポーテーションをキーワードとする量子情報処理の研究は揺籃期を過ぎて成長期にある.当初よりずっと進んだ課題もあればブレイクスルーが待たれる課題も明確になってきた.ハード的実現のアイディアも多々出ている.これらを概観するとともに,光による研究について触れる.
著者
井元 信之 横田 一広
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.29-35, 2009-10
被引用文献数
1

奇妙な思考実験がある。2つの干渉計を準備し,それぞれに,電子と陽電子を入れる。