著者
浦田 龍之介 鈴木 満里乃 山本 真生 伊藤 将円 鈴木 皓大 伊藤 梨也花 伊藤 晃洋 飯島 進乃 屋嘉比 章紘 鈴木 彬文 井川 達也
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.188-192, 2023 (Released:2023-06-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1

〔目的〕本邦理学療法分野の症例報告における情報の欠落の実態について調査することとした.〔対象と方法〕2019年に日本国内の学術雑誌に掲載された理学療法に関する症例報告を対象とした.医中誌Webを含む4つの電子検索データベースを用いて文献を網羅的に収集した.症例報告における情報の欠落について,CAse REport guidelinesを用いて評価した.〔結果〕253件の症例報告が選択された.患者の個人情報の項目では遵守率が100%であった.アブストラクトと本文に関する計12項目では,遵守率は50%未満であった.〔結語〕本邦理学療法に関する症例報告のなかには,必要情報の欠落により読者の誤解を招く表現が用いられている可能性が示唆された.
著者
伊藤 将円 井川 達也 原 毅 丸山 仁司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.450-458, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
31

【目的】高齢者における歩行器・歩行車の種類の違いによる膝関節内反モーメント(以下,KAM)の変化を明らかにし,どの補助具が関節負担の軽減に有用か明らかにする。【方法】対象は65 歳以上の高齢者19 名とした。各対象者に独歩,車輪付き歩行器,椅子付き歩行車,前腕支持台付き歩行車の4 条件を計測した。KAM 最大値,膝関節内反角度,床反力を条件間で比較した。【結果】KAM は,補助具すべてで独歩と比較し有意に減少,椅子付き歩行車と前腕支持台付き歩行車が車輪付き歩行器と比べ有意に減少した。膝関節内反角度は椅子付き歩行車,前腕支持台付き歩行車が車輪付き歩行器と比較し有意に減少した。床反力鉛直方向成分は補助具すべてで独歩と比べ有意に減少,前腕支持台付き歩行車は車輪付き歩行器,椅子付き歩行車と比較し有意に減少した。【結論】椅子付き歩行車と前腕支持台付き歩行車は独歩や車輪付き歩行車と比較してKAM の減少を認めた。
著者
井川 達也 勝平 純司 櫻井 愛子 保坂 亮 中野 徹 松澤 克
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0806, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】腰部脊柱管狭窄症(LSCS)は脊柱管の狭窄により馬尾や神経根が圧迫され神経症状を呈する疾患である。特徴的な症状として姿勢による症状の変化や神経性間歇跛行が挙げられ,また歩行の特徴としては,体幹前傾角度の増大,歩行速度や歩幅の減少,股関節角度の減少などが挙げられる。この前傾姿勢は減圧による症状緩和を可能にするにも関わらず,特徴的な姿勢を示さない患者も存在する。そこで本研究の目的は,腰部脊柱管狭窄症患者の歩行時の体幹前傾角度と関連する変数(下肢関節,骨盤,体幹の角度など)を明らかにすることである。【方法】対象は当院に手術目的に入院したLSCS患者111名(年齢70.9±6.2歳)とした。歩行動作の計測は,約5.5mの歩行路における自然歩行を3次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社製:100Hz)と床反力計(AMTI社製:1000Hz)を用いて記録した。安定して行えた自然歩行を2試行記録した。測定時には計測着を着用し,四肢,骨盤,体幹,頭部に計49か所の反射マーカーを貼付した。得られたデータから,歩行速度,ケーデンス,左右の歩幅,一周期時間,左右立脚期の体幹前傾最大角度,骨盤前傾最大角度,骨盤回旋最大角度,下肢三関節の屈伸および底背屈最大角度,内部関節屈伸および底背屈モーメント最大値,関節パワー最大および最小値を111名222肢について求めた。なお,関節モーメントと関節パワーは体重で標準化した値を用いた。各変数について,2試行の平均値を解析に用いた。また歩行計測時の下肢痛(VAS)と日本整形外科学会腰痛評価質問表の小項目である歩行機能障害因子も併せて聴取した。統計解析は,まず体幹前傾角度とその他の変数の相関関係を明らかにするため単変量解析(Pearsonの積率相関係数とSpearmanの順位相関係数の算出)を行った。次に体幹前傾角度に関わる要素を明らかにするため重回帰分析を行った。体幹前傾角度を従属変数とし,単変量で有意な相関を認めた変数を独立変数とするステップワイズ法を用いた。統計解析には,IBM SPSS Statistic(Version21)を用い,両側検定にて危険率5%未満を有意水準とした。【結果】体幹前傾角度と有意な相関を認めた変数は,歩幅(r=-0.17,p=0.01),骨盤前傾最大角度(r=0.29,p=0.01),股関節屈曲最大角度(r=0.27,p=0.01),股関節伸展最大角度(r=0.47,p=0.01),股関節屈曲モーメント最大値(r=-0.44,p=0.01),股関節パワー最小値(r=0.38,p=0.01),膝関節屈曲最大角度(r=0.33,p=0.01),膝関節伸展最大角度(r=0.33,p=0.01),膝関節パワー最大値(r=-0.22,p=0.01),足関節底屈モーメント最大値(r=0.20,p=0.01)であった。次に,独立変数に上記10項目を採用した重回帰分析を行った結果,体幹前傾角度と有意な独立変数として検出された項目は,股関節伸展最大角度(β=0.416),股関節屈曲モーメント最大値(β=-0.348),歩幅(β=0.257),であった。自由度調整済み決定係数は0.294(p<0.01)であった。予測式はy=0.359×股関節伸展角度-8.008×股関節屈曲モーメント最大値+15.251×歩幅+1.607となった。【考察】LSCS患者にとって体幹前傾姿勢の可否は症状緩和のために重要な姿勢であると広く言われている。本研究の結果から,体幹前傾姿勢には疼痛の程度や骨盤,足関節,膝関節運動ではなく,股関節運動が関与していることが示唆された。体幹前傾が大きいLSCS患者は立脚期後半の股関節伸展角度が大きいにも関わらず,股関節屈曲モーメントが小さい傾向にある。これは,股関節屈曲筋力低下のため,上半身重心を前方に変位させることにより股関節屈曲モーメントを減少させる姿勢戦略を選択している可能性が考えられる。腸腰筋筋力低下はLSCSの最も初期の徴候であるとの報告もあることから,この腸腰筋筋力低下が体幹前傾姿勢をとる要因であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究の新規性はLSCS患者の体幹前傾姿勢と歩行パラメータとの関係性を示し,立脚期後半の股関節機能の重要性を示したことである。またLSCS患者の除圧術後の理学療法は,歩行中の体幹前傾姿勢を改善させるために立脚期後半を想定した股関節屈曲筋力の改善が重要であることが示唆された。
著者
井川 達也 勝平 純司 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-38, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
17

〔目的〕高齢者と若年者の平地歩行・階段昇降動作時の筋の同時活動の筋電図学的相違を分析し,その要因を明確にすることとした.〔対象〕高齢者と若年者を各々14名とした.〔方法〕筋電計測の対象はヒラメ筋,前脛骨筋とした.床反力計および表面筋電計を用い,平地歩行・階段昇降動作中に計測された位相ごとの筋活動を分析し,高齢者と若年者との間で比較した.〔結果〕歩行立脚後期および階段昇降の全周期において,高齢者は若年者に比べ前脛骨筋活動量が有意に高値を示した.〔結語〕高齢者は前脛骨筋活動量を増大させ,足関節の剛性を高めていることが示唆される.