著者
上條 史子 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.445-450, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
18
被引用文献数
2

〔目的〕体幹機能評価として用いられるTrunk Impairment Scale(TIS)と歩容との関係を片麻痺者で検討することである.〔対象〕男性片麻痺者14名とした.〔方法〕三次元動作解析システムを用い,対象者の歩行を計測した.また,対象者の体幹機能はTISを用いて評価し,歩行中の体幹の動態とTISの項目との関係を検討した.〔結果〕麻痺側立脚後期の体幹の動態とTISの動的項目・協調性項目の結果に関係が認められた.特に骨盤と中部体幹間の回旋とTISに相関が認められた.〔結語〕TISの動的項目と協調性項目は,片麻痺者での歩行中の体幹の動態を評価できると示唆された.特に,立脚後期の体軸内回旋を反映すると考えられた.
著者
田中 惣治 山本 澄子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.107-117, 2016 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
被引用文献数
9 2

麻痺側立脚期の膝関節の動きにより片麻痺者の歩行パターンを分類し, 歩行パターンの違いにより歩行時の下肢筋活動と運動力学的特徴が異なるか, 三次元動作分析装置と表面筋電計を用いて分析した. 回復期片麻痺者35名を対象とし, 歩行時の膝関節と下腿傾斜角度から, 健常者の膝の動きと近い健常膝群 (15名), 荷重応答期と単脚支持期にそれぞれ膝関節が伸展する初期膝伸展群 (5名) と中期膝伸展群 (15名) に分類した. 結果, 健常膝群は荷重応答期で腓腹筋の筋活動を抑えながら前脛骨筋が働くため十分な背屈モーメントを発揮し, 踵ロッカーが機能した. 中期膝伸展群は荷重応答期で腓腹筋の筋活動が大きいため背屈モーメントが十分に発揮されず, 踵ロッカー機能が低下しており, 初期膝伸展群は荷重応答期で前脛骨筋の筋活動が小さく背屈モーメントが発揮されないことから, 踵ロッカーが機能しないことが明らかになった.
著者
森田 千晶 山本 澄子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.75-82, 2007-01-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
9
被引用文献数
5

片側上肢切断が姿勢にどのような影響を及ぼすのかについて, 安静立位姿勢に着目して運動学的分析を行った. 片側上肢切断者10名 (前腕切断5名, 上腕切断3名, 肩離断2名) と健常者10名 (20代男性) を被験者とし, 安静立位姿勢を3次元動作解析装置VICONにて測定した. 前額面での体幹の傾き (側屈) と左右への偏り, 水平面での回旋, また前額面での重心について分析を行った. 前額面での偏りのみ健常者と有意差が認められた. 水平面での回旋も有意差は認められなかったが, 上肢切断者が大きかった. 重心は両者とも大きな偏りはなかった. 上肢の物理的欠損による体重心の移動は前額面での姿勢に影響するが, 水平面での回旋も含めて義手使用や残存上肢の使い方も姿勢に影響することが示唆された.
著者
上條 史子 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.543-549, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
9
被引用文献数
5

〔目的〕本研究では,脳卒中片麻痺者の歩行自立度によって座位・立位での静止姿勢と左右への体重移動課題においての体幹アライメントの特徴が異なるかを検討した。〔対象〕対象は脳卒中片麻痺者8名で,4名は歩行自立者,4名が歩行非自立者であった。〔方法〕計測には,三次元動作分析装置と床反力計を使用した。計測結果より,座位と立位における静止姿勢と左右方向への体重移動時の際の上部体幹と骨盤の角度変化と移動量,下肢と臀部の荷重量を算出した。これらの結果が,歩行自立度で差がみられるか検討した。〔結果〕座位では,静止姿勢での骨盤後傾角度と上部体幹回旋角度,非麻痺側移動時の骨盤後傾角度,麻痺側移動時の上部体幹回旋角度,立位では,静止姿勢での上部体幹の傾斜角度と麻痺側下肢への荷重量で歩行自立度による有意差がみられた。〔結語〕座位での運動課題では移動側によって特徴がみられる部位が異なっており,動作分析をする際の注目すべきポイントと思われた。また座位と立位で共通した特徴を認めたことから,片麻痺者への治療介入が必要な場所を推察する際の有益な情報となると思われた。
著者
江戸 優裕 柿崎 藤泰 山本 澄子 角本 貴彦 石田 行知
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.173-176, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

〔目的〕体幹の回旋運動に伴って副次的に生じる胸郭の前後・左右への並進の運動特性を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象は健常若年者13名とした.光学式三次元動作解析システムを用いて立位での身体の回旋動作を計測し,骨盤に対する胸郭の回旋角度と前後・左右への偏位距離を分析した.〔結果〕体幹の回旋には前方および回旋と反対側への胸郭の並進が伴っていた.また,回旋に伴う前方並進が大きければ対側並進が小さく,前方並進が小さければ対側並進が大きかった.〔結語〕体幹の回旋に伴う胸郭の前方並進と回旋と反対側への並進は補完的な関係にあることが示唆された.
著者
本宮 丈嗣 山本 澄子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.11-18, 2016 (Released:2017-02-20)
参考文献数
18

【目的】初心者・高齢者向けのディフェンシブ・スタイルのノルディック・ウォーキング(以下,NW)が高齢者の歩行に与える影響について検討する。【方法】杖なしで自立歩行可能な高齢者28 名を対象とし,通常歩行とディフェンシブ・スタイルのNW を三次元動作分析装置・床反力計を用いて計測した。【結果】通常歩行とNW を比較した結果,荷重応答期の床反力鉛直方向成分は,有意差を認めなかった。歩隔・体幹側屈振幅・身体重心左右移動振幅は,NW で有意に減少した。歩隔と身体重心左右移動振幅との間に,正の有意な相関が認められた。【結論】ディフェンシブ・スタイルのNW は,前額面上において安定性の高い歩行であることが示唆された。
著者
山本 澄子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.266-271, 2017-10-01 (Released:2018-10-15)
参考文献数
12

義肢装具に関する介入研究は,使用者に対して義肢装具を使用した何らかの介入を行ってその結果を示すものである.介入研究は対象者1名のシングルケーススタディ,複数名のクロスオーバー研究,多人数のランダム化比較試験があり,それぞれに利点欠点がある.いずれの場合もある介入の効果を他の条件と比較して結果を示すものであり,介入の持ち越し効果(キャリーオーバー)や対象者のばらつきの影響を少なくするための工夫が必要である.本稿ではこれらの手法について具体例と最近の研究の紹介を交えて解説する.
著者
石井 慎一郎 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-16, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

スクリューホームムーブメントの特性を明らかにするため,非荷重位での膝関節伸展運動をPoint Cluster法を用いた三次元動作解析により計測した。対象は20~65歳までの健常成人30名とした。その結果,19人の被験者は膝関節の伸展運動中に脛骨が外旋し,5人の被験者は終末伸展付近から脛骨が内旋し,6人の被験者は伸展運動中に脛骨が内旋していた。終末伸展付近から脛骨が内旋する被験者は女性が多く,全ての被験者がLaxity Test陽性という身体的特徴を有していた。また,膝関節伸展運動中の脛骨前方変位量も大きいという特徴も認められた。伸展運動中に脛骨が内旋する被験者は,40~60歳代の年齢の高い被験者であった。スクリューホームムーブメントは,靭帯の緊張や加齢変化によって影響を受けることが明らかとなった。
著者
山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.109-114, 2003 (Released:2003-08-13)
参考文献数
6
被引用文献数
7 8

バイオメカニクスの観点から身体運動の理解に必要な重心,床反力,関節モーメント,パワーについて解説する。重心の動きは外力である床反力の結果であり,床反力を決めるのは筋活動である。関節モーメントは動作中の筋活動を表す指標であり,関節モーメントと関節角速度より求められるパワーによって筋の活動様式を知ることができる。ここでは平地歩行のデータを示して,歩行中の各関節まわりの筋の働きについて述べる。
著者
市江 雅芳 関 敦仁 関 和則 半田 康延 藤居 徹 山本 澄子 大澤 治章
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、治療的電気刺激が片麻痒患者の歩行能力を改善するメカニズムを、筋音図・筋電図・動作解析を用いて明らかにすることが当初の目的であった。しかし、測定用マイクロフォンの質量が大きく、慣性による雑音が生じることが判明した。これは根元的な問題であるため、片麻痺患者の歩行動作時筋音図測定は断念せざるをえなかった。そこで、臨床研究は治療的電気刺激の効果確認に留め、測定システム更新後の布石として筋音図の基礎的な研究を行うこととした。1.2チャンネル表面電極式電気刺激装置を用いて、慢性期脳卒中患者5名に対し治療的電気刺激を行った。刺激部位は、大腿四頭筋および総腓骨神経で、交互刺激を1回15分間、一日2回行った。治療期間は約3ヶ月であった。その結果、歩行速度に改善が認められ、膝伸展力にも増加が認められた。2.筋音図計測の基礎実験を健常被験者で行った。大腿直筋および外側広筋、内側広筋を対象に、筋電図および筋音図の特性の違いを検討した。その結果、筋電図よりも筋音図において、膝の回旋肢位による違いが鮮明に現れることが判明した。また、筋電図は収縮力の増加に伴い比例的に積分筋電図が増加する現象が確認されたが、筋音図は、最大膝伸展の80%において、積分筋音図が減少する現象が認められた。3.次に等尺性筋収縮時における筋音図と筋電図の周波数特性を比較検討した。膝関節伸展時の大腿直筋の筋活動を、筋質図と筋音図により測定し、これらをFourier変換とWavelet変換を用いて周波数解析を行った。その結果、筋電図は筋の電気的活動そのものをとらえているが、筋音図は筋コンプライアンスの変化に伴う筋の固有振動周波数の変化をとらえていることが判明した。4.今後、質量の少ない筋音図測定装置を開発すれば、脳卒中片麻痺者の歩行が治療的電気刺激によって改善する筋に関する要因を明らかにすることが出来ると考えられる。
著者
川口 俊太朗 山本 澄子
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.86-94, 2021-01-18 (Released:2021-03-15)
参考文献数
29
被引用文献数
1

背景:脳卒中患者に対し膝関節伸展固定の長下肢装具と膝関節のコントロールが可能な長下肢装具を装着させ,各装具の違いが歩行へ与える影響を検証することを目的とした.方法:対象は,回復期リハビリテーション病棟入院中で歩行が見守り以上で可能な脳卒中患者7名である.方法は,膝関節伸展固定の長下肢装具と膝関節屈曲が可能な長下肢装具で10 m歩行を行い,IMU慣性センサー・EMGを用い歩行計測を行った.結果:膝関節のコントロールが可能な長下肢装具において,歩行速度,ストライド長,歩行率が有意に増加を示し,関節角度は歩行中の麻痺側股関節伸展,外転,外旋角度の最大値が有意に小さい結果となった.筋活動は上記の条件下で荷重応答期の大腿直筋が有意に増加,遊脚期の脊柱起立筋は筋活動が有意に減少した.考察:膝関節のコントロールが可能な長下肢装具は,歩行時間距離因子を改善し,遊脚期における麻痺側の分回し動作を軽減させることを示唆した.
著者
田中 惣治 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.873-876, 2014 (Released:2015-01-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

〔目的〕麻痺側立脚期に膝が伸展する歩行(extension thrust pattern :以下,ETP)と膝の動きが健常者と近い歩行(normal knee pattern:以下,NKP)の片麻痺者に対し歩行時の麻痺側足関節の筋活動を分析した.〔対象〕対象は回復期片麻痺者14名とした.〔方法〕自由速度の歩行での麻痺側立脚期における麻痺側前脛骨筋と腓腹筋の筋活動を測定した.〔結果〕NPは単脚支持期と比較し荷重応答期で前脛骨筋の筋活動が有意に大きかったが,ETPは立脚期の間で前脛骨筋の活動に有意差を認めなかった.腓腹筋の筋活動は両者において立脚期の間で有意差を認めなかった.〔結語〕麻痺側立脚期に膝が伸展する要因として麻痺側荷重応答期の前脛骨筋の筋活動が関与している可能性が示された.
著者
和田 直樹 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.21-28, 2021

<p>〔目的〕座位から歩行までの動作において胸郭・骨盤角度の特徴を運動学的に分析し,若年者と高齢者の違いを明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕若年者14名と高齢者12名を対象に,3軸傾斜計・荷重スイッチシステム・ビデオカメラレコーダーにて座位からの歩行動作を計測した.〔結果〕高齢者は若年者と比較して一歩目離地時(foot off: FO)に胸郭・骨盤前傾角度が小さく,離殿からFOまでの時間が長かった.高齢者のFO時胸郭前傾角度・FOまでの骨盤前傾角度変化量とFunctional Reach Testに正の相関があった.〔結語〕両群ともに胸郭・骨盤前傾位で離殿するが,高齢者は前傾位を保持できずFOに至る.起立から歩行に短時間で移行するには胸郭の前傾に加え,骨盤の前傾が必要であることが新たにわかり,バランス機能の低下により若年者と異なる動作戦略に至ったと考えられる.</p>
著者
溝部 朋文 萩原 章由 松葉 好子 前野 豊 山本 澄子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.123-126, 2017-04-01 (Released:2018-04-15)
参考文献数
2
被引用文献数
1

運動麻痺が重度な片麻痺者の歩行練習の過程で,長下肢装具を使用することが多い.短下肢装具へ移行する際,その時期や歩容の悪化がしばしば問題となる.今回,長下肢装具から短下肢装具へ移行した際に歩容が変化した片麻痺者に対し,三次元動作解析を用いて歩行を計測した.長下肢装具使用時,視覚的には歩容は良好であったが,荷重応答期に股関節伸展モーメントが働いていなかった.短下肢装具へ移行後は,荷重応答期ではなく立脚中期に股関節伸展モーメントが働き,円滑な前方への重心移動が難しくなった.歩行機能再建の過程で長下肢装具を使用する際には,歩容だけでなく筋収縮の有無やタイミングを考慮すべきである.
著者
右田 正澄 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.845-849, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
17

〔目的〕脳卒中患者の短下肢装具装着に着目して,運動麻痺の程度や座位バランス能力などの身体機能が装着時間に関連があるか検討することを目的とした.〔対象と方法〕生活期の脳卒中患者19名に対して,Shoe Horn Braceとタマラック継手付短下肢装具(継手付AFO),Gait Solution Designの3種類の短下肢装具を用いて装着時間を比較し,その装着時間と運動麻痺や関節可動域,筋緊張,座位バランス能力との関連を分析した.〔結果〕装着時間は継手付AFOが有意に短く,装具の種類に限らず装着時間と座位バランス能力には有意な相関が認められた.〔結語〕3種類のAFOの装着時間と座位バランス能力には関連がある可能性が示唆された.
著者
和田 直樹 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.21-28, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
35

〔目的〕座位から歩行までの動作において胸郭・骨盤角度の特徴を運動学的に分析し,若年者と高齢者の違いを明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕若年者14名と高齢者12名を対象に,3軸傾斜計・荷重スイッチシステム・ビデオカメラレコーダーにて座位からの歩行動作を計測した.〔結果〕高齢者は若年者と比較して一歩目離地時(foot off: FO)に胸郭・骨盤前傾角度が小さく,離殿からFOまでの時間が長かった.高齢者のFO時胸郭前傾角度・FOまでの骨盤前傾角度変化量とFunctional Reach Testに正の相関があった.〔結語〕両群ともに胸郭・骨盤前傾位で離殿するが,高齢者は前傾位を保持できずFOに至る.起立から歩行に短時間で移行するには胸郭の前傾に加え,骨盤の前傾が必要であることが新たにわかり,バランス機能の低下により若年者と異なる動作戦略に至ったと考えられる.