著者
井田 秀行 高橋 勤
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.115-119, 2010 (Released:2010-06-17)
参考文献数
30
被引用文献数
2 5

2004年よりブナ科樹木萎凋病によるナラ枯れが顕在化している長野県飯山市では, 1750年にも同様の被害が発生していた。当時の様子は古文書に, 「神社の社叢において, 多数のナラ樹の葉が夏頃から変色し始め, 秋にほとんどが萎凋枯死した。虫は樹幹に加害しており駆除の手段がない」と記されていた。また, 対処法として, 被害発生の翌年, 直径19∼35 cm程度のナラ樹35本が売却され, 売上金が社殿の修復料に充てられたことや, 他の枯死木から約500俵 (約9.4 t) の木炭が作られたことが記されていた。これらの状況から, 当時の被害はカシノナガキクイムシが病原菌Raffaelea quercivoraを伝播して発生するブナ科樹木萎凋病による被害であると考えられる。すなわち, カシノナガキクイムシは江戸時代以前から我が国に生息しており, ブナ科樹木萎凋病は社叢のような大径木が多い立地で発生を繰り返していた可能性が高い。
著者
上野 健一 鈴木 啓助 山崎 剛 井田 秀行 南光 一樹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

簡易レーザー式・自動雨雪判別装置を開発し、中部山岳域における冬季の降雨発生の気象学的メカニズムと積雪構造への影響を明らかにした。降雨の長期発現傾向は10年規模スケールの低気圧活動に依存し、単調な増減傾向は見られない。雨雪変化は低気圧通過時の南北に走る大地形に沿った暖域と寒気団の交換過程に依存する。積雪の堆積期における降雨発現は積雪内に氷板を形成し、融雪時期まで記録される。一方で、全層ザラメ化した融雪機の降雨は積雪水量の急増と排水に寄与する。全層濡れザラメへの移行は春一番を伴う温暖な低気圧の発生に依存する。2014年2月に発生した大雪は、2014年2月の大雪は、本来、降雨となるべき降水が降雪でもたらされ、引き続く降雨も排水されず山岳域で記録的な積雪水量の増加を導いた。
著者
井田 秀行 青木 舞
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.105-114, 2006-12-05
被引用文献数
2

教員養成系大学生の身近な自然観を把握するため、信州大学教育学部(長野県長野市)の学生284名を対象にアンケートを実施した。アンケートでは幼少期の生活環境と、当学部の「自然数育実習」で扱われている題材のうち日本の伝統植物や代表的樹木に対する認識を探ることに焦点を当てた。その結果、多くの学生の幼少期の生活環境は、農村部のような自然が身近にある場所であったり、お年寄りとの接触が少なくない環境であったりした。ここで、お年寄りとの接触頻度は住宅地よりも農村部で高いことが示された。なかでも、農村部に暮らし、お年寄りとの接触も多かった学生ほど、自然遊びや伝統的外遊びをしていた割合が高く、日本の伝統植物である「春の七草」の正答率も比較的高かった。このことから、幼少期の生活環境が伝統植物への認識に、ある程度影響を及ぼしている可能性が示唆された。一方で、「秋の七草」や「ススキの利用法」への認識は低く、その要因として、人の生活様式の変化に伴う伝統植物の利用放棄や生育適地の衰退が、世代間の伝承の停滞を導いた可能性がある。日本の代表的樹種に多く挙がったのは、サクラ、マツ、スギ、ヒノキで、その傾向に幼少期の生活環境との関連性は認められなかった。また、長野県の代表的樹種の首位に挙がったシラカバの占める割合は、長野県出身者が県外出身者を大きく上回っていた。これらの樹木は一般的に比較的身近な存在ではあるが、サクラを除けば、それら樹木への認識の多くは、日常生活との関わりというよりも、むしろ、現在までに得られた知識やイメージの集約により形成されたものと考えられた。以上から、将来の学校教員としての役割を踏まえると、教員養成系大学における自然教育では、こうした学生の実状に合わせた授業の展開が必要だろう。例えば、漠然と捉えている自然を、より身近にかつ具体的に捉えられるよう、導入には、自然に関わる地域の風習、文化、季節の行事など身近な題材を用い、そこに生態学的な視点を盛り込むことで、身近な自然と人の関わりを理解することから始めると効果的であると考える。
著者
北野 聡 河合 吉図 井田 秀行
出版者
信州大学教育学部
雑誌
志賀自然教育研究施設研究業績 (ISSN:03899128)
巻号頁・発行日
no.40, pp.9-13, 2003

信州大学教育学部附属志賀自然教育研究施設研究業績 (40): 9-13(2003)
著者
渡辺 隆一 大久保 明紀子 井田 秀行
出版者
信州大学
雑誌
信州大学教育学部附属志賀自然教育研究施設研究業績 (ISSN:03899128)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.13-16, 2006-03-25

The leaf phenology of Betula ermanii was observed in Shiga Heights, central Japan from 1985 to 2004. During this period, 5 birches were selected and their phenological traits analyzed using succes- sive automatic daily photography. The annual variation of mean temperature at this monitor station, specifically over the last 10 years, has become increasingly warm. According to observable facts, these birches have gradually tended to accelerate the time of leaf flushing and delay the time of leaf coloring. This process is indispensable in clarifying the effects of global warming on ecosystems while continuing similar monitoring in/for the future.