著者
岡本 誠 井田 齊 杉崎 宏哉
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.113-119, 2001-11-26 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16

Larvae and a juvenile of two tetragonurids, Tetragonurus cuvieri (8 specimens, 6.8-18.5 mm BL) and T.atlanticus (4 specimens, 6.0-10.9 mm BL), collected by larval net from waters off eastern Japan, represent the first records of such from the North-West Pacific. Both species possessed spines on the interopercle and subopercle in their early life stages, a juvenile (18.5 mm BL) of T.cuvieri having one spine on each element, and a postflexion larva (10.8 mm BL) of T.atlanticus having two interopercle spines and one subopercle spine.
著者
井田 齊 林崎 健一
出版者
北里大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

ホルマリン中に長期保存されていた魚類標本からDNAの回収と増幅が可能となれば、過去に蓄積された標本を再利用して遺伝学的検討を行うことができ、水産学のいろいろな分野への応用が可能となる。しかし、ホルマリン固定標本では、保存中にDNAが断片化されており、また、組織の溶解も困難であると考えられる。それゆえ本研究では、断片化されたDNAを効率よく回収することを主眼として、DNA抽出手法の改良を行った。また、本手法を用いて回収されたDNAがどの程度利用可能かをPCR増幅可能長を基準として検討を行った。実験には約20年前までのシロザケ稚魚ホルマリン標本(ホルマリン固定後エタノールに置換したものも含む)の体側筋を用いた。組織の融解に関しては、高濃度の尿素をふくむTNESバッファー中でproteinase Kの連続添加が有効的であった。また、フェノール抽出の際には、遠心後の有機層からの逆抽出を行うことにより断片化したDNAを効率よく回収することができた。回収されたDNAのサイズを電気泳動により比較したところ、ホルマリン固定後数カ月を経過した後は、断片化の程度と保存期間の長短との関連は明確でなく、むしろ固定時の条件に左右されたものと考えられた。PCR増幅に関しては、ホルマリン標本はRAPD法には適さないことが明らかとなった。しかし、mtDNAのcytochrome b領域に関しては、約400塩基対まで増幅が可能であった。さらに、増幅産物をsequencingに供することも可能であったことから、魚類のホルマリン標本を用いてのDNA解析は、一般に困難ではあるが、抽出手法を改良することにより、短い領域を対象とすれば可能であることが明らかとなった。
著者
井田 齊 朝日田 卓 林崎 健一
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

絶滅種・希少種の系統を解析する目的で,ホルマリン固定後長期保存された魚類標本からのDNA抽出法および多型の解析手法に関して検討を行った。DNA抽出に関しては(1)組織の物理的粉砕,(2)組織溶解に先立つホルムアルデヒドの不活化処理,(3)プロティナーゼKによる組織溶解の条件の最適化,(4)組織溶解液からのDNAの回収条件の最適化の4点に関して手法の改良を行った。その結果(1)物理的な組織の粉砕は組織溶解を容易にするが,DNAをも切断する可能性があり避ける方が良く,(2)トリス・グリシンバッファーの処理法を工夫して短時間で効率的にホルムアルデヒドの除去が可能となるようプロトコルを改変した。(3)DTT添加した4M尿素を含むバッファーを用いて高温でプロティナーゼKの連続添加が最適であった。(4)回収されたDNAの収量とその精製度がPCR反応の可否に大きく影響した。エタノール沈殿等の回収法では精製度は低く,シリカマトリックス等を用いた精製では収量が極めて少なかった。しかしハイドロキシアパタイトを用いたDNA回収ではシリカマトリックスを用いた場合に匹敵する精製度が得られ,かつDNA収量も多く好成績であった。mtDNAのチトクロームb領域の一部のPCR増幅を行ったところ,20年前までのシロザケ標本に関しては約500塩基対の増幅が可能であった。PCR反応によるDNA増幅の長さには回収されたDNAの状態により限度が異なり,リュキュウアユ,クニマス等の特に古い標本ではmtDNAの約500塩基対の増幅も可能ではなかった。核DNAのマイクロサテライト領域では,解析にせいぜい500塩基対までといった短い断片が解析に用いられることから,ホルマリン標本を用いた系統解析,特に近縁種間の系統解析にはマイクロサテライト解析を行うことが有効であると考えられ,現在解析中である。
著者
井田 齊 林崎 健一
出版者
北里大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

三陸地方に回帰するシロザケの再生産形質(卵類・抱卵数)を資源量との関わりから検討した。調査の対象河川は岩手県南部の片岸川,盛川,気仙川の3河川である。1980年より1990年までの10年間に測定した試料を解析した。調査個体数は1598である。〔結果〕(1)回帰量は放流量と正の相関があり,近年は次第に増大傾向にある。(2)回帰量の増大とともに平均年齢は(回帰時の)高化している。(3)回帰魚の体長は経時的に振動しながらも減少傾向にあり,特に高令魚で顕著である。(4)この成長の鈍化は海洋生活の第1年目に顕著であることなどが判明した。再生産形質として卵経および抱卵数について,いずれの河川間でも差が認められた。河川間で年令組成および体の大きさに差があるので,魚体の大きさで修正した平均値で比較したところ,(1)卵サイズは高令魚ほど大きく,(2)抱卵数は逆に高冷魚ほど少ない傾向が認められた。魚体の小型化が進むにつれ,同一体重階終に属する魚の卵径は大きくなっている。これは各階級に属する魚の平均年令が上昇したことによる。