著者
伊藤 俊一 世古 俊明 田中 智理 久保田 健太 富永 尋美 田中 昌史 信太 雅洋 小俣 純一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0326, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】筋ストレッチングは,疼痛改善や関節可動域改善のための治療法の一つとして臨床で多用されている。その実施に関しては,静的ストレッチング(static stretching:以下,SS)と動的ストレッチング(dynamic stretching:以下,DS)が一般的である。SSは,目的とする筋群を反動動作なしにゆっくりと伸張を数秒から数十秒間保持する方法であり,SSは筋や腱の損傷の危険性が低く安全に実施することが可能とされている。近年では,近赤外線分光法(Nuclear Information and Resource Service:以下,NIRS)を用いた動物実験での筋血液動態の検討結果として,DSではSSに比べて筋収縮による血液循環の改善が認められるとされているが,ヒトにおける詳細な検討はない。また,ヒトを対象とした研究では,ストレッチング前後の関節可動域やパフォーマンスの比較は多数みられるが,血液変化での検討はほとんどない。本研究の目的は,ストレッチング法の違いがヒトでの筋血液量に与える影響を検討することである。【方法】対象は健常成人女性20人(21.7±0.7歳)とし,内科および整形外科的疾患を原因とする肩こりを有し薬物を使用している者や通院している者は除外した。また,対象のBMIは22.4±0.8であった。方法は,各被験者の利き手側を対象として,僧帽筋上部線維に対して頚部側屈他動的伸展によるSSとDSを24時間以上の間隔を空けてそれぞれ施行した。SSはストレッチ持続時間を30秒間×3セットとし,セット間は10秒間の安静とした。DSは5秒間の筋収縮後25秒間の安静を1セットとして3セット施行した。また,各ストレッチングの施行順序は無作為とした。筋血液量の変化は,ストレッチング介入前後での酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)をDyna Sence社製NIRSを用いて測定した。NIRSのデータの測定間隔は1秒とし,僧帽筋上部線維(第7頸椎棘突起と肩峰を結ぶ線上で,第7棘突起から3横指外側)に筋線維の走行と平行にプローブを貼付した。さらに,頚部側屈角度は酒井医療社製REVOによりストレッチング施行側の最大側屈角度を測定した。関節可動域の測定方法は,日本整形外科学会の測定方法に準じた。筋硬度の測定箇所は,イリスコ社製筋硬度計PEK-1を用いてNIRSのプローブ貼付部位と同一箇所とした。被験者は,いずれの条件下でも15分以上安静を保った後に測定を開始した。頚部側屈角度と筋硬度の測定は椅座位とし,筋ストレッチング実施前と実施後の2回の測定を行った。統計的解析には,Mann WhitneyのU検定とWilcoxonの順位和検定を用い,関節可動域および筋硬度には対応のあるt-検定を有意水準は5%未満として検討した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,福島県立医科大学会津医療センター倫理委員会の承認を得て,全対象者に書面により本研究の趣旨を説明し,同意書を得て実施した(承認番号24-21)。【結果】Oxy-Hb変化量(安静時値とストレッチング後の値との差)は,DSではSSと比較して有意な増加を認めた(p<0.01)。しかし,deoxy-Hbの変化および頚部側屈可動域,筋硬度には有意な差を認めなかった。【考察】NIRSの測定値に影響を与える因子として,被検者の皮下脂肪圧が挙げられている。先行研究では,BMI20-24の被験者では皮下脂肪厚が影響されないとされており,本研究の対象はすべてBMI20-24の範囲内であったことから,測定値に皮下脂肪厚の影響はないと考えられた。また,光岡らによるNIRSを用いた運動前後の筋内酸素動態の検討結果では,動脈血内においてはoxy-Hb量・deoxy-Hb量は両者ともに変化するが,静脈血内においてはoxy-Hb量は変化するがdeoxy-Hb量は変化しない,あるいは減少傾向を示すと報告されている。今回の結果,DSでは随意的な筋活動により,筋の収縮-弛緩による静脈還流を高めるミルキング作用が働き,DSではSSに比べ有意にoxy-Hb量を増加させた理由と考えられた。しかし,本研究により頚部側屈可動域,筋硬度には有意な差を示さなかったことは,今回の対象を健常成人女性としたためと考えられ,肩こりや頚部痛を有する対象者で再検討する必要がある。またさらに,本研究の対象者は20歳代の成人女性だけであるため,今後高齢者での加齢変化や性差の影響なども検討していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】従来から,疼痛の原因の一つとして筋の血行障害が挙げられている。これまでのヒトを対象としたストレッチングの検討結果は,ストレッチング施行前後の可動域,筋出力,パフォーマンスでの比較であり,筋血液動態での検討は少ない。本研究結果は,今後臨床において血行障害改善のためのストレッチングの選択や適応を検討するに際に有用になると考えられる。
著者
安藤 喜代美 宮嶋 秀光 伊藤 俊一
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、現代家族が直面しつつある墳墓の継承問題と、そうした継承を支えてきた寺院・檀家を中心にしたコミュニティの変質と家族のメンタリティを探求するものである。質的調査であるインタビュー調査と量的調査であるアンケート調査を用いた結果、寺院・檀家との関係は、その結びつきが墓制の変化とともに家族から個人へと変化する傾向があり、墓制の変容は日本型近代家族そのものの変化と関係性があり、この変化が墳墓の継承問題に顕在化していると推測される。
著者
伊藤 俊一 阿部 純一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.241-247, 1988-10-31 (Released:2010-07-16)
参考文献数
11

This experiment was conducted to investigate the function of connectives in text comprehension. Twenty six subjects were instructed to read six texts, each containing several target sentences. Eighteen target sentences were provided, and each of the subjects was presented half of the target sentences in their original form, i.e., with a connective (Connective condition, C), and the other half, without a connective (No-connective condition, NC). After reading, subjects were asked to recall all the target sentences. In recall, all the sentences preceding the target sentence were presented as a cue. Recall rate was higher for the C condition than for the NC condition. The result indicated that connectives facilitate text comprehension. This effect was seen most clearly in three connective categories called jyunsetsu (e. g., causality), gyakusetsu (i.e., adversative), hosoku (i.e., supplement) in Japanese.
著者
伊藤 俊一
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

・室町幕府は、設立当初より寺社本所領や遠隔地武家領の保護という土地所有秩序の維持・再建を目指していたが、内乱の継続により、前線の守護に権限を与えざるを得ず、政策が実施されないという問題を抱えていた。・守護の在京は南北朝内乱期当初より断続的に見られるが、貞治年間以降の在京は、在京が継続すると共に、在京奉行人の登場に象徴される守護の在京政務機構の整備を伴っており、それ以前とは質が違う。・在京奉行人は、人夫や兵根米の徴収、役夫工米や即位段銭の徴収、寺社本所領をめぐる紛争処理などの業務を担当した。・在京奉行人の登場により、寺社本所領主はこのルートを通じて、所領・所役の問題を直接に守護へ訴えることができるようになる。守護関係者と寺社本所関係者との間の日常的な接触も増える。・守護の在京政務機構の登場により、室町幕府の命令が守護によって遵行されないという問題に一定の解決がもたらされ、室町期荘園制の秩序が安定した。・守護在京制の確立により、京都は幕府を中心に、寺社・貴族などの諸権門、各地方への足がかりを持つ守護とその配下が集住し、利害を調整する場となった。そのような「在京人」社会を統御する存在として「室町殿」が立ち現れたと考えられる。・以上の成果は、室町期荘園制の成り立ちと室町幕府の性格を再考する重要な契機と成り得る。