著者
伊藤 雅子 野坂 久美子 守口 修 山田 聖弥 印南 洋伸 山崎 勝之 小野 玲子 甘利 英一
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.643-652, 1986
被引用文献数
11

岩手医科大学歯学部附屈病院小児歯科で行った開窓牽引症例56例,67歯について,処置の難易度を左右する因子を解明する目的で,臨床的に種々の点から再検討を行った。<BR>埋伏の原因では,位置異常が最も多かった。性別の出現頻度では,女子は男子の約2倍であった。歯種別の出現頻度では,上顎中切歯が最も多くを占めていた。上顎中切歯の彎曲歯では,その歯冠軸傾斜角度が100°前後,歯根彎曲度が60°以上でも90°以内であれば,根尖部が骨質から露出しない程度まで誘導し,その後補綴的処置をする事で誘導可能であった。<BR>処置開始年齢は,どの歯種も正常な萌出時期より約2年過ぎていたが,歯根未完成歯が85%を占めていた。処置法は,大臼歯部では全て開窓のみであり,上顎中切歯・犬歯は全て開窓後,牽引を行った。誘導期間は,平均約1年であったが,同じような条件の埋伏歯の場合,歯根未完成歯の力が誘導期間が短かったことから,正常な萌出時期と上ヒベ遅延傾向を認めたら,幽根完成前に処置を開始した方が得策と思われた。処置後の状態は,歯髄死,歯根の吸収,歯槽骨の吸収を認めた症例はなかった。歯肉部膨隆は,上顎中切歯4歯の根尖部に認めたが,根尖が歯槽粘膜上に露出するものはなかった。歯頸部歯肉の退縮は約20%に認められたが,ほとんどが0.5mmから1.0mm以内であった。なお,これらの退縮に手術法による差異はみられなかった。
著者
井土 哲志 大井 あや 三輪田 勤 富貴原 紗侑里 笠井 貴敏 伊藤 雅子 赤羽 貴美子 吉岡 修子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.331-338, 2020-05-30 (Released:2020-05-30)
参考文献数
11

【症例】42歳女性【既往】14歳Basedow病(以下GD),35歳 緩徐進行1型糖尿病,40歳 側頭葉てんかん【現病歴】X年2月に歩行時ふらつきを自覚,4月にシックデイとGD悪化で入院.改善し退院したが,6月に眼振と小脳失調症状を認め再入院となった.血清・髄液抗GAD抗体と血清抗グリアジン抗体陽性から自己免疫性小脳失調症と診断した.血漿交換,ステロイドパルス療法及びプレドニゾロン内服,グルテン制限食などの治療により改善し独歩退院となった.プレドニゾロン内服のためインスリンは増量となったが,血漿交換後にGDは改善し抗甲状腺薬は中止となった.【考察】多腺性自己免疫症候群(以下APS)3型の経過中に自己免疫性小脳失調症を発症した貴重な1例で,治療経過と併存症への影響について報告する.自己免疫性内分泌疾患を背景に持つ患者が小脳失調症状を呈する場合,本疾患を疑い早期に精査を行うべきである.