著者
加納 裕也 井上 裕康 櫻井 圭太 吉田 眞理 三浦 義治 中道 一生 西條 政幸 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.750-755, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 5

75歳男性.構音障害,左口角下垂で受診.頭部MRIで右中心前回に拡散強調画像で高信号病変を認め,脳塞栓症として入院したが,症状は悪化し画像でも病変の拡大も認めた.髄液JCウイルス(JCV)-DNA PCR検査は4回施行し陰性だったが,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)に矛盾しない経過と画像であり,初診から2ヶ月後に脳生検を行いdefinite PMLと診断した.基礎疾患は特発性CD4陽性リンパ球減少症のみで,非HIV-PMLとしてメフロキンとミルタザピンの併用療法を行い,初診から約29ヶ月という長期生存の転帰であった.髄液JCV-DNA PCR検査が繰り返し陰性でも,脳生検が診断に有用なことがある.
著者
井上 裕康
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.621-623, 2004-12-25 (Released:2017-10-10)
参考文献数
13

レスベラトロールは赤ワインに含まれる抗酸化作用を持つフィトアレキシン(抗菌性物質)である. レスベラトロールは中等度のワイン消費が心血管病, 脳卒中, 痴呆の危険度と負の相関を示す, いわゆる「フレンチパラドックス」に関与する物質と考えられてきた. 我々は最近, レスベラトロールが核内受容体PPAR(peroxisome proliferators activated receptor)αとPPARγを選択的に活性化すること, さらにPPARα活性化が脳保護効果をもたらすことを見いだした. これらの知見は「フレンチパラドックス」を説明する新しい作用機構を提供すると考えている. 一方で, レスベラトロールは寿命延長効果を持つカロリー制限模倣物質であること, オレイルエタノールアミドがPPARαの新しい内因性リガンドであり, その活性化によって食欲をコントロールすることが報告されている. そこでこれらの知見を含めて, 今後の展望とともに紹介したい.
著者
井上 裕康
出版者
日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.621-623, 2004-12-25

レスベラトロールは赤ワインに含まれる抗酸化作用を持つフィトアレキシン(抗菌性物質)である. レスベラトロールは中等度のワイン消費が心血管病, 脳卒中, 痴呆の危険度と負の相関を示す, いわゆる「フレンチパラドックス」に関与する物質と考えられてきた. 我々は最近, レスベラトロールが核内受容体PPAR(peroxisome proliferators activated receptor)αとPPARγを選択的に活性化すること, さらにPPARα活性化が脳保護効果をもたらすことを見いだした. これらの知見は「フレンチパラドックス」を説明する新しい作用機構を提供すると考えている. 一方で, レスベラトロールは寿命延長効果を持つカロリー制限模倣物質であること, オレイルエタノールアミドがPPARαの新しい内因性リガンドであり, その活性化によって食欲をコントロールすることが報告されている. そこでこれらの知見を含めて, 今後の展望とともに紹介したい.
著者
井土 哲志 大井 あや 三輪田 勤 富貴原 紗侑里 笠井 貴敏 伊藤 雅子 赤羽 貴美子 吉岡 修子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.331-338, 2020-05-30 (Released:2020-05-30)
参考文献数
11

【症例】42歳女性【既往】14歳Basedow病(以下GD),35歳 緩徐進行1型糖尿病,40歳 側頭葉てんかん【現病歴】X年2月に歩行時ふらつきを自覚,4月にシックデイとGD悪化で入院.改善し退院したが,6月に眼振と小脳失調症状を認め再入院となった.血清・髄液抗GAD抗体と血清抗グリアジン抗体陽性から自己免疫性小脳失調症と診断した.血漿交換,ステロイドパルス療法及びプレドニゾロン内服,グルテン制限食などの治療により改善し独歩退院となった.プレドニゾロン内服のためインスリンは増量となったが,血漿交換後にGDは改善し抗甲状腺薬は中止となった.【考察】多腺性自己免疫症候群(以下APS)3型の経過中に自己免疫性小脳失調症を発症した貴重な1例で,治療経過と併存症への影響について報告する.自己免疫性内分泌疾患を背景に持つ患者が小脳失調症状を呈する場合,本疾患を疑い早期に精査を行うべきである.
著者
勝川 路子 中田 理恵子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.18, 2009 (Released:2009-09-02)

目的 機能性食品成分による生活習慣病予防の分子機構解明を目指して、我々はプロスタグランジン産生の律速酵素である誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現抑制、そしてその発現抑制に関与する核内受容体PPAR活性化を指標にした研究を続けている。今までに赤ワインに含まれるポリフェノール・レスベラトロールがPPARα活性化を介して脳保護効果を持つことを報告してきた。また、種々の植物油の機能性を評価したところ、タイム油等の精油においてCOX-2の発現抑制が見出され(1)、さらにCOX-2発現抑制およびPPAR活性化の効果をもつタイム油の成分を同定した。今回は、タイム油以外の精油およびその成分について、両効果を検討したので報告する。 方法 COX-2発現抑制は、ウシ血管内皮細胞にCOX-2レポーターベクター・PPARγ発現ベクターを共導入した後、種々の精油及びその成分を添加し、LPS刺激によるCOX-2発現誘導に対する抑制効果を測定した。3種類のPPAR(α, β/δ, γ)の活性化は、同細胞にPPREレポーターベクターとそれぞれのPPAR発現ベクターを共導入して測定した。 結果 バラ油においてCOX-2発現抑制、PPARα,γの活性化が認められ、その効果にはバラ油の2種類の成分が主に関与することを見出した。 (1) 堀田真理子、中田理恵子、井上裕康 日本家政学会誌 59, 373-378 (2008)
著者
中田 理恵子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.215, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】生活習慣病の予防において、適度な習慣的運動の重要性が注目されているが、食事摂取とのバランスや相互作用については不明な部分が多く、分子レベルでの作用機構の解明は十分ではない。我々は、赤ワインに含まれるポリフェノール、レスベラトロールが生活習慣病の薬剤標的である核内受容体PPARを活性化すること、レスベラトロールを摂取したマウスで運動持久力が改善することを見出している。本研究では、レスベラトロール摂取によるPPARαを介した運動持久力改善効果の作用機構を検討するとともに、習慣的運動の効果についての検討を行った。【方法】PPARα欠損型(KO)および対照野生型(WT)雄性マウス(129系)に、レスベラトロール(0,0.4%)添加した普通食または高脂肪食を4週間摂取させた。期間中、週5日の運動を負荷する群としない群に分けて飼育を行った。飼育開始時と4週目に、トレッドミルを用いて運動持久力を測定した。飼育終了後には肝臓と筋肉を採取し、各種遺伝子の相対的発現量の変化を解析した。【結果】普通食群のWTでは、レスベラトロール摂取により肝臓でのPPARα依存的な遺伝子の発現誘導が認められた。習慣的な運動負荷を併用したWTでは、筋肉でのPPAR応答遺伝子群や持久力に関わる遺伝子の発現誘導が見られ、運動持久力の向上効果が認められた。しかしながら、KOあるいは高脂肪食を負荷したWTでは、この変化が消失した。以上より、レスベラトロールによる運動持久力改善効果にはPPARα活性化が寄与すること、筋肉におけるPPAR応答遺伝子の発現誘導には、レスベラトロールの摂取に加えて習慣的な運動負荷が必要で、その結果が運動持久力の向上につながること、運動持久力の改善には肝臓と筋肉の相互作用が関与する可能性があることが明らかとなった。