- 著者
-
会田 勝美
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1998
1.新しい光情報入力系の同定 魚類における網膜以外の新しい光情報入力系の分子基盤を明らかにするために,アユにおいて光受容能を持つことが示唆されている脳から光受容タンパク質の一つであるロドプシンのcDNA全長塩基配列を決定した。その結果,脳深部に発現しているロドプシンcDNAは網膜ロドプシンcDNAと塩基配列が完全に一致した。一方,魚類において光受容能を持つことが知られている松果体からは,エクソロドプシンcDNAがクローニングされた。この結果、脳内には異なる2種類のロドプシンが発現していることが判明した。2.生物時計機構の分子生物学的解析 メラトニンは環境の明暗情報ならびに時刻情報を伝達するホルモンである。魚類におけるメラトニン合成分子機構を明らかにするために,アユ網膜および松果体からメラトニン合成の律速酵素アリルアルキルアミランシフェラーゼ(AANAT)のcDNAクローンを2種類得た。RT・PCR法により,2種類のAANATのうち,AANAT1が網膜にAANAT2が松果体にそれぞれ特異的に発現していることを確認した。さらにリアルタイム定量的PCRによるAANAT1とAANAT2のmRNA定量法を開発し,網膜中のAANAT1と松果体中のAANAT2のmRNA量の様々な光条件における24時間変動を調べた。その結果,通常の明暗条件下は,網膜および松果体においてAANAT1とAANAT2のmRNAはそれぞれ生物時計によって制御されていることが判明した。3.メラトニン受容体の分子生物学的解析 縮重プライマーを用いたPCR法によりアユ脳に存在するメラトニン受容体のcDNAクローニングを試みてのところメラトニン受容体をコードしていると考えられるcDNA断片は得られていない。