著者
佐々木 保行
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.137-146, 1996-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
88
被引用文献数
2

本論文は, 父親の育児関与とそれが父親におよぼす影響についての概観を試みたものである. これまでわが国の発達研究者の多くは, 父親の子どもへの影響についてほとんど考慮してこなかった. 親子関係に関する大部分の研究は, 主として母子関係の研究に集約されている. そのため父性や父子関係の研究は, 大変少ないのが現状である. 他方, 欧米の研究者では, 家族を社会システムとしてとらえる見方が次第に濃厚になっている. その理由は, 母親, 父親, 子ども, の家族メンバーが, お互いに直接あるいは間接に影響しあう存在だからである. 近年, 父親の文化的イメージは, 養育する父親として, また子どもと同様, 発達する父親としてとらえられている.
著者
佐々木 保行 大日向 雅美
出版者
鳴門教育大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究は,パタニティ・ブルーとよばれる子どもの誕生から3か月位までの間にみられる,父親の役割をめぐる心理的動揺や葛藤による心身の症状を指す現象についての研究である。1987年にプルーエットがはじめて指摘した現象であるが,今日,子育てにおける父親の役割や父親になることの意義等に関する内外の研究が隆盛であるにもかかわらず,その発生のメカニズムの解明と防止策については,全くといってよいほど触れられていない。本研究は,少子化の問題や核家族に関する研究の蓄積が従来とくらべ顕著になっているが,父親と子ども,さらには父親と子育てという社会的,今日的課題を深める上で,父親の心理社会的対応をより細かく実現するためにも,これまで注目されなかった課題を取りあげることによって,父親研究をより推進する役割をになうことになる。本年度は,これまでのパタニティ・ブルーの特徴をチェックする質問項目の選定とその関連研究を,再度洗い直しをして,本研究の意義を確認する作業を実施した。チェック・リスト等は近々,学会や研究紀要等で発表する予定である。なお,わが国における最近10年間の父親研究のレビューを行うことによって,父親研究のもつ一つの盲点を指摘した。掲載論文は鳴門教育大学研究紀要(教育科学編)の第15巻である。
著者
佐々木 保行 八木 成和
出版者
鳴門教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究は子どもが様々な局面をのりこえることを通して、子どもに独立心や自主性を獲得させるための方策を検討することである。具体的には性被害から自らのからだと心を守ることのできる確かな態度と行動を学習できるスキルとそのプログラムの開発を行った。この研究を具体化するため、主にアメリカでの研究を参照しながら、幼児が自己の存在と人間性が否定されるような事態に遭遇した場合にとるべき態度と行動の実践的技法は、自己尊重の感情を表現する能力の育成である。そのため自己の感情を識別する学習が重要な課題となる。この感情識別学習は、学校教育でもまた家庭教育の中でも、わが国で取りあげられることが少なく、人権感覚や人権意識の育成の基礎的プロセスとして重要視されなければならない課題である。本研究では、幼児に対し絵本を使用して、“たのしい"“きもちいい"“おもしろい"“うれしい"などの快的・肯定的感情言語と“つまらない"“きもちわるい"“いやな"“かなしい"などの不快・否定的感情言語を、自己の言葉として表現できるプログラムを作成して実験した。その結果、幼児でも自己の感情を適切な感情言語を使用して、表現することが可能となった。一方、この感情識別学習の目的は肯定的自己イメージを育成することであるが、この課題と密接な関連をもつ側面に、性被害から自己を守る方法としての適切な判断のもとに対応できるスキルの獲得という課題がある。本年度はとくに、幼稚園の保育カリキュラムの中に“ロール・プレイ"を取り入れ、実践的な研究を行った。その結果、不快な感情を引き起こすような困難な事態の場合でも、明確な感情言語を発してその場から離れ、しかも“いやだ"という意志決定言語を使用することが可能となった。今後は小学生以上の子どもを対象とした具体的プログラムの開発を目的とする研究を展開する。