著者
蓑原 美奈恵 伊藤 宜則 大谷 元彦 佐々木 隆一郎 青木 國雄
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.607-615, 1988
被引用文献数
6 2

一地域住民38歳&sim;84歳の924名のうち,味質脱失者19名を除いた905名を対象とし,滴下法を用いて味覚検査を行った。味質は甘味:精製白糖,塩味:塩化ナトリウム,酸味:酒石酸,苦味:塩酸キニーネの4種に限定し,以下の結果をえた。<br>味覚識別能は4基本味質のいずれも,女性が男性より敏感に識別していた。また,男女とも味覚識別能検査値は,70歳代で最も鈍化し,80歳代ではやや敏感になる傾向など,加齢による変化を認めた。<br>また,総入歯群と義歯なし群や部分入歯群とを比較したが,義歯の状態による味覚識別能に対する影響は認めなかった。<br>喫煙による味覚識別能の影響は,喫煙量(本/日)の増加にともない,男女とも味覚識別能が鈍くなる傾向にあり,味覚識別能における性差は無くなった。塩味,酸味の識別能は喫煙量の増加にともない,男性が女性より敏感に識別し,性差が逆転したが,喫煙量の増加に従い鈍化する傾向は一致した。<br>さらに,味覚識別能に影響を認めた性,年齢を考慮した多変量解析を行った結果,喫煙量の増加にともない味覚識別能は鈍くなる量-反応関係が明らかとなった。その影響の強さは,苦味,酸味,塩味,甘味の順であった。
著者
佐々木 隆一郎 SUKUMURAN M. GAJALAKSHMI シー.ケイ CHANDRASEKAR アルナ KRISHNAMURTH エス SHANTA V. 岡本 和士 小川 浩 伊藤 宜則 横井 豊治 松山 睦司 M S Sukumura R Swaminatha ARUNA Chandr S Krishnamur V Shanta
出版者
愛知医科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

南インド(マドラス)には、宗教上の理由から肉を食しない菜食主義者が多い。癌登録資料からみたこの地域における乳癌の年齢調整罹患率は人口10万対20.8と、日本と同程度(大阪19.7)である。これは、乳癌の発生要因のひとつとして肉食が考えられているが、肉食以外の乳がんの発生要因を追究するには格好の地といえる。また、研究対象地域のマドラスでの癌研究は、WHOの技術援助を得て完成した癌登録を有するCancer Instituteが中心に行っており、疫学的な研究を行う基盤が整っていた。以上の理由により、1992年7月から、南インド・マドラスにおいて、菜食主義者での乳癌の患者対照研究を行った。患者は、1992年7月以降Cancer Instituteで新たに診断された乳癌患者である。対照は健康対照として病院に入院している患者の家族の中からから性、年齢を一致させた者1人、病院対照としてCancer Instituteを受診した他の部位のがん患者から性、年齢を一致させた者1人を選び、患者対照200セット(600人)を集め、検討した。検討した項目は、問診項目(社会経済状態、生殖歴、栄養素摂取量、心理要因など)、体格(身長、体重)、血清情報(ホルモンレベル、脂質類、ビタミン類など)などの項目である。1993年12月24日現在までに、面接によっての情報収集、体格情報の収集が終了したのは、乳癌患者200人、病院対照200人(乳癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌以外の癌)、健康対照200人についてである。個人についての栄養素摂取量の算出、全ての情報の計算機への入力を行った。現在までに心理面の解析から、健康対照に比べ、乳癌患者と病院対照(癌患者)は、ストレスの多いLife event、抑欝的な状態におかれていることなどが伺われた。さらに、病院対照に比べ、乳癌患者はよりこれらの傾向が強いことが示唆された。本研究では、ホルモンレベルの測定のために黄体期に採血を行っているが、上記の対象者の内採血が終了した者は、乳癌患者200人、病院対照200人、健康対照75人であった。初期の予想に反し、健康対照についての採血が困難を極めたので、今回は血液成分のうち、健康対照のホルモンレベルについての検討を断念することとした。血清についての解析からは、健康対照75人についての検討では、マドラスでのβカロテンのレベルは日本よりは低い傾向があること、レチノールのレベルはやや低いがほぼ同程度であることが示唆されている。また、乳癌患者と病院対照のホルモンレベルを比較すると、前者ではエストロゲンE1 75.7pg/ml、エストロゲンE2 42.3pg/ml、エストロゲンE3 2.1pg/ml、後者ではエストロゲンE1 59.4pg/ml、エストロゲンE2 13.3pg/ml、エストロゲンE3 1.2pg/mlであった。また、乳癌患者(197人)についてEIAキット(Trion Diagnostics Inc.)を用いてc-erbB-2蛋白陽性率を測定したが、20U/ml以上を陽性とすると、陽性率は約28%であった。現在、上記の成果をもとに、各研究担当者が業績のまとめを行っている。
著者
蓑原 美奈恵 伊藤 宜則 大谷 元彦 佐々木 隆一郎 青木 國雄
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.607-615, 1988-06-05 (Released:2009-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
7 2

一地域住民38歳∼84歳の924名のうち,味質脱失者19名を除いた905名を対象とし,滴下法を用いて味覚検査を行った。味質は甘味:精製白糖,塩味:塩化ナトリウム,酸味:酒石酸,苦味:塩酸キニーネの4種に限定し,以下の結果をえた。味覚識別能は4基本味質のいずれも,女性が男性より敏感に識別していた。また,男女とも味覚識別能検査値は,70歳代で最も鈍化し,80歳代ではやや敏感になる傾向など,加齢による変化を認めた。また,総入歯群と義歯なし群や部分入歯群とを比較したが,義歯の状態による味覚識別能に対する影響は認めなかった。喫煙による味覚識別能の影響は,喫煙量(本/日)の増加にともない,男女とも味覚識別能が鈍くなる傾向にあり,味覚識別能における性差は無くなった。塩味,酸味の識別能は喫煙量の増加にともない,男性が女性より敏感に識別し,性差が逆転したが,喫煙量の増加に従い鈍化する傾向は一致した。さらに,味覚識別能に影響を認めた性,年齢を考慮した多変量解析を行った結果,喫煙量の増加にともない味覚識別能は鈍くなる量-反応関係が明らかとなった。その影響の強さは,苦味,酸味,塩味,甘味の順であった。
著者
三石 聖子 宮島 里美 白上 むつみ 中村 香子 金本 直子 石田 香栄子 中村 恵子 佐々木 隆一郎
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.40-41, 2008-08

平成18年度、小学校から大規模な嘔吐・下痢症発生の連絡を受けた。健康づくり支援課では食品・生活衛生課と協力して積極的疫学調査を行った。結果として、原因としては食中毒の可能性は極めて低く、ノロウイルス感染症であることが疑われた。今回の経験から、感染症、食中毒の両面からの積極的疫学調査を、適切かつ目的を明確にして行うことの重要性を痛感したので報告する。