著者
安元 健 NOELSON Raso NORO Ravaoni 佐竹 真幸 NOELSON Rasplofonirina RASOLOFONIRI ノエルソン RAVAONINDRIN ノロ
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

マダガスカルにおける現地調査の結果、近年になって高死亡率の魚介類食中毒が多発していることが明らかになった。サメを原因とする食中毒は1993年以降に6件発生し、980名の患者と65名の死者の発生が判明した。ウミガメによる食中毒は1993年以降に5件発生し、414名の患者と29名の死亡者を出している。ニシン科に属する小型魚のミズンを原因とする食中毒(クルペオトキシズム)では、1名が中毒し死亡している。中毒原因となった有毒試料の入手は極めて困難であり、サメ、ウミガメ、ミズンのそれぞれについて1検体ずつ、数十グラム以下の試料しか得られなかったが、入念に解析を行い、以下の成果を得た。[サメ中毒]原因毒はシガトキシンと同様にNaチャネル活性化作用を有するものの、マウスの症状及びHPLCの挙動が異なることを明らかにし、主要毒2成分を単離してカルカトキシンAおよびカルカトキシンBと命名した。僅か数十ミクログラムの量であるが、化学構造の追究を継続している。[ウミガメ中毒]アオウミガメの内臓と推定される部位90グラムを得た。ヒト中毒症状及び毒のクロマトグラフィーにおける挙動から、らん藻の有毒成分であるリングビアトキシンとの類似性を指摘し、さらに追究を行っている。[クルペオトキシズム]中毒検体の頭部1個から微量の毒を検出し、クロマトグラフィーにおける挙動、細胞毒性、溶血性、抗体反応の結果からパリトキシンと同定した。
著者
佐竹 真幸
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.309-310, 1996-03-01
被引用文献数
1
著者
菅原 孝太郎 北村 嘉章 佐竹 真幸 村田 道雄 橘 和夫
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.433-438, 2011

Our continuous efforts for search of new bioactive compounds led to isolation of a polyene-polyol, prorocentrol, from P. hoffmannianum (CCMP 683). Although a ketone-hemiacetal tautomerism was observed during the course of NMR measurements, NMR measurements in pyridine-d_5/D_2O (6:1) at room temperature gave simplified NMR spectra. Detailed COSY and TOCSY analyses led to four 114 spin-networks, which were constructed to gross structure on the basis of HMBC correlations. The stereoconfigurational analysis of prorocentrol was undertaken by extensive utilization of 2D-NMR methods. The conformation of cyclic ethers in the molecule was analyzed based on NOESY correlations and ^3J_<H,H・> A JBCA method was applied for elucidation of the relative configurations of chiral centers in acyclic portions. Where HETLOC did not give sufficient intensity, qualitative utilization of the relationship between HMBC signal intensity and corresponding ^<2,3>J_<C,H> turned out to be effective especially for the methyl bearing portions. Moreover, the universal NMR database method was also applied on the continuous polyol segments as an alternative way for the JBCA to reveal the relative configuration. As a particular property of prorocentrol, suggestive evidences for an association of prorocentrol and okadaic acid were indicated from chromatographic behaviors and changes of NMR chemical shifts.
著者
佐竹 真幸
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

和歌山県串本で分離されたGymnodinium mikimotoi(karenia mikimotoi)をT1培地中25℃で28日間培養した。また、ギムノシン類の分子内^<13>C濃度を上昇させるため、NaH^<13>CO_3添加培養を行った。定常期に達した藻体を遠心分離によって収穫後、藻体をヘキサンで脱脂し、80%PrOHで抽出した。抽出物を溶媒分画に供した後、イオン交換,逆相系カラムを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。溶出位置の確認は、細胞毒性試験とフォトダイオードアレイ検出器を用いて行い、ギムノシン-Bの単離に成功した。単離したギムノシン-BをMSおよびNMR測定に供し、化学構造の決定を行った。約2300Lの培養から、ギムノシン-Bを2.5mg単離した。ギムノシン-Bは、メタノール等の極性溶媒に対する溶解性が極端に悪く、使用可能なカラム、溶媒の種類が限定されたため、その精製は困難であった。MSおよびNMR分析よりギムノシン-Bの分子式は、C_<62>H_<90>O_<20>と推定された。NMRスペクトルとCID FAB MS/MSスペクトルの詳細な解析から、ギムノシン-Bの構造は、分子末端に2-メチル-ブテナール構造を有し、5〜7員環の15個のエーテル環が梯子状に連結した新規ポリエーテル化合物と推定した。連続したエーテル環数15は、これまで構造決定されたポリエーテル化合物の中で最大であった。ギムノシン-Bのマウスリンパ腫細胞P388に対する細胞毒性は、1.5μg/mlであった。
著者
安元 健 KASPAR H.F. 佐竹 真幸 大島 康克
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究ではニュージーランドで発生した(1)神経性貝毒(2)カキの新奇毒成分(3)麻痺性貝毒の3種の貝毒を対象として情報の交換、試料の収集、原因毒の解明についての共同研究を実施した。研究実績の概要は下記の通りである。1。神経性貝毒1992年12月から1993年の1月にかけて発生した食中毒について、疫学調査、発生プランクトンの種類、及び毒の薬理作用についての予備試験結果から神経性貝毒であろうと推定し、原因毒の単離・構造決定を実施した。共同研究者の協力により約270kgのイガイ中腸腺を入手した。原因プランクトンとしてはGymnodinium breveまたはその近似種が示唆されていた。本種はブレベトキシン類を生産することが知られているが、イガイからは既知のブレベトキシン類は検出されなかった。代わってブレベトキシンの新奇類縁体3成分が単離された。成分1はC_<53>H_<79>NO_<17>S(MW:1033)の分子式を有し、ジアステレオマ-4成分の混合物と推定された。成分2では42位炭素がカルボキシル基に酸化され、さらにD環が開環しており、新たに生じた10位の水酸基に脂肪酸がエステル結合していると推定された。成分3はブレベトキシンBの基本骨格を保持し、側鎖に修飾を受けた新奇物質と推定された。現在立体配置を含めた構造の確認を進めている。成分1と3ではマウス致死毒性およびNaチャンネル活性化作用が確認された。2。カキの新奇毒成分1993年に南島南端のFoveaux海峡周辺でカキが毒化した。原因プランクトンはGymnodinium cf.mikimotoiと推定された。毒化したカキの試料約60kgを入手し、その30kgをアセトンで抽出して原因毒の単離・精製を行った。その結果、原因毒は分子式C_<32>H_<45>NO_4(MW:507)を有する新奇イミンであることを確認したのでジムノジミン(gymnodimin)と命名した。ジムノジミンは分子内に16員の大きな炭素環、6員環イミン、ブテノリド環を含む特異な構造を有する。既に平面構造を確定し、現在は絶対構造の確認を目指して誘導体の調製を行っている。ジムノジミンのマウス腹腔内投与による最少致死量は450μg/kgを示した。小型淡水魚のアカヒレを用いた魚毒性試験で求めた最少致死濃度は0.10ppm(20nM)であり、魚類に対して強力な毒性を示すことが明らかになった。細胞毒性や溶血性は認められず、培養細胞を用いたNaチャンネル活性試験でも顕著な活性は検出されなかった。共同研究者から提供を受けたG.cf.mikimotoiを培養し、その抽出物をLC/MSで分析したところジムノジミンが検出され、本種が毒の起源であることが確認された。3。麻痺性貝毒麻痺性貝毒を生産する渦鞭毛藻としてはAlexandrium属、Gymnodinium属、及びPyrodinium属が知られているが、ニュージーランドではA.minutum及びA.ostenferdiiの出現が確認されている。同国内で採集されたA.minutumの1株及び異なる地域で採集されたA.ostenferdiiの5株について、培養を行い毒生産能の確認及び毒組成の分析を行った。その結果、A.ostenferdiiの1株は無毒であり、この無毒株も含めて5タイプに区別され、多様な毒組成を示した。同国内のA.minutumはほぼ同じ組成を示したが、著量のサキシトキシンとネオサキシトキシンを生産する点に特徴が見られた。