著者
神野 耕太郎 佐藤 勝重 佐藤 容子 酒井 哲郎 山田 幸子 廣田 秋彦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

神経電位活動の光学的測定法は、中枢神経系のシステムレベルでの“機能"や“機能構築"の研究で新しい強力な実験手段とストラテジーとなってきている。ところが、この方法は、二次元計測に限られ、「三次元計測」が出来ないことが一つの大きな難点となており、それを克服するための新しい方法の開発が緊急性を要する重要問題になっていた。このような状況を背景にして、本研究は、「中枢神経系におけるニューロン活動を光学的シグナルとして三次元的に計測する方法を開発し、確立する」ことを目的として行われた。この研究を推進するに当たっては、これまでわれわれのグループで開発してきた「ニューロン電位活動の光学的多チャンネル二次元計測システム」をベースにして、「三次元計測法」をハードとソフトの両側面から検討し、その開発とその適用についての研究を進めた。(1)光学切片法の基本的手法の開発:原理的には光学顕微鏡による三次元画像法に準じる方法で、「形態画像の鮮明度」を「光学的シグナル」に置き換えて処理する。対象標本を光照軸(Z軸)に沿って移動させて焦点面をずらしながら光学切片を作る。各々の切片(焦点面)から光学シグナルを多エレメントフォトダイオードを用いて同時記録し、フォトダイオードに対応する二次元平面(x,y)とZ軸方向に沿って得られるシグナル系列をもとにして、ニューロン活動領域の三次元像を求める手法を開発した。これを主として脳幹に適用し、舌咽神経核、迷走神経核、三叉神経脊髄路核などに対応するニューロン活動領域の三次元像を再構成する方法を導いた。(2)共焦点レーザ走査蛍光顕微鏡を用いる方法:共焦点光学系では合焦点位置と光学的に共役な位置(共焦点面)にピンホールを置き、焦点面を移動させて、厚みのある組織標本を光学的にスライスすることにより、複数の焦点面からシグナル系列が得られる。この方法により、特に脳皮質の層構造に対応するニューロン活動の三次元像を再構成する方法の開発を手がけたが、まだ未完成であり、今後も続けて検討することになった。
著者
野口 美幸 佐藤 容子 野呂 文行
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.237-247, 2005-03

本研究は、第1に不注意や多動を示す児童が示す攻撃的行動の実態を明らかにすること、第2に不注意や多動を示す児童の攻撃的行動の高低によって、抑うつや孤独感の状態が異なるかどうかを明らかにすることを目的としていた。研究1では、不注意・多動群の児童(N=85)と統制群の児童(N=86)の攻撃的行動を比較した。その結果、不注意・多動群は統制群よりも攻撃的行動尺度の得点が有意に高いこと示された。研究2では、まず、不注意・多動群と統制群の抑うつと孤独感について比較したところ、不注意・多動群は有意に孤独感の得点が高かった。次に、不注意・多動群と統制群をそれぞれ攻撃的行動高群、低群に分け、4つの群の間の抑うつおよび孤独感について比較した。その結果、抑うつについても孤独感についても群間に有意差は見られなかった。今後は攻撃的行動を細かく分類し、怒りや敵意を考慮に入れて検討してゆくことが重要であると考察された。
著者
石川 信一 戸ヶ崎 泰子 佐藤 正二 佐藤 容子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.572-584, 2006-12-30
被引用文献数
1

本稿の目的は,児童青年に対する抑うつ予防プログラムのレビューを行うことであった。初めに,抑うつのリスクファクターには,個人的要因,社会的要因,認知的要因,家族の要因,外的な出来事要因があることが示された。このリスクファクターを軽減するための予防的介入要素は以下の4つに分類できることが分かった。(1)環境調整,(2)社会的スキルの獲得,(3)問題解決能力の向上,(4)認知への介入である。次に,予防研究をユニバーサルタイプとターゲットタイプ(indicatedとselectiveの予防プログラム)の2つに分類した。先行研究の多くは,ターゲットタイプのプログラムは抑うつの予防に効果があることを示している。一方,ユニバーサルタイプの結果は一貫していない。特に,長期的予防効果についての実証はあまりなされていない。最後に,抑うつ予防研究における実践と研究における示唆について議論がなされた。