- 著者
-
保田 謙太郎
中山 祐一郎
- 出版者
- 日本雑草学会
- 雑誌
- 雑草研究 (ISSN:0372798X)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.1, pp.9-16, 2016 (Released:2016-05-07)
- 参考文献数
- 32
- 被引用文献数
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タイヌビエ(Echinochloa oryzicola)の日本国内での地理的変異を明らかにするため,沖縄県を除く636地点で穂を収集し,小穂C型とF型の分布を調べた(調査1)。また,日本国内4ヶ所の標本庫に収蔵されている87点の標本を対象に両型の分布を調べた(調査2)。調査1ではC型は396地点で,F型は377地点で収集された。種間重なり合い指数(ω)からは両型の分布は独立であり,Moran’s I統計量からは両型とも有意な正の空間的自己相関を持ち特定の地域に偏って分布していると判断された。調査2では北海道と近畿地方で採集された標本が多く,それら地域での傾向は調査1の結果に類似した。両調査によってC型は東京都,神奈川県,山梨県,静岡県,愛知県,近畿地方,岡山県,鳥取県,広島県,山口県,四国地方,福岡県,大分県までの連続した地域で非常に高い頻度で分布しており,F型は北海道,東北地方,北陸地方,長野県までの連続した地域と千葉県と鳥取県で非常に高い頻度で分布していることが明らかになった。C型は太平洋側の水田中に多く,F型が日本海側の水田中に多い傾向にあるとする従来までの見解を一部修正した。