著者
那須 隆 小池 修治 倉上 和也 青柳 優
出版者
THE JAPAN LARYNGOLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.8-12, 2010-06-01 (Released:2010-10-08)
参考文献数
14

The objective of our study was to determine the risk factors of late-onset radiation induced morphologic change and function disorder in larynx. Six cases of late-onset laryngeal necrosis and fibrosis after radiotherapy for head and neck cancers between 1994 and 2008 were evaluated. All of the patients were male with ages ranging from 57 to 74 years. The cases included three with supraglottic laryngeal cancer (T2), two with glottic laryngeal cancer (T1a), and one with an unknown origin metastatic neck tumor. Radiation injury was found from as early as 4 months up to 77 months after radiotherapy. Laryngeal late-onset radiation-induced Morphologic change and functional disorder were observed in patients having had supraglottic laryngeal cancer (T2), concurrent chemoradiotherapy, LASER surgery, or an over exposure dose. Consequently these patients were thought to be at risk for delayed radiation-induced sequelae. While almost all laryngeal necrosis was found within 6 months, supra-laryngeal fibrous stenosis was observed even beyond 24 months. It was difficult to discriminate between i Laryngeal necrosis and recurrent cancer, as well as to determine an early diagnosis of supra-laryngeal fibrous stenosis. It is, Therefore, essential that patients with risk factor of late-onset radiation-induced sequelae be followed up over the long-term.
著者
鈴木 祐輔 太田 伸男 倉上 和也 古川 孝俊 千田 邦明 八鍬 修一 新川 智佳子 高橋 裕一 岡本 美孝 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-200, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21

鼻噴霧用ステロイド薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいて花粉症治療の中心的な薬剤として推奨されている。しかし初期療法としての鼻噴霧用ステロイド薬と,抗ヒスタミン薬を中心とした併用療法の効果について比較した報告は少ない。今回我々は,スギ花粉症患者20 例を鼻噴霧用ステロイド薬(デキサメタゾンシペシル酸エステル)群(DX-CP 群)6 例と,第二世代抗ヒスタミン薬(オロパタジン塩酸塩)にモンテルカストを追加併用した抗ヒ+抗LT 薬群14 例に分け,治療効果につき検討を行った。検討項目は鼻症状,JRQLQ No.1 によるアンケートおよび鼻腔洗浄液のeosinophil cationic protein (ECP) と血管内皮細胞増殖因子(VEGF) の濃度とした。DX-CP 群では飛散ピーク期と飛散終期の鼻症状スコアの上昇を抑え,鼻閉症状では有意にスコアを減少させた。抗ヒ+抗LT 薬群では飛散ピーク期に症状スコアが上昇したが抗LT 薬を併用した飛散終期にはスコアが低下した。QOL スコアではDX-CP 群の飛散ピーク期において抗ヒ+抗LT 薬群に比べ有意にスコアを抑えた。鼻腔洗浄液中のECP 値, VEGF 値はDX-CP 群ではシーズンを通じて値の上昇を抑えた。よってDX-CP は抗ヒスタミン薬や抗LT 薬と同様に季節性アレルギー性鼻炎に対する初期療法薬として非常に有用であると考えられた。
著者
倉上 和也 太田 伸男 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.9-14, 2012-12-29
参考文献数
55
被引用文献数
1

IgG4関連疾患は,全身の諸臓器にCD4ないしCD8陽性Tリンパ球とIgG4陽性形質細胞が浸潤する全身性疾患であり,IgG4陽性細胞の浸潤は,唾液腺,甲状腺,膵臓,胆管,後腹膜などに認められることが多い。近年,自己免疫性膵炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症など,これまで独立して診断されてきた疾患が,新しい疾患概念であるIgG4関連疾患の一つの表現型である可能性が示唆されている。耳鼻咽喉科領域においては,ミクリッツ病やキュットナー腫瘍などの硬化性唾液腺炎やRiedel甲状腺炎などがIgG4関連疾患であるといわれている。IgG4関連疾患では,自己免疫性膵炎や硬化性胆管炎で発症する例も少なくないが,耳下腺,顎下腺,涙腺の腫脹が自覚症状として認識しやすいため,耳鼻咽喉科や眼科を最初に受診する例が多く存在する。また無痛性であるため,医療機関を受診していない例も相当数存在すると予想される。しかしながら,IgG4関連疾患は単独の病変にとどまらず,経過中に全身諸臓器に病変を生じることが知られており,注意が必要である。当科で経験した症例においても,その約半数に自己免疫性膵炎をはじめとした他臓器合併症を認め,他科との連携治療を行っている。IgG4関連疾患は,たとえ初診時の症状や所見が軽微なものであったとしても,詳細な全身検索と長期間の経過観察,また他科との密接な連携を要する疾患である。<br>
著者
倉上 和也 長瀬 輝顕 神宮 彰 和氣 貴祥
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.252-259, 2014 (Released:2014-06-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

アルカリ性薬物の誤飲による咽喉頭食道炎は,粘膜びらん,壊死,瘢痕狭窄などさまざまな病態を呈し,致死的な状況となりうる。アルカリ性薬物誤飲例の報告自体が稀であるが,喉頭蓋脱落を観察した症例は文献的にはない。今回われわれは,95%水酸化カリウム誤飲により生じた腐食性咽喉頭食道炎に対し,長期入院および手術的加療を行い救命し得た症例を経験したので,詳細な咽喉頭所見の経過を含め報告する。症例は39歳男性。飲酒後にアルカリ性パイプ洗浄剤を誤飲し,嘔吐,振戦様痙攣をしているところを家人に発見され,当院急患室へ救急搬送された。声門狭窄は認めなかったものの,中下咽頭,舌根部,披裂部,喉頭蓋に粘膜の腐食性変化を認めた。全身麻酔下に気管切開術を施行し,集中治療室にて人工呼吸管理を行った。喉頭浮腫や粘膜炎は徐々に軽快したものの,第37病日より喉頭蓋の脱落を認め,喉頭蓋はほぼ完全に脱落した。脱落後は,喉頭蓋基部で周囲組織と癒着し,発声および経口摂取が不能な状態になった。第175病日に咽頭喉頭食道摘出術および有茎空腸による再建,永久気管孔形成術を施行した。2年経過した現在,重大な有害事象の出現を認めず,社会復帰し,経過観察中である。