著者
草野 佑典 太田 伸男 湯田 厚司 小川 由起子 東海林 史 粟田口 敏一 鈴木 直弘 千葉 敏彦 陳 志傑 草刈 千賀志 武田 広誠 神林 潤一 志賀 伸之 大竹 祐輔 鈴木 祐輔 柴原 義博 中林 成一郎 稲村 直樹 長舩 大士 和田 弘太 欠畑 誠治 香取 幸夫 岡本 美孝
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.6, pp.469-475, 2020-06-20 (Released:2020-07-01)
参考文献数
14

スギ花粉症に対する舌下免疫療法薬が2014年に発売されてから4シーズンが経過したが, 実臨床における診療の実態は不明な点が多い. 2016年, 2017年にも同様の調査を行い報告してきたが, 今回2018年花粉飛散シーズン後に, スギ花粉症に対する舌下免疫療法を開始してから1~4シーズン経過した患者431例を対象として, 服薬状況, 自覚的治療効果, 副反応, 治療満足度, 治療に伴う負担などについて自記式質問紙を用いたアンケート調査を行った. 年齢分布は10歳代と40歳代に二峰性の分布を示した. 自覚的効果については1シーズン目と比較して2シーズン目以降で治療効果を自覚していると回答した患者割合が高い傾向にあり, 治療効果を自覚するためには少なくとも2シーズンの治療継続が望ましい可能性が示唆された. 副反応については, 1シーズン終了群では23.4%の回答で認めたが2シーズン目以降は5.6%, 5.0%, 1.2%と減少する傾向が見られ, 1シーズン継続することができればそれ以降の治療継続に大きな影響を及ぼす可能性は低いと考えられた. 4シーズン目になると積極的に治療継続を希望しない患者がおり, 今後は治療の終了時期に関する検討が望まれる.
著者
鈴木 祐輔 太田 伸男 倉上 和也 古川 孝俊 千田 邦明 八鍬 修一 新川 智佳子 高橋 裕一 岡本 美孝 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-200, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21

鼻噴霧用ステロイド薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいて花粉症治療の中心的な薬剤として推奨されている。しかし初期療法としての鼻噴霧用ステロイド薬と,抗ヒスタミン薬を中心とした併用療法の効果について比較した報告は少ない。今回我々は,スギ花粉症患者20 例を鼻噴霧用ステロイド薬(デキサメタゾンシペシル酸エステル)群(DX-CP 群)6 例と,第二世代抗ヒスタミン薬(オロパタジン塩酸塩)にモンテルカストを追加併用した抗ヒ+抗LT 薬群14 例に分け,治療効果につき検討を行った。検討項目は鼻症状,JRQLQ No.1 によるアンケートおよび鼻腔洗浄液のeosinophil cationic protein (ECP) と血管内皮細胞増殖因子(VEGF) の濃度とした。DX-CP 群では飛散ピーク期と飛散終期の鼻症状スコアの上昇を抑え,鼻閉症状では有意にスコアを減少させた。抗ヒ+抗LT 薬群では飛散ピーク期に症状スコアが上昇したが抗LT 薬を併用した飛散終期にはスコアが低下した。QOL スコアではDX-CP 群の飛散ピーク期において抗ヒ+抗LT 薬群に比べ有意にスコアを抑えた。鼻腔洗浄液中のECP 値, VEGF 値はDX-CP 群ではシーズンを通じて値の上昇を抑えた。よってDX-CP は抗ヒスタミン薬や抗LT 薬と同様に季節性アレルギー性鼻炎に対する初期療法薬として非常に有用であると考えられた。
著者
欠畑 誠治 寺田 小百合 伊藤 吏 天野 彰子 杉山 元康 窪田 俊憲 小泉 優
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ROCK阻害薬の蝸牛神経障害に対する再生効果をin vivoの実験系で検討することが目的である。蝸牛神経障害モデルの評価には正常群と障害群の比較評価、治療効果判定には障害群(生食投与コントロール)と治療群(ROCK阻害薬局所投与、ROCK阻害薬全身投与) の比較検討を行う。蝸牛神経障害モデルの作製、ROCK阻害薬の投与方法の検討、蝸牛神経障害およびROCK阻害薬作用の機能的・形態学的解析を行う。
著者
倉上 和也 太田 伸男 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.9-14, 2012-12-29
参考文献数
55
被引用文献数
1

IgG4関連疾患は,全身の諸臓器にCD4ないしCD8陽性Tリンパ球とIgG4陽性形質細胞が浸潤する全身性疾患であり,IgG4陽性細胞の浸潤は,唾液腺,甲状腺,膵臓,胆管,後腹膜などに認められることが多い。近年,自己免疫性膵炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症など,これまで独立して診断されてきた疾患が,新しい疾患概念であるIgG4関連疾患の一つの表現型である可能性が示唆されている。耳鼻咽喉科領域においては,ミクリッツ病やキュットナー腫瘍などの硬化性唾液腺炎やRiedel甲状腺炎などがIgG4関連疾患であるといわれている。IgG4関連疾患では,自己免疫性膵炎や硬化性胆管炎で発症する例も少なくないが,耳下腺,顎下腺,涙腺の腫脹が自覚症状として認識しやすいため,耳鼻咽喉科や眼科を最初に受診する例が多く存在する。また無痛性であるため,医療機関を受診していない例も相当数存在すると予想される。しかしながら,IgG4関連疾患は単独の病変にとどまらず,経過中に全身諸臓器に病変を生じることが知られており,注意が必要である。当科で経験した症例においても,その約半数に自己免疫性膵炎をはじめとした他臓器合併症を認め,他科との連携治療を行っている。IgG4関連疾患は,たとえ初診時の症状や所見が軽微なものであったとしても,詳細な全身検索と長期間の経過観察,また他科との密接な連携を要する疾患である。<br>
著者
佐々木 亮 欠畑 誠治 武田 育子 木村 恵 新川 秀一 松原 篤
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.198-205, 2015-06-30 (Released:2015-09-03)
参考文献数
23
被引用文献数
1

要旨 : 突発性難聴に対する副腎皮質ステロイド (以下, ステロイド) の鼓室内投与による治療の報告は約10~15年間で数多くみられるようになってきた。しかし, 治療や聴力改善の基準が統一されていないことや症例数が少ないことなどから, その効果は明らかなものではない。我々は突発性難聴に対する治療として短期間連日デキサメサゾン鼓室内注入療法 (IT-DEX) を第一選択として行っている。CO2 レーザーによる鼓膜開窓をステロイドの注入ルートとして用い, 原則として単独治療を行っている。本治療を行った96例における治癒率は39.6%であった。また, 厚生省研究班による突発性難聴に対する単剤投与の有効性の検証に症例の基準を合致させて IT-DEX 単独初期治療の効果を検討したところ, 対象症例27例中治癒は20例, 治癒率は74.1%となり, 厚生省研究班の単剤投与の成績と比較しても良好であった。症例数が少ないことが問題と思われ, 多施設での検討などが必要ではないかと考えられた。
著者
新川 智佳子 欠畑 誠治 伊藤 吏 小泉 優
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

4~8kHzのバンドノイズを130dBの大きさで3時間モルモットに暴露することにより、持続的な高度難聴を示す内耳障害モデルの作製した。この内耳障害モデルに、障害翌日にマイクロカテーテルを用いてMuse細胞の移植を行った。10,000細胞移植した群では、移植後6週から12週まで、4kHzと8kHzにおいて、コントロール群に比べて、有意に聴力の回復を認めた。また移植後12週の時点で外有毛細胞の消失率を検討したところ、8kHzの担当周波数領域において、対象群ではコントロールに比べ有意に外有毛細胞の消失率が低いことが判明した。現在はMuse細胞のコルチ器への遊走や生着について検討中である。
著者
渡邊 千尋 大和田 聡子 伊藤 吏 村上 信五 欠畑 誠治
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.178-184, 2019-06-30 (Released:2019-08-02)
参考文献数
15

Herein, we present a patient with superior semicircular canal dehiscence syndrome (SCDS) manifesting as convergence spasms, which were alleviated by canal plugging surgery. SCDS is described in the literature by Minor as “a condition characterized by vertigo and oscillopsia induced by loud sounds or changes in the pressure of the external auditory canal or middle ear due to the dehiscence of the bone overlying the superior semicircular canal.” Convergence spasms are characterized by intermittent sustained convergence, accommodative spasms and miosis, and are likely to be caused by a functional disease, although in some cases, it is a manifestation of an organic disease. A 49-year-old male patient visited our department with a 2-year history of intermittent sudden vertigo and cloudy vision. The vertigo attacks had gradually increased in frequency and could last all day. Pure-tone audiometry showed bilateral conductive hearing impairment with air-bone gap at low frequencies from 125Hz to 500Hz. A head CT showed bone dehiscence above the bilateral superior semicircular canals and tegmen of the epitympani. Initial equilibrium testing did not reveal any abnormal findings. Initial sono-ocular testing of the right ear indicated upbeat nystagmus. However, after multiple outpatient visits, the upbeat nystagmus disappeared during the sono-ocular test and was replaced by paradoxical convergence. The eye tracking test also revealed paradoxical convergence, which became frequent and was accompanied by pupillary miosis. This paradoxical convergence was ultimately diagnosed as convergence spasms. No improvement of symptoms was achieved through non-surgical treatments over an extended period of time, therefore, canal plugging surgery was recommended. The surgery was performed through a middle fossa approach, and it completely eliminated the cochlear and vestibular symptoms associated with SCDS and the convergence spasms. Finally, we suspected that the convergence spasms were caused by ocular dysfunction as well as neurological factors related to the SCDS.