著者
八木 文雄 倉本 秋 大塚 智子 奥谷 文乃 三木 洋一郎 上原 良雄
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.141-152, 2005-06-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18

問題解決型学習への取り組み, 医療スタッフや患者さんとの円滑なコミュニケーションなどをはじめとして, 医学生に要求される態度・習慣領域の課題は多い. また一方では, 入学後における態度・習慣領域の教育には大きな限界があることは, 医学教育に携わる誰もが認識していると思われる. 高知大学医学部では, 入学前の成育歴において長期間を要して培われた, 態度・習慣領域の能力を入学者選抜時に評価することを主眼として, 平成15年度から一部の入学定員についてAO (態度評価) 方式を導入した. 現在, その入学者が1年次を修了した段階であるが, この方式による入学者選抜が良好な結果をもたらしていることが, 1年次履修全科目を対象とした入学後の追跡調査において検証された.
著者
八木 文雄 倉本 秋 瀬尾 宏美 大塚 智子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

成人型学習に対する取り組み,医療スタッフや患者さんとの円滑なコミュニケーションなどをはじめとして,医学部医学科に入学した学生に求められる態度・習慣領域の課題は数多く存在する。また一方では,入学後における態度・習慣領域の教育には大きな限界があることは,医学教育に携わる誰もが認識していると思われる。しかし,ほとんどの全国大学医学部・医科大学における現行の入学者選抜方式は,高校各教科の学習内容に関する記憶にもとづく知識(想起)偏重型であり,長期間にわたる家庭教育および自己の努力により獲得した,医師となるのに基本的に不可欠な態度・習慣領域の能力が,入学者選抜の段階でほとんど評価されていないのが現状である。このような観点から,本研究では,AO方式と学士編入学方式による入学者選抜において,態度・習慣領域の能力評価を目的とする評価尺度を新たに構築した。そして,これらの各方式で入学した学生を対象として、他の方式で入学した同学年の学生および教官によるピア・レヴューを実施し,入学後における態度・習慣領域の能力を,多変量解析にもとづき調査・分析することにより,この評価尺度の妥当性について追跡的に検討した。その結果,選抜段階と入学後における態度評価スコアとの間に有意な相関(r=0.7)が認められ,新たに構築した態度評価尺度の入学者選抜における有効性が検証された。なお,これらの入学者に関する追跡調査を,卒前6年間および卒後臨床研修段階まで長期的・継続的に実施することにより,この態度評価尺度の妥当性に関する調査・分析をさらに推進し,望ましい医師養成のための第一歩としての入学者選抜の更なる改善を図る予定である。医学科の入学者選抜における,このような態度・習慣領域評価の導入は,サイエンスとしての医学・医療の急激な発展に伴い,価値観の変動に直面している現代社会に対する説明責任を果たすものである。