著者
奥谷 文乃 藤田 博一 村田 和子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

うつ病の患者では食欲が低下し、体重が減少することが知られている。味覚・嗅覚機能の異常を来している可能性を検証するために本研究を実施した。同意の得られたうつ病患者さんに、嗅覚検査を実施したところ、ほぼ全例で嗅覚機能は正常であり、functional MRIにより中枢性の嗅覚情報処理機能を検索すべき症例が得られなかった。しかしながら、同様に抗うつ剤で治療を受けている「パニック障害」の患者さんでは嗅覚閾値が検知・認知いずれもきわめて低いことがわかった。以上より、「うつ病」に限らず、各種精神神経疾患における嗅覚機能の検索が診断・治療の重要な情報を提供する可能性が示唆された。
著者
奥谷 文乃
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.54-56, 2021 (Released:2021-04-26)
参考文献数
7
著者
奥谷 文乃
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1356-1360, 2021-12-18 (Released:2022-04-13)
参考文献数
12

嗅覚刺激療法(olfactory training)は,嗅覚障害の治療法として注目されている.対象は嗅神経性および中枢性で,嗅覚伝導路の末梢受容器から中枢のいずれかに原因があるものであり,匂い分子が嗅神経細胞に到達できない気導性嗅覚障害は除く.作用機構は非常に高い再生能をもつ嗅神経細胞を匂い刺激によって興奮させることで,嗅球のみならず,さらに上位においてシナプス可塑性を誘導すると考えられ,ニューロリハビリテーション治療の1つとみなすことができる.世界的にはすでに有用性が証明されており,わが国においても日本人向けの匂いを用いて,日本人向けの嗅覚検査であるT&T olfactometryで評価をする全国研究が進行中である.
著者
八木 文雄 倉本 秋 大塚 智子 奥谷 文乃 三木 洋一郎 上原 良雄
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.141-152, 2005-06-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18

問題解決型学習への取り組み, 医療スタッフや患者さんとの円滑なコミュニケーションなどをはじめとして, 医学生に要求される態度・習慣領域の課題は多い. また一方では, 入学後における態度・習慣領域の教育には大きな限界があることは, 医学教育に携わる誰もが認識していると思われる. 高知大学医学部では, 入学前の成育歴において長期間を要して培われた, 態度・習慣領域の能力を入学者選抜時に評価することを主眼として, 平成15年度から一部の入学定員についてAO (態度評価) 方式を導入した. 現在, その入学者が1年次を修了した段階であるが, この方式による入学者選抜が良好な結果をもたらしていることが, 1年次履修全科目を対象とした入学後の追跡調査において検証された.
著者
椛 秀人 奥谷 文乃 佐藤 隆幸
出版者
高知医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

われわれは、数年に渡って、雌マウスに形成される交尾相手の雄の匂いに対する記憶のメカニズムを研究してきた。この匂いの記憶は妊娠の維持に不可欠である。この記憶の形成過程は、副嗅球へ投射する青斑核ノルアドレナリン神経の交尾刺激による活性化によって駆動される。われわれは、この記憶の神経・シナプス・分子のレベルのメカニズムを明らかにしてきた。この一連の記憶システムは、この系だけにとどまらず、母子の絆形成にも当てはまる性質のものであるとの考えで、検討を加えた。嗅球へ薬物の注入が可能なようにステンレス管を前もって植え込んでおいた妊娠21日目の雌ラットに、薬物の連続注入を開始し、これらのラットが分娩後に行う母性行動を観察した。行動の観察は主に母性行動の基本型である子運び動作、子なめ動作、授乳姿勢を計測した。興奮性アミノ酸受容体アンタゴニストであるD-AP5を注入しても、上記の母性行動に有意な変化は認められなかった。本結果は、妊娠の維持に不可欠な匂いの記憶の成立にNMDA受容体が関与しないことと一致していた。さらに、non-NMDA受容体アンタゴニストのCNQXの知果を目下、検討中である。ウレタン麻酔下の雌ラットを用いて、嗅球内情報伝達に対する青斑核の電気刺激の影響を検討した。青斑核の刺激は、顆粒細胞による僧帽細胞のフィードバック抑制を感じた。目下、この効果にかかわるアドレナリン作動性受容体のタイプを検討中である。さらに、青斑核と外側嗅索の連合刺激によって、このフィードバック抑制に可塑的変化が誘導されるか検討を加える予定である。
著者
椛 秀人 奥谷 文乃 村本 和世 谷口 睦男
出版者
高知大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

雌マウスに形成される交配雄フェロモンの記憶のシナプス機構、鋤鼻ニューロンと副嗅球ニューロンの共培養によるニューロンの成熟分化、シナプス形成、及び幼若ラットの匂い学習機構を解析し、以下の結果を得た。1.フェロモン記憶の基礎過程としてのLTPの入力特異性と可逆性スライス標本を用いて、副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達に誘導される長期増強(LTP)に入力特異性と可逆性が認められた。2.僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達のalpha2受容体を介した抑制のメカニズムノルアドレナリンは僧帽細胞のG_<i/o>を活性化して電位依存性Ca^<2+>チャネルを抑制するほか、Ca^<2+>流入後の放出過程をも抑制することが判明した。3.alpha2受容体の活性化によるシナプス伝達のハイ・フィデリティの達成alpha2受容体の活性化は副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達のハイ・フィデリティを達成させた。これがLTP誘導促進の鍵となっているものと考えられる。4.副嗅球ニューロンとの共培養による鋤鼻ニューロンの成熟と機能的シナプスの形成副嗅球ニューロンとの共培養によって鋤鼻ニューロンが成熟分化し、3週間の共培養により両ニューロン間に機能的なシナプスが形成されることが判明した。5.幼若ラットにおける匂いの嫌悪学習とLTPとの相関匂いと電撃の対提示による匂いの嫌悪学習の成立には電撃による嗅球のbeta受容体の活性化が不可欠であった。スライス標本を用いて、嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達に誘導されるLTPもbeta受容体によって制御された。この知見は、このLTPが匂い学習の基礎過程であることを示唆している。