著者
松島 綱治 橋本 真一 倉知 慎 上羽 悟史 阿部 淳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

伝子発現解析の結果からケモカイン受容体CXCR3に着目したところ、CD8陽性T細胞の活性化直後のリンパ組織内局在をCXCR3が制御することで、その後の免疫記憶CD8陽性T細胞の形成に影響を及ぼしていることが明らかになった。また、メモリー細胞において、CTLに特徴的なサイトカインやケモカインなどの遺伝子群の顕著な発現量上昇、細胞老化と関連深いリボゾーム蛋白類の発現量低下とを認めた。さらに一次メモリーと比較して、二次メモリーCTLではNK細胞特異的遺伝子の発現量上昇が認められ、老化メモリーCTLの特徴となることを明らかにした。
著者
中島 淳 垣見 和宏 村川 知弘 深見 武史 倉知 慎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

【目的】治療困難・予後不良な肺癌再発例に対して自己活性化γδ-T 細胞(γδT)による免疫療法を試み、安全性および有効性について明らかにする。【対象と方法】原発性肺癌、非小細胞肺癌治療後再発例、本研究に同意された方。評価可能病変を有し、除外基準を持たないことを条件とした。【結果】腺癌8例・扁平上皮癌1例・大細胞癌1例計10例を対象とした。γδTは3-12回投与された(中央値6回)。全有害事象はGrade1のべ3回、Grade3のべ2回(細菌性肺炎・放射線肺炎)であった。いずれもγδT 治療と関連は無かった。投与後240-850日(中央値445日)観察され、最終観察時生存6、死亡4例であった。γδT投与中死亡は見られなかった。死因はいずれも肺癌再発増悪であった。RECICS 判定では5回投与後CR/PR/SD/PD=0/0/5/4であった。後観察期間では0/0/3/5判定不能2であった。CR+PR+SDの割合を病勢コントロール率とすると5回投与後では50%,後観察期間では30%であった。投与後末梢血中のVγ9-γδT 細胞数は次第に増加傾向にあった。FACT-BRM total score の経時的測定においてはGrade 3有害事象症例をのぞき、投与期間中はスコア値が安定ないし上昇し、治療期間中のQOLは良好に保たれた。【考察】非小細胞肺癌表面に過剰発現するMICA/B0を認識するNKG2DをγδTは発現しており、isopentenyl pyrophosphate をTCR/CD3のリガンドとして認識し、癌細胞に接触・破壊する。体内に多量の自己γδT を投与した場合の安全性ならびに有効性について明らかにしたが、さらに今後はこの細胞障害活性をより効果的に体内で発現させるための方策について検討を進めたい。