著者
白石 憲史郎 垣見 和宏
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

生体に備わる免疫応答を意図的に増幅し全身的な治療効果すなわちアブスコパル効果を惹起させることは腫瘍学上も大変斬新で魅力的であり、革新的な次世代の治療法に貢献し得る。近年癌治療の場面で最大の注目を集め続ける腫瘍免疫に着目しつつ、免疫チェックポイント阻害薬を用いて放射線照射を局所から全身治療へと発展させる新規治療戦略の開発を見据えた科学的根拠を分子細胞レベルで確立し臨床応用することが本研究の目的である。飛躍的に運用が拡がる免疫チェックポイント阻害剤だが、依然として以下の問題点が挙げられる。I. 標的病変の良好な反応性および生命予後延長が期待できる治療患者選別のためのバイオマーカーが未だ十分に確立していない II. 放射線治療併用における安全性有効性の検証が不十分 III.アブスコパル効果誘導に対するバイオマーカーが不明 IV. 腫瘍特異的遺伝子変異由来の新生抗原(ネオアンチゲン)が未解明これらのcriticalな問題点を解決するため、下記プロトコールの前向き臨床研究を検討した。I.放射線治療未施行例の原発巣または少数転移病巣:標的腫瘍に50Gy/5分割でSBRT II.放射線治療既施行例の照射野内再発病巣:サイズに応じて30-40Gy/5-8分割でSBRTprimary endpointは非標的病変に対する治療効果=アブスコパル効果の有無、secondary endpointは、IVR技術を用い治療前後に採取した標的・非標的病変腫瘍組織における特異的遺伝子変異の全エクソンシーケンスによる同定である。初年度は国内外で進むphase I/IIのoligometastasis症例に対する臨床試験等のバイオマーカー探索の詳細を徹底的に調査し、二年目は免疫治療で不可欠なPD-(L)1抗体等が投与される内科・泌尿器科・頭頸部腫瘍科・乳腺外科を含む横断的協力体制を構築し研究継続している。
著者
Cabral Horacio 垣見 和宏 内田 智士
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

We will first develop a series of T-cell targeted mRNA-loaded nanocarriers. These nanocarriers will be optimized for stability, targeting and protein production in vitro.Promising formulations will then be tested in vivo. to determine the targeting efficacy to the CD8 T cells, the production of CAR T cell in situ and the antitumor activity against models of leukemia and solid tumors. Finally, we will check the toxicity of the treatments.
著者
中島 淳 垣見 和宏 村川 知弘 深見 武史 倉知 慎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

【目的】治療困難・予後不良な肺癌再発例に対して自己活性化γδ-T 細胞(γδT)による免疫療法を試み、安全性および有効性について明らかにする。【対象と方法】原発性肺癌、非小細胞肺癌治療後再発例、本研究に同意された方。評価可能病変を有し、除外基準を持たないことを条件とした。【結果】腺癌8例・扁平上皮癌1例・大細胞癌1例計10例を対象とした。γδTは3-12回投与された(中央値6回)。全有害事象はGrade1のべ3回、Grade3のべ2回(細菌性肺炎・放射線肺炎)であった。いずれもγδT 治療と関連は無かった。投与後240-850日(中央値445日)観察され、最終観察時生存6、死亡4例であった。γδT投与中死亡は見られなかった。死因はいずれも肺癌再発増悪であった。RECICS 判定では5回投与後CR/PR/SD/PD=0/0/5/4であった。後観察期間では0/0/3/5判定不能2であった。CR+PR+SDの割合を病勢コントロール率とすると5回投与後では50%,後観察期間では30%であった。投与後末梢血中のVγ9-γδT 細胞数は次第に増加傾向にあった。FACT-BRM total score の経時的測定においてはGrade 3有害事象症例をのぞき、投与期間中はスコア値が安定ないし上昇し、治療期間中のQOLは良好に保たれた。【考察】非小細胞肺癌表面に過剰発現するMICA/B0を認識するNKG2DをγδTは発現しており、isopentenyl pyrophosphate をTCR/CD3のリガンドとして認識し、癌細胞に接触・破壊する。体内に多量の自己γδT を投与した場合の安全性ならびに有効性について明らかにしたが、さらに今後はこの細胞障害活性をより効果的に体内で発現させるための方策について検討を進めたい。
著者
垣見 和宏 森安 史典
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

肝がんに対するRFA治療を受けた患者に対して免疫細胞治療を実施するために、in vitroにおける樹状細胞(DC)培養条件の最適化を検討し、肝がん患者に対する臨床試験の開始を計画した。腫瘍特異的な免疫応答を誘導するためにDCには、1.RFA治療により熱変性した腫瘍細胞をuptakeする能力、2.免疫応答を誘導するために必要なCD80, CD86などの共刺激分子の発現、3.リンパ節へのホーミングに必要なケモカイン受容体CCR7の発現、が必要である。そこで我々は、1.immature DCをOK432で刺激して2-6時間後のDC(maturating DC)は、OK432刺激を除いても、それ以降mature DCへの成熟過程が進行し、16時間後にはCD80, CD86, CCR7などの分子を発現すること。2.肝癌細胞Huh7 cellをRFA治療と同様の加熱条件(85℃で10分間)で熱変性させた後、さまざまな成熟段階のDCとover nightで共培養すると、maturating DCは、熱変性した腫瘍細胞を効率よく取り込むこと。3.さらにmaturating DCは腫瘍の取り込みによって成熟過程を妨げられることなくmature DCへと変化することを明らかにした。これらの結果に基づいて、肝がんRFA治療後に腫瘍局所内へ投与するDCは、GM-CSFとIL-4によって誘導した末梢血単球由来のimmature DCを、OK432を用いて2時間刺激したmaturating DCの状態で用いることに決定した。東京医科大学病院において、肝がんの治療を受けた患者を対象に臨床試験を実施するためにプロトコールを作成した。倫理委員会での承認を受け臨床試験を開始し、肝がん患者の登録を開始した。