著者
儀同 政一
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.17-23, 2009 (Released:2010-12-21)
参考文献数
20

らい菌に対し強い殺菌作用を示すニューキノロン系抗菌薬(NQ)は、多剤耐性らい菌に対する治療薬として重要である。NQ などの化学療法薬はin vitro 活性がいくら強くとも血中半減期や組織移行性などの体内動態が劣るならば、強いin vivo 活性は期待できない。今回Buddemeyer 法とヌードマウス足蹠法を用いてニューキノロン系抗菌薬の構造式と抗らい菌活性の相関を検討した。実験結果からキノロン母核の1位にシクロプロピル基、3位にカルボキシル基、4位にオキシ基、5位にアミノ基または水素基、6位にフッ素基、7位に5員環または6員環の塩基性環状アミン、8位にフッ素基、塩素基またはメトキシ基に置換したNQ が、抗らい菌活性を最も強めることが示唆された。
著者
後藤 正道 石田 裕 儀同 政一 長尾 榮治 並里 まさ子 石井 則久 尾崎 元昭
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.157-177, 2000-11-30
参考文献数
34
被引用文献数
15 2

日本ハンセン病学会・医療問題委員会・治療指針と治癒判定基準に関する小委員会(指針委員会)では、学会としての標準的なハンセン病治療指針について検討を行い、以下の方針を決定した。すなわち、WHOの多剤併用療法(MDT)を基本とし、少菌型では6ヶ月間のWHO/MDT/PBで良いが、多菌型(MB)の治療を1年間で終了する1997年改訂の治療方針では、菌数の多い症例には不充分であると判断した。そこで、(A)MBで治療前に菌指数BI(3+)以上の場合、原則としてWHO/MDT/MBを2年間継続する。(A-1)2年間終了後、菌指数の低下が十分(BIが2段階以上低下)あるいはBI(3+)未満ならば、その後は抗炎症作用のあるDDSとB663の2剤で、菌検査が陰性で活動性病変が見られなくなるまで維持療法を行う。(A-2)2年間終了後、菌指数の低下が不充分(BIの低下が2未満)またはBI(2+)以上ならば、菌検査が陰性で活動性病変が見られなくなるまでWHO/MDT/MBを続ける。また、(B)MBで治療前にBI(3+)未満あるいは発症後極めて早期(6ヶ月以内)でBI(3+以上)の場合には、原則としてWHO/MDT/MBを1年間行う。(B-1)治療開始後1年以内に菌陰性化して活動的臨床所見がなければ、維持療法なしで経過観察とする。(B-2)菌陽性あるいは活動性臨床所見があれば、WHO/MDT/MBをあと1年間行うこととした。診断の概略、治療の目的と注意点、薬剤の特徴、障害の予防などについても要点を記載した。
著者
佐々木 紀典 川津 邦雄 堤 貞衛 儀同 政一 中川 弘子 柏原 嘉子 松木 玄二 遠藤 博子
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.227-235, 1998-01-30 (Released:2008-02-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

カービル療養所から5回にわたり取り寄せたアルマジロ全頭20匹を、われわれ研究チームで飼育し、感染ヌードマウスより採取したらい菌で感染実験を行った。感染は10 8-9即の大量菌を静脈内及び皮下に接種の15匹と対照として非接種の5匹に分けた。菌液接種後最短7.5か月、最長34か月の期間に死亡した9匹と屠殺6匹を剖検し、スタンプ標本と病理標本を作成し検索した。結果2匹のみが軽度の感染状況に止まったが、その他は生存期間の長短には関係なく、いずれも重度広汎な感染の進展が観察された。臓器では静脈内と皮下接種のいずれにおいても、肝、脾に顕著な菌の増殖と病巣の進展拡大が確認され、その他、肺、副腎、リンパ節、胃、骨髄、腎、鼻等に菌の分布と浸潤性病巣が見られた。皮膚病巣は接種局所は勿論のこと、遠隔部の皮膚にも病変が見られ、ことに足底部における浸潤性病巣が明らかであり、その部位における末梢神経の病変は大腿部坐骨神経よりも顕著であった。しかしヒトの場合と異なり、末梢神経内の病巣は軽度であり、アルマジロでは頭部の甲羅下の組織に広汎な病巣を観察したが、精巣には病巣が見られないが、胃、肺、腎には病巣がみられるなど、ヒトとはやや異なる様相を呈し、動物種の特異性が考えられるので、アルマジロらいとして理解した方が良いと考えられる。しかし、ハンセン病との間に極めて高い類似性が示された。特に末梢神経病変の機序の解明などには実験価値が高いと考えられる。なおこの研究は厚生省特別研究費を受けて行われた。
著者
儀同 政一 並里 まさ子 熊野 公子 後藤 正道 野上 玲子 尾崎 元昭
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.65-67, 2004-02-28
被引用文献数
5 1

日本ハンセン病学会は、2000年に「ハンセン病治療指針」<SUP>1)</SUP>発表し、化学療法をはじめ診断と治療、後遺症の予防と治療についてのガイドラインを、2002年には、治療指針に基づいて治療を受けた患者の「ハンセン病治癒判定基準」<SUP>2)</SUP>を示した。ハンセン病の治療は、治療指針またはWHO/MDT(1997)<SUP>3)</SUP>に基づいて治療されるが、すでにMDT3薬中2薬に対しては多くの耐性報告がある。その対応策としてニューキノロン系薬であるオフロキサシン(OFLX・商品名タリビット)が多用された結果、OFLX耐性も増加してきている。厚生労働省「新興・再興感染症研究事業ハンセン病感染の実態把握及びその予防(後遺症の予防を含む)・診断・治療法に関する研究」の一環として、ニューキノロンの使用基準に関する小委員会はOFLXの耐性症例を調査しOFLX耐性の発生を防止する方法を検討した。その結果を踏まえて、小委員会はここにニューキノロンの使用指針を提示する。