著者
原田 澄
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本らい学会雑誌 (ISSN:03863980)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.171-175, 1979

アロクローム-過沃度酸-メセナミン銀法は組織標本のための菌の検出およびその病理学のために良い方法である。<br>その方法は次の如し。脱パラ,10%過沃度酸24時間,メセナミン銀で反応させる60°Cで2時間,塩化金処理,ヌクレアル赤で核染,ピクロメチール青で対称染色抗酸菌,弾力線維,メラニン黒クロモフオビック菌も染色される。
著者
並里 まさ子 亀山 孝二 矢島 幹久 浅野 五朗
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本らい学会雑誌 (ISSN:03863980)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.220-229, 1995

長期寛解状態にあるらい患者を対象に,四肢伸側部真皮の厚さ(D)と,真皮内線維成分について対照群と比較検討した。画像解析によるコラーゲン線維(C),弾性線維(E)の計測では,真皮結合組織に占める両線維の割合を計測し,さらにDを乗じて両成分の体積を算出した。また下肢真皮における個々のEの長さも計測し,対照群と比較した。さらに前腕伸側の真皮上層部における弾性線維の増加傾向の有無を,病理組織学的に検討した。<br>以上より下記の結果を得た。<br>1 患者群では,上,下肢ともDと両線維の量が著明に低下している。<br>2 患者群では,上,下肢ともEよりもCの減少が著しい。<br>3 対照群では,Cに対するEの量比は上肢の方が下肢よりも高値であるが,患者群では,その逆である。<br>4 対照群下肢では,Dの減少とEのCに対する量比の増加は関連していたが,患者群下肢では,両者の関連がなく,かつEのCに対する量比は全体に高値であった。<br>5 患者群下肢ではより長いEの出現傾向が見られた。<br>6 上肢(前腕)真皮上層におけるEの増加傾向は,対照群では大部分に認められたが,患者群では大部分に認められなかった。<br>以上より,患者皮膚では真皮の菲薄化と線維成分の減少が著しいが,Eの相対的増加傾向があり,EはCより残存しやすいか,産生されやすいと推察された。さらにこのEの相対的増加傾向は,太陽光線照射量の異なる上,下肢についての差はなく,よってその関与は少ないものと考えられた。今回の結果は,らい患者皮膚で,著明なCの増加を特徴とする肥厚性瘢痕やケロイドが生じにくいことと関連すると考えられる。
著者
後藤 正道 石田 裕 儀同 政一 長尾 榮治 並里 まさ子 石井 則久 尾崎 元昭
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.157-177, 2000-11-30
参考文献数
34
被引用文献数
15 2

日本ハンセン病学会・医療問題委員会・治療指針と治癒判定基準に関する小委員会(指針委員会)では、学会としての標準的なハンセン病治療指針について検討を行い、以下の方針を決定した。すなわち、WHOの多剤併用療法(MDT)を基本とし、少菌型では6ヶ月間のWHO/MDT/PBで良いが、多菌型(MB)の治療を1年間で終了する1997年改訂の治療方針では、菌数の多い症例には不充分であると判断した。そこで、(A)MBで治療前に菌指数BI(3+)以上の場合、原則としてWHO/MDT/MBを2年間継続する。(A-1)2年間終了後、菌指数の低下が十分(BIが2段階以上低下)あるいはBI(3+)未満ならば、その後は抗炎症作用のあるDDSとB663の2剤で、菌検査が陰性で活動性病変が見られなくなるまで維持療法を行う。(A-2)2年間終了後、菌指数の低下が不充分(BIの低下が2未満)またはBI(2+)以上ならば、菌検査が陰性で活動性病変が見られなくなるまでWHO/MDT/MBを続ける。また、(B)MBで治療前にBI(3+)未満あるいは発症後極めて早期(6ヶ月以内)でBI(3+以上)の場合には、原則としてWHO/MDT/MBを1年間行う。(B-1)治療開始後1年以内に菌陰性化して活動的臨床所見がなければ、維持療法なしで経過観察とする。(B-2)菌陽性あるいは活動性臨床所見があれば、WHO/MDT/MBをあと1年間行うこととした。診断の概略、治療の目的と注意点、薬剤の特徴、障害の予防などについても要点を記載した。
著者
小原 安喜子
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.345-351, 1998-07-31
参考文献数
4
被引用文献数
1

ハンセン病(以下ハ病と略す)医療は既に指摘があったとおり大きく変動している。今、医療史の検証にたえる化学療法を形成することは、ハ病医療に携わる者への時代的課題といえよう。国の内外に蓄積されている基礎研究の成果、臨床経験を結集してこの課題を担い、国際化の進む日本でグローバルなハ病コントロール完了に向けて責任を果すことに努める学会であることを願う。<BR> ハイチ共和国中部は、最初からMDT-WHOにより治療が行なわれた。又、WHOが提案した教育入院を実施した数少ない地域の一つである。コントロール開始から15年になるこの地のハ病に関わって6年、ここで経験したことを化療を軸にふり返ると共に流行パターンについての考察を試みる。
著者
成田 稔 小野田 育代 時崎 掬子 茅野 タヅ子 高崎 敬子 坪倉 功子 須波 紀久美
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.277-285, 1998-07-31
被引用文献数
1 1

柄沢のボケの臨床的判定法を基本にして、老人たちと最もかかわりの深い看護婦や介護員らにとってわかりやすい5段階評価票を作成し、全生園と愛生園との65歳以上の老人を対象に痴呆の有病率を調査した。 その結果は、生理的なボケを含むと考えられる軽の軽を除くと、全生園の14.39%に対して愛生園は5.72%と極端な差を認めた。この理由を、両隣との交流に難のある全生園と、それが容易な愛生園との不自由者棟の造りの違いから考えてみた。また一般の老人に比較して、ハンセン病療養所では痴呆の有病率がかつては低かったにもかかわらず、最近では逆に高いか、あるいは高くなりつつあるのは、絶対隔離の時代に培われた孤独に耐える強い精神力が、40年、50年の長い年月を経て次第に弱まり、そこを支える子どもや孫が傍にいないことに関連づけてみたが、今後いっそうの検討が必要であろう。
著者
儀同 政一 並里 まさ子 熊野 公子 後藤 正道 野上 玲子 尾崎 元昭
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.65-67, 2004-02-28
被引用文献数
5 1

日本ハンセン病学会は、2000年に「ハンセン病治療指針」<SUP>1)</SUP>発表し、化学療法をはじめ診断と治療、後遺症の予防と治療についてのガイドラインを、2002年には、治療指針に基づいて治療を受けた患者の「ハンセン病治癒判定基準」<SUP>2)</SUP>を示した。ハンセン病の治療は、治療指針またはWHO/MDT(1997)<SUP>3)</SUP>に基づいて治療されるが、すでにMDT3薬中2薬に対しては多くの耐性報告がある。その対応策としてニューキノロン系薬であるオフロキサシン(OFLX・商品名タリビット)が多用された結果、OFLX耐性も増加してきている。厚生労働省「新興・再興感染症研究事業ハンセン病感染の実態把握及びその予防(後遺症の予防を含む)・診断・治療法に関する研究」の一環として、ニューキノロンの使用基準に関する小委員会はOFLXの耐性症例を調査しOFLX耐性の発生を防止する方法を検討した。その結果を踏まえて、小委員会はここにニューキノロンの使用指針を提示する。