著者
後藤 正道 石田 裕 儀同 政一 長尾 榮治 並里 まさ子 石井 則久 尾崎 元昭
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.157-177, 2000-11-30
参考文献数
34
被引用文献数
15 2

日本ハンセン病学会・医療問題委員会・治療指針と治癒判定基準に関する小委員会(指針委員会)では、学会としての標準的なハンセン病治療指針について検討を行い、以下の方針を決定した。すなわち、WHOの多剤併用療法(MDT)を基本とし、少菌型では6ヶ月間のWHO/MDT/PBで良いが、多菌型(MB)の治療を1年間で終了する1997年改訂の治療方針では、菌数の多い症例には不充分であると判断した。そこで、(A)MBで治療前に菌指数BI(3+)以上の場合、原則としてWHO/MDT/MBを2年間継続する。(A-1)2年間終了後、菌指数の低下が十分(BIが2段階以上低下)あるいはBI(3+)未満ならば、その後は抗炎症作用のあるDDSとB663の2剤で、菌検査が陰性で活動性病変が見られなくなるまで維持療法を行う。(A-2)2年間終了後、菌指数の低下が不充分(BIの低下が2未満)またはBI(2+)以上ならば、菌検査が陰性で活動性病変が見られなくなるまでWHO/MDT/MBを続ける。また、(B)MBで治療前にBI(3+)未満あるいは発症後極めて早期(6ヶ月以内)でBI(3+以上)の場合には、原則としてWHO/MDT/MBを1年間行う。(B-1)治療開始後1年以内に菌陰性化して活動的臨床所見がなければ、維持療法なしで経過観察とする。(B-2)菌陽性あるいは活動性臨床所見があれば、WHO/MDT/MBをあと1年間行うこととした。診断の概略、治療の目的と注意点、薬剤の特徴、障害の予防などについても要点を記載した。
著者
圓 純一郎 石井 則久 後藤 正道
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.5-10, 2011-02-01 (Released:2012-02-02)
参考文献数
15
被引用文献数
2 6

Buruli ulcer is a skin disease caused by Mycobacterium ulcerans (M. ulcerans). In this review, we introduce our recent studies and other important works. Lesions of Buruli ulcer are usually painless, despite the extensive tissue necrosis. We have reported that mice inoculated with M. ulcerans show nerve degeneration and absence of pain, but the mechanism evoking the nerve damage have not been clarified. In order to define whether mycolactone, a toxic lipid produced by M. ulcerans, can induce nerve damages, we have injected mycolactone A/B to BALB/c mouse footpads. Mycolactone induced footpad swelling, and sensory test showed hyperesthesia on day 7 and 14, recovery on day 21, and hypoesthesia on days 28 and 42. Histologically, nerve bundles showed hemorrhage, neutrophilic infiltration, and loss of Schwann cell nuclei on days 7 and 14. Semithin section studies revealed vacuolar change of Schwann cells started on day 14, which subsided by day 42, but myelinated fiber density remained low. This study suggests that mycolactone directly damages nerves and is responsible for the absence of pain characteristic of Buruli ulcer. In the human lesions, presence of neuritis is reported (Rondini S, 2006), and murine studies showed "autoamputation" (Addo P, 2005). In order to prevent the serious deformities evoked by Buruli ulcer, further studies are necessary.
著者
後藤 正道 圓 純一郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ブルーリ潰瘍は、抗酸菌M.ulcerans感染による痛みのない皮膚潰瘍であるが、病変に痛みがない原因は不明であった。M.ulceransが産生する毒性脂質mycolactoneをマウス足底に注射すると、局所に知覚過敏の後に知覚鈍麻がおき、末梢神経にシュワン細胞の膨化と壊死が起こった。また、培養シュワン細胞にmycolactoneを投与すると、シュワン細胞の壊死とアポトーシスが起こった。さらに、ヒトの治療前後の皮膚生検組織でも神経の変性所見を見出した。これらの研究結果から、ブルーリ潰瘍の無痛性はmycolactoneの細胞毒性に起因することが明らかになった。
著者
儀同 政一 並里 まさ子 熊野 公子 後藤 正道 野上 玲子 尾崎 元昭
出版者
Japanese Leprosy Association
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.65-67, 2004-02-28
被引用文献数
5 1

日本ハンセン病学会は、2000年に「ハンセン病治療指針」<SUP>1)</SUP>発表し、化学療法をはじめ診断と治療、後遺症の予防と治療についてのガイドラインを、2002年には、治療指針に基づいて治療を受けた患者の「ハンセン病治癒判定基準」<SUP>2)</SUP>を示した。ハンセン病の治療は、治療指針またはWHO/MDT(1997)<SUP>3)</SUP>に基づいて治療されるが、すでにMDT3薬中2薬に対しては多くの耐性報告がある。その対応策としてニューキノロン系薬であるオフロキサシン(OFLX・商品名タリビット)が多用された結果、OFLX耐性も増加してきている。厚生労働省「新興・再興感染症研究事業ハンセン病感染の実態把握及びその予防(後遺症の予防を含む)・診断・治療法に関する研究」の一環として、ニューキノロンの使用基準に関する小委員会はOFLXの耐性症例を調査しOFLX耐性の発生を防止する方法を検討した。その結果を踏まえて、小委員会はここにニューキノロンの使用指針を提示する。