著者
元木 邦俊
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学工学部研究報告 (ISSN:02865262)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.79-102, 2010-02-22

本稿は,音声の生成過程を考察する際に必要な声道モデルについて述べたものである.時間域表現と定常状態での音場分布に基づいて音響管の共鳴が生じる現象を説明した上で,従来から用いられている1次元音響管モデルの構成手順について述べる.また,近年盛んに行われている3次元声道モデルの数値解析の現況についても簡単に述べる.
著者
高野 佐代子 松崎 博季 元木 邦俊
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.41-49, 2020 (Released:2020-02-27)
参考文献数
15

母音発話における各種の舌筋の活動について数多くの検討がなされてきたが,舌の内部変形の特徴については観察が困難なために考慮が少なかった.本研究では変形を可視化するために開発された,黒い線を付加できるタギングシネMRI(tagged-cine MRI)のデータ(高野ら,2006)に基づいて,舌の内部変形の特徴を考慮したうえで舌モデルを構築し,有限要素法のシミュレーションにより特に横舌筋の効果について検討する.これまでの研究により,母音発話/ei/(日本語2モーラ)のタギングシネMRIにおいて,舌は前後および上下に4つの部位に分けて考えることで最も簡単に解釈できることが報告されている(高野ら,2006).すなわち,前部は前方移動と中央方向への圧縮,後部は前方移動と左右方向への膨張が見られ,特に前方上部(舌端部)は前後方向よりも上方向への移動が顕著であった.さらに,前方上部は後方下部(舌根部)よりも動き始めるのが早く,速度および移動距離が最も大きかった.これは舌の構造から考えると,横舌筋前部の関与が推測された(高野ら,2006).そこで本研究では,母音/i/における舌端部の運動について,舌を前後および上下に分割した立方体4要素の舌モデルを構築し,有限要素法によるシミュレーションを用いて前部横舌筋の作用について検討した.その結果,母音/i/では前部横舌筋の筋活動に相当する収縮力の発生により,舌端点は中央方向への圧縮を伴い,より早いタミングで動き出し,速度も速く,移動距離も大きくなるという傾向が確認された.
著者
松崎 博季 元木 邦俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.252, pp.7-12, 2005-08-18
被引用文献数
2

口腔と鼻腔が結合した日本語母音/a/発声のMRIデータから作成した鼻腔付き3次元声道形状モデルとこのモデルから鼻腔を取り去った鼻腔無しモデルの音響特性を有限要素法を用いて解析した.有限要素法のシミュレーション結果より伝達特性と複素音響インテンシティを計算した.実験結果より, 3kHz以下の周波数領域で鼻腔が結合することでピークや谷が生じることが示された.3kHzから5kHz間では両モデルの伝達特性はほぼ一致したが, 5kHz以上では異なっていた.第1, 2ピーク周波数において, 鼻腔付きモデルの複素音響インテンシティのベクトル分布は鼻腔無しモデルのものとは大きく異なる分布であった.鼻腔付きモデルの伝達特性に見られた近接した谷とピークの対の複素音響インテンシティのベクトル分布は僅かな周波数差にもかかわらず異なるものとなった.
著者
松崎 博季 元木 邦俊
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学工学部研究報告 (ISSN:02865262)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.171-181, 2006-02-20

口腔と鼻腔が結合した日本語母音/a/発声のMRIデータから作成した鼻腔付き3次元声道形状モデルとこのモデルから鼻腔を取り去った鼻腔無しモデルの音響特性を有限要素法を用いて解析した.有限要素法のシミュレーション結果より伝達特性と複素音響インテンシティを計算した.実験結果より,3kHz以下の周波数領域で鼻腔が結合することでピークや谷が生じることが示された.3kHzから5kHz間では両モデルの伝達特性はほぼ一致したが,5kHz以上では異なっていた.第1,2ピーク周波数において,鼻腔付きモデルの複素音響インテンシティのベクトル分布は鼻腔無しモデルのものとは大きく異なる分布であった.鼻腔付きモデルの伝達特性に見られた近接した谷とピークの対の複素音響インテンシティのベクトル分布は僅かな周波数差にもかかわらず異なるものとなった.
著者
松崎 博季 元木 邦俊
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第22回ファジィ システム シンポジウム
巻号頁・発行日
pp.6, 2006 (Released:2007-05-30)

口腔と鼻腔が結合した日本語母音/a/発声のMRIデータから作成した鼻腔付き3 次元声道形状モデルとこのモデルから鼻腔を取り去った鼻腔無しモデルの音響特 性を,声道壁および鼻腔壁を剛壁あるいは軟壁のどちらかを仮定してFEMを用い て伝達特性およびアクティブインテンシティを計算した。壁が剛壁の場合の鼻腔付きモデルの伝達特性のみに見られるピークは, 軟壁の場合には見られなくなった。鼻腔付きモデルと鼻腔無しモデルの伝達特性のピーク周波数の差は剛壁の 場合よりも軟壁の場合の方が大きかった。壁が軟かくなることで,第1および第3ピーク周波数は実音声のホルマント周波数に近づいたが,第2および第4ピーク周波数では差が大きくなった。また,軟壁の場合のアクティブインテンシティのベクトル分布は剛壁の場合とは異なるものとなった。