著者
川口 就子 黒川 嵩大 白尾 彰伍 高野 佐代子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響
巻号頁・発行日
vol.114, no.358, pp.11-12, 2014-12-05

ツンデレ音声をツンとデレの二つの側面に分け、音響物理パラメータと各聴覚印象の関係を明らかにする.実験1では、心理量「ツン度」および「デレ度」を目的変数とし、基本周波数の平均値および標準偏差、スペクトル重心の平均値および標準偏差、時間長の計5つを説明変数としてそれぞれ重回帰分析を行った.その結果を元に実験2ではスペクトル重心について掘り下げ、スペクトル重心の最小値、最大値、平均値、中央値、最頻値、標準偏差、範囲、および時間軸を説明変数とし重回帰分析を行った.その結果、ツンデレ音声はスペクトル重心の最頻値が高い標準化係数を示した.本研究より、ツンデレ音声に対して新たな工学的指針を示すことが出来る.
著者
高野 佐代子 松崎 博季 元木 邦俊
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.41-49, 2020 (Released:2020-02-27)
参考文献数
15

母音発話における各種の舌筋の活動について数多くの検討がなされてきたが,舌の内部変形の特徴については観察が困難なために考慮が少なかった.本研究では変形を可視化するために開発された,黒い線を付加できるタギングシネMRI(tagged-cine MRI)のデータ(高野ら,2006)に基づいて,舌の内部変形の特徴を考慮したうえで舌モデルを構築し,有限要素法のシミュレーションにより特に横舌筋の効果について検討する.これまでの研究により,母音発話/ei/(日本語2モーラ)のタギングシネMRIにおいて,舌は前後および上下に4つの部位に分けて考えることで最も簡単に解釈できることが報告されている(高野ら,2006).すなわち,前部は前方移動と中央方向への圧縮,後部は前方移動と左右方向への膨張が見られ,特に前方上部(舌端部)は前後方向よりも上方向への移動が顕著であった.さらに,前方上部は後方下部(舌根部)よりも動き始めるのが早く,速度および移動距離が最も大きかった.これは舌の構造から考えると,横舌筋前部の関与が推測された(高野ら,2006).そこで本研究では,母音/i/における舌端部の運動について,舌を前後および上下に分割した立方体4要素の舌モデルを構築し,有限要素法によるシミュレーションを用いて前部横舌筋の作用について検討した.その結果,母音/i/では前部横舌筋の筋活動に相当する収縮力の発生により,舌端点は中央方向への圧縮を伴い,より早いタミングで動き出し,速度も速く,移動距離も大きくなるという傾向が確認された.
著者
高野 佐代子 本多 清志
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.174-178, 2005-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
11
被引用文献数
5 4

磁気共鳴画像法 (MRI) は体内の3次元可視化に優れており, 発話器官の機能解析の研究にも使用されている.しかし音源の生成にかかわる喉頭はサイズが小さいため, 十分な画像分解能やS/N比が得られない.また呼吸運動に伴い動きによるアーチファクトが生じやすいという問題がある.これらの問題を解決するために, 小型アンテナを用いた高感度喉頭用コイルを試作し, アーチファクトを防ぐために発声同期撮像法を考案した.以上の喉頭撮像法を用いて, 男性被験者1名が普通の声 (120Hz) と高い声 (180Hz) で母音/i/を繰り返し発声したときの喉頭画像を記録した.得られた画像精度は喉頭軟骨の計測に十分であり, この画像より輪状甲状関節の運動を計測した.本実験の被験者では, 両者の声の高さにおいて輪状甲状関節には約5度の回転と約1mmの滑走が認められた.
著者
高野 佐代子
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

歌声や発話に関わる声の高さの調節には声帯の長さと張力が深く関わっており、声を高くする際には甲状軟骨の声帯付着部と輪状軟骨の声帯付着部が互いに離れる方向へ運動が生じている。この変化は輪状甲状関節の運動によることが知られているが、この関節運動が回転運動のみなのか、滑走運動も行っているのかについては一致した見解が得られていなかった。また上下方向の滑走運動により声の高さに影響を与えるという理論モデルもあるが、実際の計測結果の報告はない。これまでに輪状甲状関節の運動を詳細に調べるために、MRIを用いて十分な解像度を得られるように撮像装置の改良や撮像方法の開発を行ってきた。本年度は特に3次元パターンマッチングプログラムを作成し、得られたMRIデータから半自動的に正確な位置を推定した。その結果、甲状軟骨はhighでは上方への移動に加え、前方への移動が見られ、また左右方向への移動回転も確認された。輪状軟骨はhighで上昇し、後方への回転に加え、後方への移動も見られた。輪状甲状関節の上下の滑走は0.5mm以下と小さく、前後方向の滑走に比べると影響は小さいと考えられる。前後方向の滑走には左右差が見られ、最大約1.2mmの運動が確認された。以上の結果から、関節の滑走が起こらないとする従来の報告と異なり、中音域における輪状甲状関節の運動は、輪状軟骨の回転と滑走からなると考えられた。これらの結果をMaveba2005において発表した。今後は被験者の数および発声の範囲を増やして関節運動を計測し、、雑誌論文に投稿する予定である。