著者
児島 清秀 元木 悟
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アスパラガスではジベレリンの特にジベレリン1(GA1)の方が休眠打破の役割を持っているようである。ABAが休眠誘導の作用をしている根拠は本実験では得られなかったが、GA1を除いてもABA、ジャスモン酸(JA)、ジャスモン酸メチル(MeJA)、トランスゼアチン(Z)の4種類もの植物ホルモンが萌芽において最も高い濃度で存在していた。これは養分の転流や細胞分裂促進、頂芽優勢など、萌芽の急成長のために必要な機能を発現させるためだと考えられる。また、植物の変化が激しい部位で多種多量の植物ホルモンが作用しているとも言える。IAA、ABA、Z、ジベレリン4(GA4)がこれに該当するだろうと推察できた。
著者
児島 清秀 山田 彬雄 山本 雅史
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.335-339, 1994
被引用文献数
7 5

本実験ではバレンシアオレンジ果実の生長速度が高い秋期の果実を部分 (果芯, 種子, 果肉, アルベド,フラベド) に分けてアブシジン酸 (ABA) とインドール-3-酢酸 (IAA) を分析した. ABAとIAAは, 内部標準として<SUP>3</SUP>H-ABAと [<SUP>13</SUP>C<SUB>6</SUB>] IAAを使用し, ガスクロマトグラフィー電子捕獲型検出器と質量分析器(選択的イオンモニタリング) で測定した. 果肉と種子の重さは急激に増加したが, アルベドとフラベドの重さはゆるやかに増加した. 150DAB (開花盛期後の日数) に, 種子のABA濃度は大きなピーク (21nmol•g<SUP>-1</SUP>生重量) を示したが, 果肉は小さなピーク (5nmol•g<SUP>-1</SUP>生重量) であった. 種子中のIAA濃度は150DABまで減少したが, 他の分析した部分よりも高い濃度であった. 果芯部のIAA濃度は119DABにピークを示し, 果肉•アルベド•フラベドよりも高い濃度を保った. アルベド, フラベドは同程度の低いIAA濃度であった. 得られた部位別の植物ホルモン量より, 種子中のABAと同化物集積性や果芯部のIAAと維管束との関係, 果肉と果皮間のABAの非移動性, 部分別の植物ホルモン分析の必要性が示唆された.
著者
児島 清秀
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.193-195, 1993-12-31

果実は収穫後も成熟過程を継続し,貯蔵物質の加水分解や硬さ・色素・香りなどの変化が起こり,これらの現象を総称して追熟とよんでいる。果実追熟中の軟化は,果実の収穫後の保存期間を決める要因であるため,果樹園芸上重要な意義があり,メカニズムの解明が期待されている。さらに,果実の硬さは,果実の品質の重要な因子でもあるので古くから様々の方法で測定されてきたが,多くの測定法の原理は,一定の深さにプランジャーを押し込むのに要する力で測定する方法であり,物理的モデルに基づく客観的で統一された方法ではない。一方,硬さを粘弾性として解析するレオロジー的測定法として応力緩和法があり,1970年に山本らによって植物に適用された。この測定法は,植物の組織の力学的構造のモデルである粘弾性モデルに基づいた計算式でシュミレーションしてパラメーターを得る。従って,得られたパラメーターは,押し込み法のような単なる硬さの示標ではなく,植物組織の力学的構造の変化を示唆する。しかし,この応力緩和法は植物の繊維組織の両端をクランプではさんで引っ張って測定するため,柔らかい果実を測定するのは困難であった。また,硬さに関係すると考えられる果実の成分の追熟中の化学的変化としては,細胞壁成分のペクチン多糖類が分解して低分子化することがトマト,メロン,イチゴ等多くの果実で報告されており,他の細胞壁成分のヘミセルロースとセルロースに関しても少しは報告されており,これら細胞壁成分の分解が果実軟化の主な原因であると考えられてきた。しかし,果実の貯蔵物質としてデンプンを多く含むような果実のバナナでは,追熟開始後数日でデンプンがほぼ完全に糖化し,ほぼ時期を同じくして果実が軟化するので,デンプンも果実軟化に関係すると示唆されてきた。しかし,デンプンが多いバナナ果肉の細胞壁の分析は困難で信頼できる報告はない。本研究では,この軟化について物理的測定と同時に化学的測定を行い,デンプンを多く含むような果実の追熟中の軟化のしくみを解明した。一番目に応力緩和法を利用して果実の硬さの測定法を開発した。ここでは,すでに追熟中の軟化に関係する成分や酵素の変動が詳しく調べられ,硬さの測定だけで化学的変化との関連が調べられるトマトを材料にした。二番目に追熟中のバナナ果実の硬さの測定と同時にデンプンと細胞壁成分の変化を分析し,バナナ果実追熟中の軟化のしくみを検討し,下記のような研究成果が得られた。植物の細胞壁の物理的性質を測定するために使用されていた応力緩和法を初めて果実軟化の測定に応用し,簡便な硬度測定法を開発した。装置は,培養細胞に力を与えるために開発されたひずみ計(Vitrodyne Liveco社製)に,プローブとしてみがいた釘(直径2.1mm)を7mmの長さに切断し,センサーに接続しているアームに固定した。材料としてトマトを用い,果実の熟度の進行に伴う,極めて狭い範囲の組織の軟化を定量的に表した。方法は厚さ7-8mmの切片を水平なステージにのせ,プローブを一定速度で降下させた。ひずみ計の応力が約5gに達したときを0秒として,降下を止めて組織の応力の減少(緩和)を5秒間隔で60秒まで計測した。得られた応力緩和のデータを山本らの応力緩和の式にパーソナルコンピューターを使用し最小二乗法でシュミレートして3個の応力緩和パラメター,最小緩和時間(T0)・緩和速度(R)・最大緩和時間(Tm)を得た。なおこの方法で得られたパラメーター変化は従来知られていたトマト果実のポリガラクツロナーゼ活性の変化と一致し,物理的測定法と生化学的変化が一致することを見出した。このことは本測定法が軟化度の測定に有効であることを示している。さらに,このひずみ計を使用した果実軟化測定法を改良した。応力緩和法は,一定の荷重をかけてその後の応力の減少を測定するものであるが,軟化の程度が大きいと変位,すなわちプローブの貫入が大きくなる。応力緩和法では変位が一定である方がより正確なパラメーターが得られる。従ってプローブのつきさす深さを一定に保つことができるレオメーター(山電製)を用い, 円錐型プローブを接続した。追熟中の全ての段階で応力緩和を測定できる最適な条件を検討するため,追熟開始前(緑色)と開始後(黄色)のバナナ[Musa(AAA group, Cavendish subgroup)'Giant Cavendish']を用い,果肉の横断切片上の子室の中央部を測定点とした。プローブをつきさす深さは0.2,0.4,0.6mm,つきさす速度は0.05,0.1,0.5,1.0mm/秒を設定した。これらの設定条件で円錐型プローブをつきさし応力緩和データを得て, 3つの応力緩和パラメーターを計算した。これらのパラメーターはつきさす深さと速度で変化し,緑色のバナナではつきさす速度を増していくとT0,Tmともに低下する傾向が,また速度が0.5mm/秒以上でほぼ安定したパラメーターが得られた。