著者
具 承桓 加藤 寛之
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.4-18, 2013-06-20 (Released:2013-11-07)
参考文献数
49
被引用文献数
2

1990年代後半〜2000年代前半に生じた日韓造船産業の競争力逆転の背景のメカニズムを明らかにする.長期の時間軸を設定し競合するプレイヤー間の相互作用を焦点とした分析を行った結果,長期停滞の後に造船市場が成長市場へと再突入を果たした際に,成長機会を捉えた韓国大手は必ずしも戦略的な行動の結果現在の地位を築いたわけではないこと,日本の旧大手企業ではまさにその時期に多角化の成功が成長の桎梏になっていたことを指摘する.
著者
具 承桓
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.360-379, 2017-12-28 (Released:2019-08-30)
参考文献数
19

This paper discusses the issues related to the trend and market development in EV. How do we understand this EV boom? We will concentrate on the following issues: (1) Why did China's industrial policy shift from a gasoline vehicle to EV? (2) What factors cause that change? (3) Why did Japan lag behind China in EV?China, which has a large population and a growing middle class, is likely to become a leading player in the future. But, the Chinese government faces many problems.The problems are serious air pollution problem, import natural energy, industrial competitiveness, and sustainable economic growth, and so on. To solve the problems, The Chinese government is implementing industry policy focused on EV, especially battery EV. On the other hand, the characteristics of Japanese automobile market have the late installation of EV charging infrastructure, a long-time consumption, and relatively small market, and so on. These are the reasons why Japan (or Japanese maker) is slower than China (or Chinese maker) in the early stage of EV diffusion.In conclusion, this stage is not EV boom but the take-off of EV in the innovation diffusion process. Given the uniqueness of the Chinese market, we should observe the market with the focus on sales rather than the supply rate. Also, we should pay more attention to the role of government as a resource allocation coordinator in the transition period of an industrial ecosystem.
著者
具 承桓 藤本 隆宏
出版者
日本経済国際共同センター
巻号頁・発行日
2000-06

本研究の目的は、自動車部品産業を中心に情報技術の導入、特に3次元CADなどのデジタル技術の導入が製品開発プロセス、特に設計、試作、コミュニケーションなどにどのような影響を与えるのか、部品(製品)のタイプによってどのような違いがあるのか、等々を分析し、サプライヤーにとって、より効率的な製品開発を進めるために要求されるマネジメント能力は何かについて考察することにある。本研究で扱うデータは、1999年3月に、日本自動車部品工業会に登録されている1次自動車部品メーカーに対してアンケート調査を行い、回答を得た153社からのものである。それと並行してインタビュー調査も行った。まず、日本の自動車部品産業への3次元CADシステムの導入傾向を見ると、85-90年に36.91%、91-95年に58.37%、そして96-99年に85.91%と導入率が増加していた。このような傾向は、カー・メーカーの導入時期より5年くらいのタイムラグをおいて導入された。つまり、カー・メーカーの導入以降、90年代に入ってからサプライヤーの本格的な導入があったと言える。また、部品別に見ると構造的に部品間の干渉問題が多い車体部品などを中心に先に導入された。3次元CADの導入が製品開発にどのようなインパクトを与えるのかについては、3次元CADの利用、システム間の互換性、オンライン率と開発活動(コミュニケーションの頻度、試作レビューの回数)、リードタイムとの間の関係を分析してみた。その結果は以下の通りである。(1)サプライヤーの製品開発への3次元CADの利用は、カー・メーカーのシステムの互換性とオンライン化の増加と連動している。(2)3次元CADの利用の増加は必ずしもコミュニケーションの頻度の減少をもたらさない、むしろ増加させる傾向が見られる。(3)製品開発における3次元CADは設計試作や量産試作の減少、リードタイムの短縮に影響を与える。しかし、その効果は製品(部品)によって異なる。例えば、最近の変化を見ると、電装部品は開発への3次元CADの利用、オンライン率と互換性の増加によって、試作レビューがより確実になり、開発期間の短縮につながる、という効果が車体部品の場合よりも顕著だと考えられる。それは車体部品より、相対的に機能的・構造的な調整が容易であるという電装品の製品特性ゆえに、CADの利用は試作の回数の削減、ひいては開発期間の短縮に繋がっていると考えられる。一方、3次元CADの使用と関連して自動車部品メーカーが直面している問題は、3次元CAD自体の技術的な問題とマネジメント上の問題がある。まず技術的な問題としては、(1)ハードウェアや通信回線の負荷が大きすぎること、(2)ユーザーインターフェースや細かな機能に改善の余地が多くあること、(3)2次元図面に慣れた技術者がソリッドモデラーを扱うには障壁があることなどが挙げられる。マネジメント上の問題は(1)取引先(カー・メーカー)によって異なるシステムの採用による参入障壁、(2)エンジニアに対する体系的な教育の不足による技術的な不具合い、(3)エンジニアの無駄な作業の増加に対する管理が挙げられる。要するに、製品開発への3次元CADの利用はデザイン試作や量産試作の回数を減らし、開発リードタイムを短縮などの様々なインパクトを与えるが、部品の特性によってその効果は異なり、異なるマネジメントが必要とされるだろう。また、自動車部品産業では3次元CADの導入によって組織間のコミュニケーションの頻度を必ずしも減少させるとは限らない。むしろ、日本の開発パターンの特徴である、対面的なコミュニケーションは依然として重要である。部品と車全体とをマッチさせるという問題を本当に解決するには、製品開発プロセスと技術の統合的な管理が必要なのである。