著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1337-1341, 2008-12

わが国の食農教育の一教材としての熱帯アメリカ農牧情報の活用。「食文化(それの基礎)」、「飽食」および「崩食」の現状を考える。また、筆者の中学時代の話を出して恐縮するが、担任の先生の言葉を思い出したので簡単に記してみたい。その先生は担当が理科であったが、非常に厳しい方であった。理科の授業か道徳であったか定かではないが、その先生の奥様も同じ理科の先生であったという。その奥様は、冬場に買い物でトマトを買ってきたという。それを見た担任は、「なぜ、冬場にトマトを買ってくるんだ!」とその奥様を叱責したという。その理由はこうである。「トマトは夏場に食べるものであって、冬場はもちろん温室栽培だから、別ないい方をすると、石油を食っているのと同じだ!」というのがその先生の言い分だったのである。つまり、「トマトは夏場に食べるからこそ、トマトとしての価値がある」というのである。当初は、すごく理屈っぽい先生だという印象があったが、「食農教育」の中で、必要な言葉(名言)だと思うようになってきたのである。
著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1239-1247, 2012-12

前報でも記した事項であるが,ラテンアメリカの大地の大半は広大な草原地帯であり,一般的に野草類による粗放な放牧が実践されている。この粗放放牧における一番の問題点は,過剰放牧によって牧草地の疲弊が進行し,やがて牧畜経営が不可能となってしまう。そうなると,天然林の伐採・焼却を含めて,新規牧草地を求めていく。このことが環境破壊を生み,新規開墾地も地力を失ってしまい,さらに新たな新天地を求めるという悪循環が繰り返される。これを食い止めることが,持続可能な生産システムの一つであり,既存の牧草地の肥沃度の維持・向上に努めることが肝要である。前報では,イネ科牧草ブラキアリア(Brachiaria humidicola)における6回にわたった各処理区別の乾物収量ならびに養分吸収量結果を一気に報告した。処理区においては,窒素肥料源として化学窒素の他,牛糞堆肥,牛糞堆肥+化学窒素の他,マメ科野草類も共存させ,このことがブラキアリアやマメ科野草の生産性や再生力を評価することが本試験の目的である。
著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.1137-1143, 2010-11

中米・力リブ諸国におけるマメ科牧草アラキスの活用事例。コスタリカにおけるアラキス+ブラキアリア間混作の効果および乳牛圃場でのアラキス確立について。コスタリカは、パナマのサバンナ地帯、コロンビアのジャノス東方平原およびブラジルのセラード地帯のように、広大な草原地帯を有しているのとは違って、中央山脈の高地において主にアラキスの研究が実践されている。前記した広大な平原地帯では肉牛の肉生産性を高めることが主目的であるが、ここコスタリカでは乳生産が主目的である。いずれにしても、タンパク生産が重要な課題であることは共通事項である。アラキスの有効性は理解できても、肝心な事項は牧草地においてこれを確立させることであろう。このことは、牧畜に関する技術協力に従事する者にとっても必須事項であり、多くの経験者の声を聞くこと、そして理解することが重要であると筆者は考えている。もちろん、良いことばかりではなく、そこには、他のイネ科植物や雑草類の侵入によるアラキスの妨害も存在するということで、無視できない要因である。本稿では、その一事例と同時にアラキス確立に関する有益な方法を紹介する。
著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.369-379, 2009-03

ブラジル、サンパウロ州グァタパラ日系移住地での研究実例。グァタパラセンターにおける化学分析室の設置背景および概況。今まで、2003年度における基礎研究業務の他、グァタパラセンター(以下、センターと記す)において、土壌分析室の設置に関する仕事にも取り組んできた(8月下旬に帰国し、新たなビザが発給されるまでの自宅待機期間にもJATAK(全拓連)とのコミュニケーションは密にしていた。この話は、2003年3月赴任から2004年12月までと一気にいく。
著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1033-1042, 2010-10

中米力リブ諸国におけるマメ科牧草アラキスの活用事例。コスタリカにおける乳用子牛の成育にとってのタンパク銀行としてのアラキスおよび文献調査からの野外科学的方法の一考察。コスタリカでは、乳用牛の子牛肥育にかかるコストは牧畜経営支出の25%にも相当し、とくに、配合飼料のコストはバカにならず、全餌代の約66%にも達するという。これら配合飼料のほとんどが輸入一次産品であることから、外部からの投入資材に依存せざるを得ないということであり、実際の牧畜生産システムにおいては一つの限界要因となっているのである。そのため、生産者水準において、餌代を極カ抑えることが要求されるのは当然である。そこで、アラキスのような適用可能かつ高品質牧草類が、熱帯環境下の牧畜生産にとっては有益であるとして考慮されている。また、イネ科牧草類とこのマメ科牧草類の間混作は、牧畜生産にとって良好な挙動が認められ、肉ならびに乳生産にとっても適当な水準にまで増大させていることは明白である。
著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1045-1052, 2009-10

中米・カリブ諸国におけるマメ科牧草アラキス(Arachis pintoi)の活用事例。パナマのGualaca地区における2つの休閑期間でのイネ科牧草ディジタリア(Digitaria swazilandensis)とアラキスとの間混作。本稿から、しばらくパナマの事例を取り上げたいと思うが、その対象地域はCHIRIQUI県にあるパナマ農牧研究所(IDIAP)のGualaca畜産試験場での事例研究を紹介する。図1にGualaca地区の所在地を簡単に示しておく。首都パナマ・シティーから400km離れた場所にあり、CHIRIQUI県の県庁であるDavid市は、首都についで第二の都会である(カリブ海側のCOLON県の県庁であるColon市が第二の都市とも言われているが、治安の関係上、危険地帯となっているため、筆者を含め、多くのJICA関係者が訪問を禁じられている。それゆえ、ここは考えないことにする)。