著者
分藤 大翼
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、アフリカ狩猟採集社会における文化変容を、仮面儀礼や音楽舞踊の実践といった人々の社会的相互行為の実態に即して解明することである。また調査地域の現状を記録し、後年、文化変容の比較研究がおこなえるようにビデオによる撮影を行い、民族誌映画(記録映画)を作成することも目的としている。本年度は、カメルーン共和国において仮面儀礼や音楽舞踊、集落の人口動態や歴史に関する聞き取り調査をおこない、あわせて撮影もおこなった。また、映像による記録とその活用について知見を深めるため、ニューヨーク(USA)で開催された世界屈指の民族誌映画祭(Margaret Mead Film and Video Festival)に参加し、情報の収集と関係者との情報交換をおこなった。また、報告者の制作した民族誌映画を国内外の上映会、映画祭で上映し、専門家、一般の観衆とともに討議を重ねた。本年度の成果としては、「カメルーン東部州、バカ・ピグミー社会における音楽の実践と継承」という題目で、ポスト狩猟採集社会の文化変容の一面を仮面儀礼や音楽舞踊の実践の分析から明らかにした論文を発表した。また、バカ・ピグミー社会において最も重要視されている「ジェンギ」という精霊儀礼と音楽舞踊に関する民族誌映画『Jengi』を制作し、日本アフリカ学会、日本文化人類学会の学術大会において上映し討議した。同作品は、2008年3月に沖縄大学で開催された日本映像民俗学の会でも上映され、5月にはドイツのゲッティンゲンで開催される国際民族誌映画祭でも上映されることになっている。また、その後ヨーロッパ諸国で上映される予定である。
著者
川田 順造 鈴木 裕之 鶴田 格 分藤 大翼 塚田 健一
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

世界でもアフリカ地域はとくに、「音文化」が豊かに発達し、継承されてきた地域だ。西洋近代で作られた「音楽」に当たる概念はあまりに狭いので、口頭伝承、器音、身体表現をともなう歌や囃子なども含めた「音の文化」を、私たちの班では研究対象としてきた。近年日本へも盛んにミュージシャンが来演している「グリオ」系の声のパフォーミング・アーツはじめ、アフリカ起源のアメリカ黒人が生んだ、ジャズ、レゲエ、ラップにいたるまで、20世紀の世界の音楽は、アフリカの音文化を抜きにして語ることができない。アフリカでもすでに、いくつもの音文化がユネスコの世界無形文化遺産として登録されているが、大陸全体での音文化の豊かさから見れば不十分であり、ユネスコなどの国際機関を通じて世界に知らせるべき無形文化遺産(日本の公式用語では無形文化財)はまだ多い。私たちの研究班では、アフリカのさまざまな地域ですでに長い調査体験をもつ研究者の、現地調査に基づく第一次資料によって、今期3年度間には、無形文財を支えている地域社会との関係を明らかにする研究を行った。無形文化財は、有形のものと異なり、それを担い、未来に向かって継承してゆく地域社会との結びつきが極めて重要であり、地域社会なしには、無形文化遺産はあり得ないと言ってもいい。今期私たちの班では、西部アフリカ(ブルキナファソ、ギニア)、中部アフリカ(カメルーン)、東部アフリカ(エチオピア、タンザニア)と、かなり偏りなく取りあげられた地域社会について、それぞれが継承してきた音文化との関わり、継承の未来について研究した。その研究成果は、研究代表者川田が多年専門家として活動してきたユネスコにも報告しており、活用されることが期待される。