著者
利部 伸三 東 明子 西村 勁一郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.267-271, 2002-08-20
被引用文献数
4

チアクロプリドの非環状類縁体およびシアノグアニジン関連化合物を合成し, それらのワモンゴギブリに対する殺虫活性を化合物単独, あるいは代謝阻害剤を併用して注射法により測定した.単独の場合には, チアクロプリドと2種のシアノグアニジン誘導体が最も高い活性を示し, イミダクロプリドの20分の1程度であった.チアクロプリドを含む含硫黄化合物の活性は, 代謝阻害剤の併用により100倍位にまで増大した.他方, シアノグアニジン誘導体の場合には, 代謝阻害剤による増大効果ははるかに小さかった.ワモンゴキブリの摘出神経に対しては, ほとんどの供試化合物は最初興奮を誘起した後, 遮断効果をもたらした.チアクロプリドとその非環状類縁体の遮断活性は, イミダクロプリドのものに匹敵していた.全体としては遮断活性が高いほど, 代謝阻害剤併用条件下での殺虫活性が高くなる傾向が見られた.
著者
利部 伸三
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.606-610, 2000-06-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
3

イミダクロプリドは1991年に上市されて以来現在76国に登録され, 1998年には6億USドルと世界最大の売り上げを記録した殺虫剤である。一方カルプロパミドは1998年に上市された稲いもち病防除剤である。筆者は企業の研究所において7年間農薬創製研究に携わる機会を得て, 表題の2薬剤を最初に合成する幸運に恵まれた。本稿は大学で合成有機化学を学んだ一人が企業で未経験の分野に足を踏み入れ, 商品化合物の発見に至った道のりを回想したものである。両薬剤に関する詳細な構造活性相関, 作用機構や応用に関しては総説を参照していただきたい。なお筆者がすべての賞に含まれているわけではないが, イミダクロプリドの発明・研究に対しては, 日本農薬学会賞 (技術), 同 (研究), 全国発明特別賞, 大河内賞, アメリカ化学会賞等, カルプロパミドに対しては日本農薬学会賞 (技術) 等が与えられている。
著者
利部 伸三 酒向 美紗 岩屋 和子 桐山 和久
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.393-398, 2001-11-20

新規の1-アリールメチル-2-アリールイミダゾリジンを2種の方法, 即ち, 2-アリールイミダゾリジンの1-位の窒素原子へのハロゲン化アリールメチルの塩基存在のもとでの求電子置換反応あるいはN-アリールメチルエチレンジアミンとベンズイミデートとのイミダゾリジン環化反応によって合成した.生成物の構造はNMR, MSやIRスペクトルなどで確認した.MSスペクトルでは2-置換イミダゾリジン構造に特徴的な解裂パタンが見られた.殺ダニ活性はアリールメチルに関してはパラ位のクロロ, t-ブチル, フェニル置換体, 2-アリールに関してはオルト位のジフルオロ体に見られ, その中で, 1-(p-クロロベンジル)-2-フェニルイミダゾリジンと1-ベンジル-2-(2, 6-ジフルオロフェニル)イミダゾリジンに50ppmで強い活性が見られた.1位の(クロル置換)ピリジルメチルや2位のピリジン誘導体は弱い活性しか示さなかった.
著者
山本 出 藪田 五郎 冨澤 元博 斉藤 隆行 宮本 徹 利部 伸三
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.33-40, 1995-02-20
被引用文献数
14

[^3H]α-ブンガロトキシン, [^3H]ニコチンをプローブとしニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の認識部位へのニコチノイド, ネオニコチノイド, 関連化合物の結合性をみた結果, 昆虫nAChRでは3-ピリジルメチルアミノ部分をもつこと, 脊椎動物nAChRではイオン化度の高いことが必要であった.[^3H]フェンサイクリジンを用いTorpedoのnAChRのイオンチャンネル開口への効果をみた結果, アゴニスト作用を呈するのに3-ピリジルメチルアミノ部分があるほうがよいが, イオン化度の高いことが必要であった.ニコチノイドのアミノ窒素原子とネオニコチノイドの構造上対応する窒素原子の^<15>N NMRを測定したところ, 後者は前者に比べはるかに低磁場にあり, 窒素原子上の非共有電子対が電子吸引性基により非局在化, すなわち部分正荷電を帯びていることを示し, これが昆虫のnAChRとの相互作用には十分だが, 脊椎動物のそれとは不十分であるといえる.これによってニコチンは温血動物への毒性が高く, 殺虫活性が限られているのに対し, イミダクロプリドはその反対の特性を示すことが説明できる.