著者
田中 薫 大沢 貫寿 本田 博 山本 出
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.75-82, 1981-02-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
20
被引用文献数
38 53

エレクチンはアズキゾウムシの雄の交尾器を突出させて交尾を誘導するフェロモンであり, 単独では活性のない二つの区分の共力作用によるものである. 一つの区分は数種の炭化水素, 具体的には3-メチルペンタコサン, 11-メチルヘプタコサン, 3-メチルヘプタコサン, 11-メチルノナコサン, 13-メチルノナコサン, 11,15-ジメチルノナコサン, 9,13-ジメチルヘントリアコンタンおよび11,15-ジメチルトリトリアコンタンからなり, いま一つの区分は一種のジカルボン酸, (E)-3,7-ジメチル-2-オクテン-1,8-二酸からなる. この交尾フェロモンは雌からも雄からも得られるが, 雄にしか活性を呈しない.
著者
冨澤 元博 大塚 博子 宮本 徹 山本 出
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.49-56, 1995-02-20
被引用文献数
6

シビレエイ電気器官のニコチン性アセチルコリンレセプターイオンチャンネル複合体へのイミダクロプリド関連化合物を含む各種リガンドの効果について, アセチルコリン(ACh)認識部位のプローブである[^3H]α-ブンガロトキシンおよびイオンチャンネル内のアロステリック部位のプローブである[^3H]フェンサイクリジンを用いたラジオレセプターアッセイにより検討した.ニコチン, アナバシン, カルバコールおよびシチシンはアゴニストであり, DMPP, コニイン, ネライストキシン, d-ツボクラリンはACh認識部位とアロステリック部位の双方に作用し, フェンサイクリジン, TCP, クロルプロマジン, メカミラミン, ロベリンおよびトリメタファンはアロステリック部位に作用する非拮抗的遮断薬であることを認めた.イミダクロプリド, 6-クロル-PMNIおよびアセトアミプリドは弱いアゴニスト作用を示したが, NMTHT, ニテンピラムなどには弱いアゴニスト作用とともにイオンチャンネル内に存在するアロステリック部位への弱い作用が認められた.
著者
富沢 元博 山本 出
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.91-98, 1993-02-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
18
被引用文献数
81 123

ツマグロヨコバイへの殺虫力, ミツバチ頭部のニコチン性アセチルコリンレセプター画分のα-ブンガロトキシン結合部位への結合親和性に関して, イミダクロプリドと19種の類縁化合物の化学構造活性相関をニコチノイドと比較した結果, これら二つのグループは結合部位, 必須化学構造部分 (3-ピリジルメチルアミノ) を同じくし, 化学構造活性相関も類似していることを認めた. ニコチノイドではアミノ窒素原子の塩基性が高く生体内でのイオン化度が高いのに対し, イミダクロプリド関連化合物ではこの窒素原子に部分正荷電を与える隣接電子吸引性基を有する特徴を示す.
著者
富澤 元博 山本 出
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.231-236, 1992-11-20
被引用文献数
8

イエバエおよびミツバチ頭部のニコチン性アセチルコリンレセプター(nAChR)画分のα-ブンガロトキシン(α-BGTX)結合部位への薬物の結合を, ラジオレセプターアッセイにより検討した.塩基性の高いニコチン, ノルニコチン, アナバシン, ジヒドロニコチリンでは親和性が強く, 塩基性の低いミオスミン, ニコチリン, コチニンでは弱かった.ピリジルメチルアミン類の3位異性体で塩基性の高いものの親和性が強かった.ニコチンの光学異性体では, d体よりl体のほうが強かった.以上の結果はこれらニコチノイドの殺虫活性と対応していた.アセチルコリンエステラーゼの強力な阻害剤であるオキサジアゾロン化合物のnAChRへの親和性は認められなかった.ニコチンと同じ構造部分をもつイミダクロプリドは強い親和性を示し, α-BGTXやニコチンと同一部位に相互作用することが示された.
著者
山本 出 藪田 五郎 冨澤 元博 斉藤 隆行 宮本 徹 利部 伸三
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.33-40, 1995-02-20
被引用文献数
14

[^3H]α-ブンガロトキシン, [^3H]ニコチンをプローブとしニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の認識部位へのニコチノイド, ネオニコチノイド, 関連化合物の結合性をみた結果, 昆虫nAChRでは3-ピリジルメチルアミノ部分をもつこと, 脊椎動物nAChRではイオン化度の高いことが必要であった.[^3H]フェンサイクリジンを用いTorpedoのnAChRのイオンチャンネル開口への効果をみた結果, アゴニスト作用を呈するのに3-ピリジルメチルアミノ部分があるほうがよいが, イオン化度の高いことが必要であった.ニコチノイドのアミノ窒素原子とネオニコチノイドの構造上対応する窒素原子の^<15>N NMRを測定したところ, 後者は前者に比べはるかに低磁場にあり, 窒素原子上の非共有電子対が電子吸引性基により非局在化, すなわち部分正荷電を帯びていることを示し, これが昆虫のnAChRとの相互作用には十分だが, 脊椎動物のそれとは不十分であるといえる.これによってニコチンは温血動物への毒性が高く, 殺虫活性が限られているのに対し, イミダクロプリドはその反対の特性を示すことが説明できる.