著者
加来 浩平 田嶼 尚子 河盛 隆造
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 = Journal of the Japan Diabetes Society (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.325-331, 2006-05-30
被引用文献数
7

日本人2型糖尿病における日常のメトホルミン治療の有用性を検討するため,全国74施設で2002年にメトホルミンを新たに投与開始した1,197症例を対象に観察研究(Melbin Observational Research study: MORE study)を行い,その有効性および有害事象の発現状況について解析した.その結果,開始時,3, 6, 12カ月後のグリコヘモグロビン(HbA<sub>1C</sub>)の平均値は8.2, 7.3, 7.3, 7.3%, 空腹時血糖は168.9, 146.6, 150.4, 145.2 mg/d<i>l</i>と,いずれも開始時に対して有意に低下した.体重は有意に減少し,脂質代謝の異常変動は認められなかった.メトホルミン単剤投与症例においても同様の結果が得られた.メトホルミンの1日用量を500 mgから750 mgまで増量した40例において,増量後のHbA<sub>1C</sub>に有意な改善が認められた.副作用発現症例率は118/1,175例(10.0%)であり,乳酸アシドーシスの発現は認めなかった.メトホルミンは日本人2型糖尿病治療において有用であり,血糖コントロールの十分な改善が得られていない症例に対しては,増量によってより良い血糖コントロールが得られる可能性が示唆された.
著者
加来 浩
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.39-48, 2003-10

ボヘミア・モラヴイア地方(現チェコ共和国)では,中世以来チェコ人とドイツ人が共存していたが,ハブスブルク家がボヘミア王権を掌握して以来, ドイツ人が支配民族としてチェコ人の上に君臨してきた。1867年のアウスグライヒ以後のオーストリアの民族政策はリベラルだったが, ドイツ人・チェコ人双方のナショナリストを満足させることはできず, ドイツ人とチェコ人の激しい言語戦争はオーストリアの議会政治を麻痔させた。第一次世界大戦の結果,ハブスブルク多民族帝国は解体し,チェコ人は独立を達成した。しかし新生チェコスロヴァキア国家に300万人以上のドイツ人が,その意志に反して編入されたことは,大きな問題を生んだ。
著者
加来 浩
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.19-26, 2004-10

第一次世界大戦後にハブスブルク帝国から独立したチェコスロヴァキアでは,全人口の約1/4,300万人以上のドイツ人(いわゆるズデーテン・ドイツ人)がそれまでの支配民族の地位から転落して最大の少数民族集団となった。チェコスロヴァキアは連合国と結んだ条約に基づき, ドイツ人を初めとする少数民族の権利の保護規定を憲法に盛り込んだが,憲法と同時に制定された言語法ではチェコ語(チェコスロヴァキア語)のみを「国家語」(公用語)と認定するなどチェコ語に非常に有利なものであり,少数民族の立場から見ると,むしろハブスブルク帝国時代より「後退」でさえあった。このことはズデーテン・ドイツ人の大きな不満の種となった。
著者
阿武 孝敏 柱本 満 田邊 昭仁 中嶋 久美子 岡内 省三 亀井 信二 松木 道裕 宗 友厚 加来 浩平
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.292-297, 2013 (Released:2013-06-07)
参考文献数
15

2009年に上市されたDipeptidyl peptidase-4(DPP-4)阻害薬は,2型糖尿病薬物療法の選択肢の一つとして,その使用が急速に拡大している.一方,DPP-4はリンパ球やマクロファージ上に発現しているCD26と同一分子であるため,DPP-4阻害薬が免疫系に影響する可能性が以前より指摘されていた.今回我々はシタグリプチン投与が原因と疑われる薬剤熱の症例を経験した.発熱と同期して初期の炎症マーカー(IL-1β,IL-6,TNF-α)とCRPの上昇を認め,シタグリプチン投与が,マクロファージを介して初期の炎症性サイトカイン産生を亢進させ,薬剤熱を発症した可能性が示唆された.