著者
西尾 孝之 北野 雅昭 酒井 護 高倉 晃人 加田平 賢史 西谷 隆司
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.229-244, 2015-04-15 (Released:2015-04-28)
参考文献数
40
被引用文献数
1

東北地方大震災で発生したがれきの広域処理を行うにあたり,大阪市域の放射性セシウムのバックグラウンド調査を行うとともに,市内のごみ焼却工場における焼却灰,下水汚泥焼却灰,浄水発生土の放射能に関して,これらの廃棄物回収系による集積・除去機能について検討した。大阪市で観測された降下ばいじん中放射性セシウム濃度から,市域に降下した放射性セシウムは約4.3GBqと推定されたのに対して,2011年に下水汚泥やごみとして回収された放射性セシウムは年間約0.9GBqにのぼると推定された。大阪市域の降下ばいじん中放射性セシウムは2012年6月以降検出限界値未満となり,原発事故2年目以降の追加的な放射性セシウムによる汚染は非常に少なくなったと考えられたが,2013年のごみ焼却飛灰中放射性セシウムは,2011年3月15日を基準日として減衰補正すると2011年の4割程度の濃度レベルであると計算された。剪定枝などの環境ごみ以外に,放射性セシウムを含有するものが市域外から移入されていると考えられた。
著者
山崎 秀夫 香村 一夫 森脇 洋 加田平 賢史 廣瀬 孝太郎 井上 淳
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原発事故で放出され首都圏に沈着した放射性セシウムは東京湾に流入、蓄積していた。東京湾堆積物中の放射性セシウムの分布を解析し、首都圏における放射性セシウム汚染の動態を解明した。本研究では、東京湾の堆積物と水の放射性セシウム濃度の時空間分布を2011年8月から2016年7月までモニタリング調査した。東京湾に流入した放射性セシウムの大部分は首都圏北東部の高濃度汚染地帯が起源であり、そこから流出して東京湾奥部の旧江戸川河口域に沈積していた。現状では,放射性セシウムは東京湾中央部まではほとんど拡散していない。東京湾奥部河口域における放射性セシウムのインベントリーは事故以来、増加し続けている。
著者
岸 映里 油谷 藍子 尾崎 麻子 新矢 将尚 加田平 賢史 大嶋 智子 清水 充
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.111-116, 2013-04-25 (Released:2013-05-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」に基づき,ホウレンソウのウラン(U)含有量を定量した.はじめに,マイクロ波分解装置を用いる有効性を検討し,マニュアル法と同等の定量値が得られることを示した.短時間で試験溶液が調製できることから,緊急時に対応するためには非常に有効であると考えられた.また,ICP-MS測定の際に2種類の内標準元素(TlまたはBi)が示されているが,低濃度のUを定量する場合は,よりUに近い感度変化を示すTlを用いるほうが望ましいと考えられた.ただし,試料によっては微量のTlやBiを含有するものがあるため,あらかじめ試験溶液中のそれらの量を確認する必要があることがわかった.平成23年4~5月に購入したホウレンソウ9検体のU含有量を定量したところ,いずれも10μg/kg以下であった.
著者
加田平 賢史
出版者
(社)大阪生活衛生協会
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.193-203, 2010-07-30 (Released:2010-08-10)
参考文献数
44

Pollutants are emitted into the atmosphere by human activity and are later deposited partly in the hydrosphere such as in ponds and lakes. Sediments in the hydrosphere retain the environmental pollutants over a long time. Using this property of sediments, many studies have revealed the historical changes in environmental pollution by sampling columnar sediment cores from the hydrosphere and estimating the deposition age of the core materials.The sources of lead can be determined using lead isotope ratios, which vary depending on the source mine. The measurement of lead isotope ratios in sediment cores is therefore very useful for identification of the historical source of environmental lead pollution.Lead in sediments is however derived from both anthropogenic sources and natural input and the lead isotope ratios of the sediment therefore consist of values averaged from the two sources. The present review describes a useful method of extracting anthropogenic lead from sediment and estimating its isotope ratios. This method can be used to estimate the isotope ratios of anthropogenic lead at the time of deposition in the environment of the sampling site. It also enables comparison of the isotope ratios of anthropogenic lead in one sediment with those in other sediments.