著者
井上 淳子 上田 泰
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.18-28, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
42

本研究はアイドルを応援する(推す)ファンがアイドルに対して心理的所有感を持つことを主張し,その影響について論じるものである。具体的には,アイドルに対するファンの心理的所有感は,同じアイドルの他のファン(同担)に対する複雑な意識を生み出し,さらにその意識が当人のウェルビーイングと推し活動を継続させる原動力となることを理論的かつ実証的に明らかにする。550人のアイドルファンから収集したデータを分析した結果,アイドルに対する心理的所有感は心理的一体感と心理的責任感から構成され,心理的一体感が同担仲間意識に,心理的責任感が同担競争意識に影響を及ぼすことが実証された。また,ファンのウェルビーイングは2つの同担意識からともに正の影響を受ける一方で,現在のアイドルを推し続けたいという推し活継続性は,心理的一体感と同担仲間意識から正の影響を受けるものの,同担競争意識から負の影響を受けることが明らかになった。
著者
山崎 秀夫 香村 一夫 森脇 洋 加田平 賢史 廣瀬 孝太郎 井上 淳
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原発事故で放出され首都圏に沈着した放射性セシウムは東京湾に流入、蓄積していた。東京湾堆積物中の放射性セシウムの分布を解析し、首都圏における放射性セシウム汚染の動態を解明した。本研究では、東京湾の堆積物と水の放射性セシウム濃度の時空間分布を2011年8月から2016年7月までモニタリング調査した。東京湾に流入した放射性セシウムの大部分は首都圏北東部の高濃度汚染地帯が起源であり、そこから流出して東京湾奥部の旧江戸川河口域に沈積していた。現状では,放射性セシウムは東京湾中央部まではほとんど拡散していない。東京湾奥部河口域における放射性セシウムのインベントリーは事故以来、増加し続けている。
著者
村上 晶子 井上 淳 吉川 周作 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.11-18, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
42
被引用文献数
5 5

大阪城外堀堆積物に含まれる微粒炭・球状炭化粒子 (SCPs) の分析と球状炭化粒子の表面構造の観察を行った. 微粒炭分析からは, 粗粒の微粒炭濃集層準を見出し, この層準が1945年大阪大空襲の火災であることを指摘した. 球状炭化粒子分析では, 球状炭化粒子の時系列変化の解読から, 化石燃料 (石炭・石油) 使用量の歴史的変化が解明できることを示した. 球状炭化粒子は堆積物中に極めて良好に保存され, 短時間・簡単に分析できる利点を持っていた. この球状炭化粒子は過去の化石燃料の燃焼を解読する上で重要な役割を果たすと考えられる. 今後, 球状炭化粒子に関する研究は, 産業革命以降を示す「Anthropocene (Crutzen, 2002)」の時代の地質学的研究を行う上で重要な指標となることを指摘した.
著者
井上 淳子
出版者
早稲田大学
雑誌
産業経営 (ISSN:02864428)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.73-88, 2003-12-15

新製品開発は企業にとって存続と成長を左右する重要な活動である。どの企業もその成功のために多大な資源を投じているが,現実には多くの新製品が失敗に終わっている。新製品開発に不可欠な情報分析ツールは確実に進化しているものの,開発プロセスにおける意思決定の精度には問題が残されている。本稿では,新製品開発の成功要因と認識されてきた開発関係者のコミットメントについて,その弊害的側面に着目することにより,新製品の成功を阻む非合理的な意思決定の原因を探った。コミットメントのエスカレーションは,過去の意思決定や選択が思い通りの成果をあげていない場合に引き起こされ,意思決定者を誤った行動に固執させてしまう。プロジェクトの成功見込みについて危険信号が出されているにもかかわらず,その警告を無視したり歪めて解釈したりしてプロジェクトを続行すれば,最終的に新製品の失敗と莫大な損失をもたらしかねない。新製品開発には多大な努力と費用がかかり,特に費用は開発段階が進むほど増大する。開発プロセスのレビュー・ポイントにおける決定が新製品の成否に大きく関わるため、その意思決定に弊害をもたらすコミットメント・エスカレーションを回避することは重要な課題である。そこで本稿では,マーケティング領域においてほとんど適用されてこなかったコミットメントのエスカレーション理論を用いて,新製品開発プロセスにおけるエスカレーションの影響要因を導出し,その回避策を考察した。
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their 137Cs, 241Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of 137Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (137Cs and 241Am) and charcoal in high concentrations.
著者
井上 淳詞 原田 和樹 原 浩一郎 木下 芳一 加藤 範久
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成22年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.57, 2010 (Released:2010-08-27)

【目的】ごぼうは、一般野菜の中でも特に食物繊維とポリフェノールを豊富に含む野菜である。我々は、このごぼうに注目し、焙煎することで、さらに抗酸化能を高めた「ごぼう茶」を開発した。ごぼう茶の腸内環境への影響を、動物実験により調べ、さらに健康な成人45名による摂取試験の結果についても併せて報告する。 【方法】国内産ごぼうを、蒸気加熱(ブランチング)後にカットし、乾燥した。さらに130~180℃で焙煎を行った。これを2.75%の濃度で熱水抽出したものを供試サンプルとし、高脂肪食を与えたSD系ラットに水の代わりに与え、腸内細菌叢と糞中の二次胆汁酸、IgA、ムチンについて調べた。また、健康な成人45名に、同じ条件で抽出したごぼう茶抽出液(500ml/日)を2週間摂取し、1週間のwash-out期間後に、ごぼう茶粉末(20g/日)を2週間摂取してもらい、便通と血液成分、血圧について調べた。 【結果】動物実験では、高脂肪食のみを与えた群で、糞中の二次胆汁酸が増加したが、ごぼう茶摂取群は、有意に二次胆汁酸が減少し、また腸管免疫の指標となるIgAおよびムチンが増加した。ヒトに対しては、排便回数に差異は認められなかったものの、最高血圧が約10mmHg減少した。さらにごぼう茶粉末を摂取することで白血球数と肌水分の増加が認められた。以上の結果から, ごぼうを焙煎することで、美味な機能性飲料としての利用が可能であり、さらにごぼう茶中にはリグニン等の不溶性食物繊維も含まれることから、粉末化による加工食品の素材としても可能性を得た。
著者
井上 淳子 冨田 健司
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.55-67, 2002-02-22 (Released:2012-11-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年,医療機関を取り巻く環境は確実に厳しさを増している。各医療機関とも生き残りを賭けた熾烈な競争を強いられ,大きな変革を迫られている。ビジネスの世界において他社と協調的な関係を結ぶ傾向は,病診連携,病病連携,医療と福祉の連携など医療業界においてもみられるようになった。機能分化や医療資源の効率的活用が叫ばれる今日,医療機関どうしの連携はますます重要性を増している。本稿では,亀田総合病院の地域医療ネットワーク事業を事例にとり,成功要因の分析を行った。同院の成功は,情報共有を通じた地域医療機関との戦略的提携,顧客である地域医療機関との良好な関係性構築,徹底した患者(顧客)志向によって説明できる。同院は「企業」戦略ではなく,ネットワーク組織全体がもっ人的資源や,物的資源,情報の利用により,組織全体の利益・便益が向上することを目的とした「組織」戦略をとっている点が特徴的である。
著者
井上 淳 吉川 周作
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.289-296, 2005-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
23
被引用文献数
4 4

琵琶湖西岸に分布する黒色土から採取した黒色植物片について各種分析を行い,微粒炭(高温被熱によって生成した微細な炭)であるかを検討した.その結果,黒色植物片は被熱生成した炭と同様に,反射顕微鏡下で白く輝く特徴,高い反射率,低いH/C比(水素・炭素比)が認められ,黒色植物片は植物の被熱によって生成された微粒炭であると考えられた.また,反射率やH/C比を基に推定された炭化温度から,微粒炭は林野火災や火入れなどの植物燃焼によって生成したと考えられた.土壌中の微粒炭は,AT火山ガラスの多産層位より上位から含まれ,K-Ah火山ガラスの多産層位付近で最も多く含まれていた.こうした微粒炭量の傾向は琵琶湖湖底堆積物でも認められ,琵琶湖湖底堆積物に含まれる微粒炭の発生源の1つとして,琵琶湖周辺の黒色土分布域が考えられる.
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15
参考文献数
20
被引用文献数
1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their ^<137>Cs, ^<241>Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of ^<137>Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (^<137>Cs and ^<241>Am) and charcoal in high concentrations.
著者
井上 泰輔 井出 達也 内田 義人 小川 浩司 井上 貴子 末次 淳 池上 正 瀬戸山 博子 井上 淳 柿崎 暁 榎本 大 立木 佐知子 遠藤 美月 永田 賢治 是永 匡紹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.649-652, 2023-12-01 (Released:2023-12-11)
参考文献数
5

This study was conducted in 2021, wherein we investigated in-hospital measures for patients positive for hepatitis virus in 288 hospitals specializing in liver diseases in 13 Japanese prefectures. Our results showed that even at specialty hospitals, the overall countermeasure implementation rate was low (56%). The rate was higher in hospitals that had a higher bed capacity (>400), more full-time hepatologists, and more hepatitis medical care coordinators. Of these three factors, implementation rate was most influenced by coordinator enrollment, with highest involvement by clinical laboratory technologists. Therefore, clinical laboratory technologists should be trained to improve countermeasure rates for both treatment of liver disease and safety management in hospitals. Furthermore, the improvement in the implementation rate of measures for patients positive for hepatitis virus will help in providing better treatment.
著者
磯田 広史 榎本 大 高橋 宏和 大野 高嗣 井上 泰輔 池上 正 井出 達也 德本 良雄 小川 浩司 瀬戸山 博子 内田 義人 橋本 まさみ 廣田 健一 柿崎 暁 立木 佐知子 井上 貴子 遠藤 美月 島上 哲朗 荒生 祥尚 井上 淳 末次 淳 永田 賢治 是永 匡紹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.510-513, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
5

Hepatitis medical care coordinators (HMCCs) in Japan are trained by local governments and regional core centers, and are expected to play an active role in various aspects of hepatitis countermeasures. A 2019 survey revealed varied activity statuses of HMCCs among facilities. This study surveyed the present status of HMCCs in 21 of the 72 regional core centers in the fiscal year 2021.A total of 951 HMCCs were trained at these 21 facilities. The 17 participating centers of the 2019 survey indicated a slight increase in the proportion of HMCCs who actively contributed to hepatitis patient care, from 84.2% to 85.8%.Despite the COVID-19 pandemic, HMCCs remained active in many facilities.
著者
井上 淳子 赤松 直樹 斉藤 嘉一 寺本 高 清水 聰
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.41, 2019-06-30 (Released:2019-08-18)

慶應義塾大学 本稿では,2000年以降のマーケティング・サイエンスと消費者行動研究のトレンドを把握すべく,Marketing ScienceとJournal of Consumer Researchに掲載された論文のアブストラクトをテキスト分析し,両分野に重なるトピックと各分野に特定的なトピックを導き出した。 またJournal of Marketing Researchに掲載された論文の引用傾向を検討し,同誌がマーケティング・サイエンスと消費者行動研究の議論に共通の場を提供する重要な鍵である可能性を指摘した。最後に,両分野の知見が有機的に結びつくことで今後の発展が期待される研究テーマを示し,関連する既存研究をレビューした。(マーケティング・サイエンス,消費者行動,研究動向,知覚,認知,社会的ダイナミクス)
著者
有賀 敦紀 井上 淳子
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_1-1_12, 2013 (Released:2018-08-31)
参考文献数
30

人間は希少なものに魅力を感じる(希少性効果)。本研究では、ものの価値規定における希少性効果の存在を確認するとともに、その効果が生起する要因を実験によって解明した。その結果、希少性効果は対象の相対的な数の少なさではなく、特徴に基づく対象の減少的変化によって生起することが明らかになった。つまり、希少性効果を活用して商品価値を増大させるためには、商品が他の消費者によって購買され、その数(入手可能性)が減少していく様子を可視化することが有効であると示唆される。
著者
井上 淳生
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2018, pp.41-71, 2018-06-30

男女が対になって踊る社交ダンスは、日本に紹介されて以来、踊り手と音楽演奏家によって行われてきた。そこで行われる身体運用や音楽が「社交ダンス専用」として標準化されていく過程で、踊り手と演奏家の関係は変質していく。以前に比べ、踊り手は、音楽に身体を対応させる契機としてカウント(拍節)を重視するようになり、演奏家は社交ダンス音楽として規定されるところの、一定のリズム・パターンの反復性、テンポの不変性を重視した演奏を志向するようになるのである。このように、かつてよりも厳格な基準に規定された身体運用と音楽の対応関係が整備されていく過程は、舞踊と音楽の不可分性が人為的に作られる過程であったと言える。 では、このことを踏まえたうえで、現在の日本の社交ダンスに見られる踊り手と演奏家の次のような関係をどのように理解すればよいのだろうか。なぜ踊り手は演奏家に不満をもらすのか。なぜ演奏家は踊り手に合わせて演奏することにためらいを抱くのか。社交ダンスにおいて身体運用と音楽の関係が緊密になることは、踊り手と演奏家の関係をも緊密にすることにはつながらないのだろうか。踊り手、演奏家の双方にとって、彼(彼女)ら自身が依拠する身体運用あるいは音楽とは何なのだろうか。本稿では、舞踊と音楽の不可分性の観点からこれらの問いを検討する。検討を通して、舞踊と音楽の双方を視野に入れた研究(舞踊=音楽研究)に対して、ジャンルを相対化する視点の意義を提示する。
著者
井上 淳
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.28, pp.708-720, 2018-01-01 (Released:2019-07-26)
参考文献数
65

本論文は,既にEU研究に適用されながらもその問題点が指摘されてきた歴史的制度主義をEU(European Union)研究に活用することができるようにするために,歴史的制度主義アプローチの操作,修正を試みるものである. それまで停滞していたEU統合が1980年代半ばの域内市場統合計画によって息を吹き返すと,EUに対する理論的アプローチが発展した.歴史的制度主義はそのうちのひとつであり,EU諸機関が時間の経過とともに加盟国政府に影響を与えて,加盟国政府にさらなる制度化を選択させると主張してきた.しかしながら歴史的制度主義は,政府の国益や選好に関わる前提を競合理論であるリベラル政府間主義と共有したため,議論の上で大きな制約を抱えることになった.本論文はその制約を明らかにしたうえで,EU研究に適合するように歴史的制度主義を操作,修正する. 新たに操作を加えた歴史的制度主義は,加盟国による制度的選択が自国では解決することができない課題の「欧州的(集合的)解決」であること,それゆえに当該制度選択がゆくゆくは加盟国を拘束することを明らかにする.このような理解は,EU研究における歴史的制度主義に向けられてきた学術的批判にこたえてその問題点を克服するとともに,たとえばユーロ危機の顛末のように一度統合が停滞した後に再統合が進む理由やメカニズムを明らかにする可能性がある.
著者
井上 淳
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.444-456, 2020-01-01 (Released:2020-09-12)
参考文献数
41

ギリシャに端を発する財政,債務危機で一部では崩壊まで懸念されたユーロだったが,現在は「真の経済通貨同盟へ」の標語のもと,それまで取り組まれてこなかった財政同盟や銀行同盟に向けた取り組みすら進んでいる.EUを分析する理論研究は,それぞれがそうした動向に対する説明能力をもつことを示すために,様々な論考を展開している.本論文は,そのうち,EU理論研究の一大学派を形成しておりEU統合を説明する「ベースライン」だと自らを位置づけているリベラル政府間主義(Liberal Intergovernmentalism)を取り上げ,その説明力を検証する. リベラル政府間主義は,危機後の取り組みがEU内の債権者であるドイツの国益,選好を反映したものであると議論している.ただ,多くの加盟国が参加する制度にかかる選択が特定加盟国のプロフィールで説明されるという結論は,リベラル政府間主義の特徴である選好形成,政府間交渉,制度選択という3段階のモデルを必要としない説明になりかねない.ドイツの意見が,リベラル政府間主義のいう「トランスアクション・コストが下がる」ものだと受け入れられた理由や背景を説明する必要がある.また,欧州中央銀行による国債買い入れ(OMT)決定のように,危機後の対策の全てがドイツの意見の反映ではない.こうしたリベラル政府間主義に見られる説明不足がその静的かつ短期の視座に起因するのであれば,考慮しなければならない問題である. そこで本論文は,経済通貨同盟の提案から今日に至るまでのEUの取り組みを概観した.歴代の経済通貨同盟に関する取り組みは,特定加盟国の国益の反映ではなく,その都度の制度選択は完全な解決でもなかった.経済通貨同盟には,経済や金融面でEUをリードしているドイツよりも,ドイツ・マルクを抑えて対称的な通貨関係を希求するフランスが積極的になっていた.ただ,その制度的なデザインは,フランスの選好,国益通りにはならなかった.それはドイツとて同じであり,各国の国益はそれぞれ部分的にしか反映・採用されていなかったのである. そのうえ,これまでのスネーク,欧州通貨制度,ユーロといった諸制度はいずれも「部分的」な解決,つまり未完成のまま徐々に進んできた.リベラル政府間主義は,この「部分的」あるいは「漸進的」にしか統合が行われていない事実,そしてその部分的な統合では各国の国益が単線的に反映されている訳ではないことを捉えなおすべきである. 初期の経済通貨同盟を実施する直前にこれが破綻したのも,フランスがスネーク(フロート)を離脱したのも,欧州通貨制度が当初不安定だったが1980年代に安定に転じたのも,ドラギ欧州中央銀行総裁がOMT決定にあたって意識したのも,いずれもドイツの通貨や経済政策を評価し,フランス(や危機後はギリシャなど)の通貨や経済評価を懸念する国際金融市場・投機の存在が鍵になっている.加盟国やEUの取り組みを評価する存在がいたからこそ,「部分的」に進められた統合がそれでよしとされることはなく次の危機を招き,加盟国がそれに取り組むことが求められた可能性がある.つまり,統合の進展を説明する際に,加盟国やEU(制度)だけでは説明できない何かを説明要因に加えねばならない可能性がある.今後の研究課題としたい.
著者
矢崎 由梨香 井上 淳 花崎 泉
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2014 (ISSN:24243124)
巻号頁・発行日
pp._3A1-P03_1-_3A1-P03_2, 2014-05-24 (Released:2017-06-19)

Currently, the number of patients with low back pain continues to increase due to the aging society. My purpose is that find a motion to reduce the load to waist from the difference in the movement of the body between lumbar pain patients and healthy subjects, in the operation of squat. I get the coordinate data of the body, to shoot in motion capture the movement of the body when you are doing an operation subject squat. Since the result of performing the analysis using the principal component analysis, the difference comes into the angle of the ankle and upper arm, I will examine the load to waist and this difference.