著者
山崎 秀夫 香村 一夫 森脇 洋 加田平 賢史 廣瀬 孝太郎 井上 淳
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原発事故で放出され首都圏に沈着した放射性セシウムは東京湾に流入、蓄積していた。東京湾堆積物中の放射性セシウムの分布を解析し、首都圏における放射性セシウム汚染の動態を解明した。本研究では、東京湾の堆積物と水の放射性セシウム濃度の時空間分布を2011年8月から2016年7月までモニタリング調査した。東京湾に流入した放射性セシウムの大部分は首都圏北東部の高濃度汚染地帯が起源であり、そこから流出して東京湾奥部の旧江戸川河口域に沈積していた。現状では,放射性セシウムは東京湾中央部まではほとんど拡散していない。東京湾奥部河口域における放射性セシウムのインベントリーは事故以来、増加し続けている。
著者
村上 晶子 井上 淳 吉川 周作 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.11-18, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
42
被引用文献数
5 5

大阪城外堀堆積物に含まれる微粒炭・球状炭化粒子 (SCPs) の分析と球状炭化粒子の表面構造の観察を行った. 微粒炭分析からは, 粗粒の微粒炭濃集層準を見出し, この層準が1945年大阪大空襲の火災であることを指摘した. 球状炭化粒子分析では, 球状炭化粒子の時系列変化の解読から, 化石燃料 (石炭・石油) 使用量の歴史的変化が解明できることを示した. 球状炭化粒子は堆積物中に極めて良好に保存され, 短時間・簡単に分析できる利点を持っていた. この球状炭化粒子は過去の化石燃料の燃焼を解読する上で重要な役割を果たすと考えられる. 今後, 球状炭化粒子に関する研究は, 産業革命以降を示す「Anthropocene (Crutzen, 2002)」の時代の地質学的研究を行う上で重要な指標となることを指摘した.
著者
北川 陽一郎 吉川 周作 獺越 君代 山崎 秀夫
出版者
日本花粉学会
雑誌
日本花粉学会会誌 (ISSN:03871851)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.15-24, 2009-06-30
被引用文献数
2

大阪城内堀から採取された近現代の堆積物試料を用いて高解像度の花粉分析を行った.堆積物中の花粉群集は大阪城周辺および大阪の山地や低地の植生を反映している.また,堆積物中の花粉量は大阪城周辺の花粉飛散量を反映している.代表的な花粉出現率と花粉量に基づいてUA-1からUA-4の4花粉帯を設定した.UA-1(江戸時代末期)は山地には低密度のマツ林が分布していた.また,低地にはムクノキーエノキ群集が分布し,花粉飛散量は少なかった.UA-2(1880年代から1940年代)はマツ林が拡大し,その結果,マツ属の花粉飛散量が増加した.UA-3(1950年代から1960年代)は山地ではマツ林が減少し,大規模なスギやヒノキの植林が行われた.その結果,マツ属の花粉飛散量が減少した.UA-4(1970年代から1990年代)はスギやヒノキの人工林が成長した.加えて,大阪城の開発が行われ,内堀周辺にニレ,ケヤキの植樹が行われた.その結果,スギ,ヒノキタイプ,ニレ属-ケヤキ属花粉の飛散量が増加した.
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their 137Cs, 241Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of 137Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (137Cs and 241Am) and charcoal in high concentrations.
著者
山崎 秀夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.299-316, 2014-06-15 (Released:2014-06-27)
参考文献数
38
被引用文献数
2 1

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故(以下,原発事故と略記する)では,大量の放射性核種が環境に放出された。環境射能汚染からの低線量被ばくによる生体影響に関しては様々な議論が繰り返されており,その実態については明瞭に解明されていない。今回の事故では,東日本一帯の環境が広範囲に放射能汚染され,事故による直接的な影響を受けなかった地域にも,物流などによって放射性物質が拡散している。原発事故による環境放射能汚染の特徴は,①大規模な海洋汚染が,事故後3年以上経過した現在も継続している。②首都圏を含む人口稠密な都市が,高度な放射能汚染にさらされた。③大量の放射性核種が,今でも森林生態系に沈着している。このような複雑な環境放射能汚染は,過去に世界各地で起きた大規模原子力事故では経験していない。原発事故で環境科学的に問題になる主要な核種は,131I,134Cs,137Csである。また,原子炉冷却水は,炉内のデブリにも接触しているので,90Srの他に核燃料のウランやプルトニウム同位体,核分裂生成核種,中性子捕獲生成核種などが含まれる可能性が高く,汚染冷却水の環境への漏えいは,深刻な放射能汚染を引き起こす可能性がある。福島第一原発による環境放射能汚染の概要がようやく明らかになり始めた。環境放射能汚染の状況を明らかにし,汚染に対処するためには,放射性核種の環境中での移行,蓄積,拡散を正しく評価しなければならない。本稿では,現在までにわかっている,原発事故による環境放射能汚染の動態を,環境中の放射性核種の移行と蓄積の観点から概説する。
著者
坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.32(第32回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.137-142, 2018 (Released:2018-12-07)
参考文献数
27

テクノ・ネット依存症傾向が高い学生ほど,新型うつ傾向とQOL(Quality of Life:生活の質)が悪化する傾向を示し,共感的ネット利用とレジリエンスや共同運動愛好度(複数人での運動を好む程度)が高い学生ほど,新型うつ傾向が抑制されQOL が高い傾向を示すとの仮説を設定した。情報系大学生を対象に縦断調査を行い,共分散構造分析で分析した結果,仮説は検証された。このことから,情報化社会における新型うつ傾向の予防策として,テクノ・ネット依存症傾向の回避や共同運動愛好の促進とレジリエンス向上の重要性が示唆された。
著者
坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.27(第27回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.341-346, 2013-11-26 (Released:2015-02-07)
参考文献数
17

新型うつ傾向と従来型うつ傾向に対する,情報環境におけるテクノ依存症傾向の影響度を比較することを主目的に,情報系大学生を対象に調査し,共分散構造分析で検証した。その結果,テクノ依存症傾向が高まることで従来型うつ傾向よりも新型うつ傾向をかなり悪化させることが検証され,インターネット利用目的により影響度が異なることも示された。このことから,情報化社会における新型うつ傾向の予防策として,テクノ依存症の回避と現実逃避目的のインターネットの利用を控えることの重要性が示唆された。
著者
坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.36(2022年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.167-172, 2022-11-30 (Released:2022-12-05)
参考文献数
17

本研究の仮説の「ネット依存症傾向と新型うつ傾向,および生活ストレスが高い学生ほど,デジタル認知症傾向が悪化する」と,「レジリエンスと共同運動愛好度およびQOL が高い学生ほど,ネット依存症傾向や新型うつ傾向およびデジタル認知症傾向が抑制される」は,大学生を対象にした縦断調査に基づく共分散構造分析の手法でほぼ検証された。また,これら3 種類の傾向の連鎖的な悪影響に対する予防策として,特にレジリエンスの向上と共同運動愛好度の重要性が示唆された。
著者
坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.26(第26回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.143-148, 2012 (Released:2014-09-20)
参考文献数
14

うつ傾向に対する,情報環境におけるテクノ依存症傾向と学生生活の一般的ストレスの影響度を比較することを主目的に,情報系大学生を対象に調査し,共分散構造分析で検証した。その結果,テクノ依存症傾向が高まることでうつ傾向をかなり悪化させることが検証され,インターネット利用目的により影響度が異なることも示された。また,一般的ストレスよりもテクノ依存症傾向の悪影響の方が倍以上高いことが検証された。このことから,情報化社会におけるうつ傾向の予防策として,テクノ依存症の回避と現実逃避目的のインターネットの利用を控えることの重要性が示唆された。
著者
北上 大樹 坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.29(第29回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.309-314, 2015-11-25 (Released:2015-11-25)
参考文献数
13

本研究の目的は,情報環境における情報行動がレジリエンス(精神的回復力)へ及ぼす影響度を分析することである。対象となる情報行動は,現実逃避型ネット利用と相談型メール利用である。レジリエンスに対して,前者は低下させ,後者は向上させるとの仮説を設定した。情報系大学生を対象に調査を行い,共分散構造分析で分析した結果,仮説は検証された。また,レジリエンスに対する相談型メール利用の影響度は,利他的価値観より低いが良書読書効果よりもやや強く,軽視できない向上効果が示唆された。
著者
上東 伸洋 坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.30(第30回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.273-278, 2016-11-28 (Released:2016-11-28)
参考文献数
17

本研究ではSNS 交流が,共感力や現実の友人関係,QOL(Quality of Life)を連鎖的に向上させるという仮説を設定した。そして,情報系大学生を対象に集合調査法で調査し,共分散構造分析で検証した。その結果,SNS 交流がそれらの要素を向上させていることが検証された。また,SNS 交流のネットと現実の共感力へ及ぼす促進効果が現実友人関係やQOL に与える影響は,SNS 疲れやテクノ・ネット依存症傾向の悪影響よりもその向上効果が高いことが示された。さらに,ネット共感力が現実共感力を向上させる可能性も示唆された。
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15
参考文献数
20
被引用文献数
1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their ^<137>Cs, ^<241>Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of ^<137>Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (^<137>Cs and ^<241>Am) and charcoal in high concentrations.
著者
佐久川 弘 竹田 一彦 山崎 秀夫 チドヤ ラッセル サンデー マイケル アデシナ アデニュイ ダーバラー アリー アブデルダム シェリフ モハメド モハメド アリ カオンガ チクムブスコ チジワ
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-07-19

瀬戸内海において海水、堆積物、生物試料を採取し、海域による農薬汚染の進行度の評価を行い、瀬戸内海全域にわたる汚染の歴史的変遷を明らかにした。生物試料中の農薬濃度の測定から、食用魚等の食品としての安全性を評価し、水生生物へのリスクアセスメントを行った。さらに、瀬戸内海の海水等の農薬濃度、農地等での農薬使用量、船底塗料の出荷量から、過去の農薬の物質収支の変遷に関して解析を行った。その結果、測定した8種類の農薬のうちで、陸地で使用されるダイアジノン(有機リン系殺虫剤)がすべての試料において、比較的高濃度で存在し、水産食品としての安全性への懸念や水生生物に対する負の影響が認められることを明らかにした。
著者
吉水 湧樹 坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.337-342, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
15

この研究の目的は,共同運動と論理的思考を好むことが情報環境におけるテクノ依存症傾向が及ぼす新型うつ傾向に対する抑制要因になるかどうかを調査することである。情報系大学生に対する調査データは共分散構造分析で分析され,論理的思考傾向を示す学生及び単独運動よりも共同運動を好む学生に,より低い新型うつ傾向がみられた。現今の情報化社会における新型うつ傾向を予防するために,共同運動と論理的思考への愛好が振興される必要があり,また共同運動愛好を奨励することによってテクノ依存症傾向が低下すると思われる。
著者
山崎 秀夫 吉川 周作 稲野 伸哉
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1419-1425, 2004-12-05
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

隠岐諸島島後の男池から採取した柱状堆積物試料を用い,そこに記録された重金属汚染の歴史的変遷を解読した.隠岐は汚染の発生源から隔離されているので,男池堆積物には大気を経由して運ばれてきた汚染物質が沈降・集積していると考えられる.得られた長さ107 cmのコアの<sup>210</sup>Pb法による堆積年代は,最深部で1890年であった.また,<sup>137</sup>Csの鉛直分布はそのグローバルフォールアウトの時代変化とよく一致した.このことは,このコアが環境変遷の時系列変動の解析に使用できることを示している.男池堆積物に対する水銀の人為的負荷は1920年代から始まり,堆積物に対するフラックスは1960年代に最大値10~12 ng cm<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>を示す.それ以降は現在までほぼ一定値で推移する.一方,鉛の人為的負荷は1930年代に始まり,その負荷量は現在にまで増加し続ける.堆積物表層での,そのフラックスは5000 ng cm<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>に達する.また,水銀は1900~1910年,鉛は1925年ごろに特異的なピークを示すが,その起源については特定できない.このような汚染の歴史トレンドが元素によって異なるのは,その使用履歴や環境への負荷の形態が時代とともに変化していることが反映している.また,男池が朝鮮半島や中国大陸からの影響を受けている可能性も示唆された. <br>
著者
坂元 秀之 山本 和子 白崎 俊浩 山崎 秀夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.91-99, 2004-02-05
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

誘導結合プラズマ三次元質量分析装置(ICP/3DQMS)を用いて,陸水試料中の極微量ウランと主成分元素のナトリウム,マグネシウム,カリウム,カルシウムを迅速に分析する方法を確立した.ICP/3DQMSの感度にかかわるパラメーターとしてイオン取り込み時間とバッファーガス圧力について分析条件の最適化を検討した.本法によるウランの分析精度は標準物質Riverine Water(NRC&bull;CNRC SLRS-4)の分析と実試料への添加回収実験によって検討し,良好な結果が得られた.また,ナトリウム,マグネシウム,カリウム,カルシウムの分析精度は,実試料を用いて,ICP発光分析法によりクロスチェックを行い,これらの元素も精度よく定量できることを明らかにした.本法によるウランの検出限界(空試験溶液のイオン信号強度の3&sigma;に相当する濃度)を求めたところ0.7 ng/lであった.琵琶湖湖水及び周辺河川水の分析に本法を適用した.これら元素は河川水では周辺域の環境の影響を受けて比較的大きな濃度変動を示したが,琵琶湖の表層水ではほぼ一定の値を示した.琵琶湖北湖におけるこれら元素の平均濃度はそれぞれU: 22.0 ng/l,Na: 8.3 mg/l,Mg: 2.28 mg/l,K: 1.48 mg/l,Ca: 12.1 mg/lであった.また,成層期の琵琶湖水中でウランの鉛直分布は深度とともに大きく変動した.ウラン及び主成分元素の分析結果から,琵琶湖水系におけるウランの動態に関して興味深い知見が得られた.<br>
著者
藤田 光宏 秋山 哲男 山崎 秀夫
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.69, pp.171-185, 1999-09

自家用車を用いて家族や知人により送迎される自然発生的な未組織の交通サービスを「自動車同乗」と定義する。公共交通が不使な人口低密度地域に居住する高齢者のモピリテイ確保は、この「自動車同乗」に強く依存し、また相手の都合により外出行動が決定されるという、極めて不安定な状況におかれている。わが国では英国のようにボランテイア等による「自動車同乗」の制度が全くなく、今後どの様な政策的な方向を求めるべきかはこれからである。本研究では、この「自動車同乗」の基礎的研究として、高齢者とその家族を対象としたアンケート調査により「自動車問乗」の実態把握とその構造を把握することを目的とした。その結果、①「自動車同乗」の8割が家族間で行われていること、またその多くが子供に依存していることが分かった。②「自動車同乗」の成立する条件をドライパーである供給側と利用側の関係から分類すると便乗型、当然型、調整型に分けることができ、家族のつながりが強い場合は当然型や調整型で自分の目的地に合わせてもらう空間が一致しない傾向が著しいこと。しかし、知人の場合は相手の目的地に合わせた空間が一致する便乗型が強いことが分かった。以上から、自動車同乗については家族依存型が強く相手に会わせるという時間的・空間的制約の中での外出行動のため、極めて不安定な供給形態であり必ずしも十分ではなく、今後新しい送迎サービスなどの、補完的仕組みも合わせて必要であることが改めて重要であると認識された。Co-ride Personal Car is defined as the unorganized transportation service offered spontaneously by family or acquaintance. Securing the mobility of the elderly, who live in the sparse populated area with poor transit service, depend entirely upon this Co-ride Personal Car. It is means that they have been in the unstable conditions where their going-out action is controlled by driver's reasons. We have not Co-ride Personal Car system by volunteers in Japan, as seen in the England. Now we ought to decide our future political direction. The purpose of this study is to grasp the actual condition and its structure of Co-ride Personal Car, by the questionnaire done for the elderly using and their family. The result is as follows. 1) Eighty percents of Co-ride Personal Car is done by family, especially their children in many cases. 2) From the point of relationship between the driver and the user, the condition of driver and user can be classified into three types: depending upon driver' s trip, depending upon user's trip and negotiate between driver and user's trip. In case that family ties are strong, the destination of their family tends to be different from the one of the elderly, as seen in depending upon user's trip and negotiate between driver and user's trip. But in the case of acquaintance, the destination tends to be consistent with the elderly, as seen in depending upon driver's trip. From the above it was made clear that Co-ride Personal Car is quite unstable from supply mobility for the elderly, because it is restricted by both time and space, strongly depending upon family. In addition to Co-ride Personal Car, supplementary system such as new transport service will be needed in the future
著者
上東 伸洋 坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.273-278, 2016

<p>本研究ではSNS 交流が,共感力や現実の友人関係,QOL(Quality of Life)を連鎖的に向上させるという仮説を設定した。そして,情報系大学生を対象に集合調査法で調査し,共分散構造分析で検証した。その結果,SNS 交流がそれらの要素を向上させていることが検証された。また,SNS 交流のネットと現実の共感力へ及ぼす促進効果が現実友人関係やQOL に与える影響は,SNS 疲れやテクノ・ネット依存症傾向の悪影響よりもその向上効果が高いことが示された。さらに,ネット共感力が現実共感力を向上させる可能性も示唆された。 </p>