- 著者
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加茂 徹
- 出版者
- 公益社団法人 日本油化学会
- 雑誌
- オレオサイエンス (ISSN:13458949)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.10, pp.451-458, 2020 (Released:2020-10-07)
- 参考文献数
- 27
- 被引用文献数
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プラスチックは素材として非常に優れていたため,20世紀後半から生産量は飛躍的に拡大し,世界で4億t以上が生産されている。感染症が蔓延する世界において,清潔な水や医療品を途上国や貧困な地域の人々に届けるため,安価で軽いプラスチックの担う役割は大きい。一方,不法投棄された廃プラスチックの一部は海洋に流出し,海洋生態系に深刻なダメージを与え,人間の健康へも影響を与える可能性が指摘された。廃プラスチックは,重要な環境問題の一つと見なされるようになった。廃プラスチックのリサイクルでは,対象物の品質と量を考慮し,マテリアルリサイクル,ケミカルリサイクル,エネルギー回収から最適な手法を選択することが望ましい。現在,プラスチックは主に化石資源から製造されているが,将来,再生可能資源が主な原料となる。新たに市場に投入される貴重な有機資源を最小化するため,廃プラスチックの循環利用を促進すべきである。SDGs が目指す世界では,価格や品質だけでなく,環境保全および生物多様性や人権への配慮などの社会倫理性が求められている。