著者
傅 正偉 近藤 康 岩崎 信之 加藤 久典 菅原 邦生 久保 辰雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.1154-1160, 1997-12-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

ニワトリ松果体中メラトニンの抽出•保存および高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によ るメラトニンの定量という一連のシステムについて検討し,次の方法を確立した.(1) メラトニンの抽出:松果体の摘出は断首後できるだけ手早く行い,松果体1個をガラス製ハンドホモジナイザー(1ml)に入れ,氷中でホモジナイズしてから0.05M過塩素酸(システインとEDTA含有)を0.1,0.2,0.2mlと加えるごとにホモジナイズする.遠心して得た上澄液を抽出液とする.標準液と抽出液は4°Cにおいて1ヵ月以内の保存が可能である.また,これらの液は濾過チューブを用いて濾過してから100μlをクロマトグラフへ注入する.なお,暗期においては断首からホモジナイズ終了まで赤色ランプ下で行う.(2) HPLCの条件:逆相カラム,35°Cのカラム保温温度,メタノールと0.05M酢酸緩衝液(pH4.7)の混合溶液(25:75または35:65)の移動相,1ml/minの流速,蛍光検出器(励起波長=285nm,放射波長=345nm)または電気化学検出器(作用電極=+900mV)などの条件および機器を用いる.
著者
加藤 久典
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

食品を摂取した動物がどのような応答を示すかを、多数の分子を網羅的に解析するオミクス解析という手法で解析した。遺伝子発現量、タンパク質量、代謝物量など、様々な網羅的解析を組み合わせた。この方向の研究を推進するためのデータベースや解析ツールを改良し、その有効性を実証した。食品のみならず、運動や日内リズムなど関係する生活習慣の影響も合わせて解析することに成功した。
著者
加藤 久典
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

個別化疾病予防のため、食品の効能に対する個人差をゲノムレベルで解明することが重要であるが、日本人集団を対象とする研究は乏しかった。本研究は食品因子と一塩基多型(SNPs)の関連の解明を目的とし、大規模日本人SNPsデータベースと食品摂取に関するアンケート調査を用いてゲノムワイド関連解析を実施した。着目した4つの食習慣に有意に関連するSNPsを同定し、インターネットによるゲノムコホート研究が有用であることを示した。特に、遺伝型によって魚の摂取頻度が変化することを初めて明らかにした。さらに、ヨーロッパ系集団と異なるSNPが日本人集団では食習慣に影響することを示した。
著者
加藤 久典 JIA Huijuan JIA Hujiuan
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

これまでにパセリの熱水抽出物がヒト結腸がん由来細胞株HT-29の増殖抑制効果が認められたことから、パセリには抗結腸腫瘍活性を有する可能性が示唆された。細胞レベルから生体レベルへのパセリの腫瘍増殖抑制作用を検証するために、まずは最初の一歩として、デキストラン硫酸ナトリウム誘導潰瘍性大腸炎モデルマウスを用いてパセリ摂取による大腸炎の抑制作用を検討した。体重減少、血便、下痢の3つのスコアからなる大腸炎の指標であるDAI (Disease Activity Index)を評価するとともに、トランスクリプトーム解析を基盤とした統合オミクス解析を活用し、その作用分子機構の解明を行った。パセリ摂取マウスにおいて大腸炎の発症に伴うDAI上昇および腸管の短縮は有意に抑制され、血中腫瘍マーカーのSerum amyloid A1 (SAA1)、および炎症マーカーのIL-6 (Interleukin 6)、Matrix metalloproteinase-3 (MMP3)の濃度も顕著に減少した。大腸のトランスクリプトーム解析では、炎症サイトカインのI1-6、ケモカインCc15、下流のHaptoglobin、cluster of differentiation 163、および線維化マーカーのTissue Inhibitor of Metalloproteinase l、Mmp3、Mmpl0の発現が有意に減少し、パセリの摂取により炎症の抑制、腸管短縮の改善に関与すると示された。肝臓トランスクリプトーム解析では、Saa1、c-Jun、S100 calcium binding protein A8など腫瘍マーカーの発現減少、stearoyl-CoA desaturase-1、ELOVL family member 6, elongation of long chain fatty acids、fatty acid synthase、NADP-dependent malic enzymeなど脂肪酸合成関連遺伝子の発現増加から、パセリを摂取したマウスにおいて腫瘍マーカー濃度の減少および体重減少の改善との関与が考えられた。また、肝臓プロテオーム解析では、クエン酸サイクルおよび尿素サイクルにかかわるタンパク質の発現増加、メチオニン・リサイクル経路にかかわるタンパク質発現減少から酸化的リン酸化の改善、酸化ストレスの低減が示唆された。以上のように、トランスクリプトミクスとプロテオミクスを組み合わせた統合的な解析から、パセリ摂取による大腸炎抑制作用メカニズムの遣伝子-タンパク質ネットワークを解明できた。今後、メタポロミクス解析を加えさらに詳細に解析する予定である。
著者
加藤 久典
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

昨年度の研究において、転写因子ATF-4およびボスファターゼPP1cのノックダウンがアミノ酸情報伝達を減弱させることを見いだした。本年度はこれらのさらに上流に位置する伝達経路の関与を明確にする目的で、mTOR経路の上流因子として最近見いだされたhvps34と、これを調節することが示唆されているp150に着目した。ノックダウン効率の検討では、HEK293細胞において、hvps34のmRNAレベルは約30%に、タンパク質レベルは約40%に減少した。一方HepG2においても同程度のノックダウン効率を得ることができた。何れの細胞株においても、p150のmRNAは約30%に減少した。アミノ酸によるmTORの下流にあるp70S6キナーゼのリン酸化はhvps34とp150の何れのノックダウンよっても大きく減弱した。これらのことから、各細胞におけるアミノ酸シグナルの認識にvps34が関わっていることを明らかにし、認識機構の全貌解明に本実験系が有効であることが示された。一方、前年のDNAマイクロアレイによる解析で、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)の遺伝子をアミノ酸欠乏に対する高応答遺伝子として見いだしたが、この遺伝子の上流域に既知のアミノ酸応答配列に類似した配列が存在することがわかった。この領域を含むレポーターベクターを作成し、転写因子ATF-3やATF-4と共発現させたところ、この領域がこれら因子によって強力な制御を受けていることが示された。このことから、PEPCKはこれまで用いてきたIGFBP-1同様にアミノ酸情報伝達を解析する上での有用なツールとして利用できることがわかった。
著者
加藤 久典
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

様々なタンパク質栄養条件に応答した肝臓や皮膚での遺伝子発現の網羅的応答を幅広く明らかにした。それらのデータを有効に解析するためのバイオインフォマティクス手法を高度活用し、栄養研究における情報の有効利用を推進した。また、高脂肪食摂食や運動、抗肥満食品因子、マイルドなカロリー制限等に対する網羅的遺伝子発現やタンパク質量の応答に関する情報を蓄積した。従来から構築して維持しているニュートリゲノミクスデータベースを大幅に改良し、世界のニュートリゲノミクス研究を格段に発展させる礎を築いた。