著者
水谷 敦史 加藤 俊哉 中山 禎司 本城 裕美子 影山 富士人 森 弘樹 小澤 享史 吉野 篤人
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.75-79, 2013-01-01 (Released:2013-04-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

重症の急性鉄中毒により死亡した稀有な症例を経験したので,考察を踏まえ報告する。症例は23歳,女性。鉄欠乏性貧血の既往があり,処方されていた鉄剤(クエン酸第一鉄ナトリウム)を意図的に過剰服用し,当院に救急搬送された(推定摂取量2,400 mg)。当院来院時の症状は傾眠・腹痛・嘔吐であり,非重症の鉄中毒症例と思われたが,その後進行性に悪化し意識障害が出現,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)となった。デフェロキサミン投与,輸血療法,血漿交換,持続的血液濾過透析などの集中治療を行ったが,最終的に肝不全とその合併症(DIC・脳浮腫)により死亡した。急性鉄中毒重症例では,肝不全が完成した後に集中治療を開始してもその効果は乏しく,肝不全の発症予防および重篤化防止が重要であると考えられる。そのために,治療開始初期から消化管除染・デフェロキサミン投与・急性期血液浄化法などの集中治療を行うことが必要であると考えられた。
著者
水谷 敦史 中山 禎司 森 弘樹 澤下 光二 加藤 俊哉 小澤 享史
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.124-128, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
8
被引用文献数
2

脳空気塞栓症は比較的稀な病態であり,特に空気の流入経路が静脈逆行性である例は特に稀である.今回我々は画像所見・剖検所見から静脈逆行性の脳空気塞栓症と診断しえた症例を経験したので報告する.症例は80 歳代の男性で意識障害を主訴に救急搬送された.来院時から重度の意識障害,瞳孔不同が認められた.頭部CT にて右側頭葉・後頭葉および両側前頭頭頂葉の傍矢状洞部の脳実質内,横静脈洞・上矢状静脈洞に極めて多量の異所性ガス像が認められ,脳ヘルニアを呈していた.生命予後,機能予後の観点から積極的治療は断念して保存的に治療したが短時間で死亡した.病理解剖所見では,出血性壊死の範囲が静脈灌流域に一致しており,脳静脈内腔に多量の気泡が認められたことから静脈逆行性の脳空気塞栓症と診断した.空気の流入経路としては慢性肺疾患・気管支肺炎に伴い縦隔気腫を来し,ここから上大静脈に空気が流入して静脈内を逆流したと考えられた.
著者
加藤 俊哉 橋爪 一光 笠松 紀雄 冨田 和宏 半澤 儁 籾木 茂 佐々木 一義 玉地 義弘 岡本 一也
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.22-27, 1996-01-25
参考文献数
10
被引用文献数
1

胸部X線写真, 胸部CTにて空洞性病変を疑い, 気管支鏡で空洞を直視し得た肺扁平上皮癌の2例を経験した。空洞形成機序を含め, 若干の文献的考察を加えて報告する。症例1は60歳, 男性。両上肺野に巨大嚢胞が認められ, 喀痰細胞診にて扁平上皮癌の診断を得た。気管支鏡検査にて左上葉支入口部より空洞内腔を直視した。症例2は63歳, 男性。胸部異常陰影の精査のため気管支鏡検査施行, 右上葉支入口部より空洞内腔を直視し, 気管支と空洞の交通部から中枢側に癌の直接浸潤が認められた。検査後の喀痰細胞診にて扁平上皮癌の診断を得た。剖検では両症例とも空洞壁及びそれに交通する気管支に広範な壊死を伴う癌の浸潤が認められた。両症例とも嚢胞壁に癌が発生し, これが増大, 周囲に浸潤し, 壊死を生じて, 気管支に開通したものと考えられた。