著者
中森 弘樹
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 = Kansai sociological review : official journal of the Kansai Sociological Association (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.82-94, 2013

本稿の目的は、失踪者の家族の視点から「失踪」という事態を考察することである。これまで自然災害や海難事故、戦争状況下において生じる行方不明が一般的に注目を集め、捜索の対象となってきたのに対して、それ以外の状況で人が行方不明になるという事態はあまり着目されてこなかった。本稿では後者の事態を「失踪」として定義する。そして、残された家族たちが不確定な失踪者の生死をいかにして判断するのか、またその際にいかなる困難を抱えるのかを死の社会学の視座を用いて明らかにすることで、失踪者の客観的な死の危険性からは説明できない「失踪」の問題性を描き出すことを試みる。上記の目的に基づき、本稿では失踪者の家族にインタビュー調査を実施・分析した結果、以下の諸点が示唆された。まず、残された家族にとって失踪者の生死の線引きを行うことは困難であった。そのような状況では、たとえ失踪者の死の危険性が明らかでなくとも、家族たちは失踪者の生死が不確定であることに対して長期的な心理的負担を抱えることがあった。また、失踪者の生死の線引きには、家族たち自身の生死の判断のみならず、警察等によって客観的に判断される失踪者の生死や、失踪者の法的な生死といった異なる生死の次元が関わっていた。これらの生死の諸次元が食い違うことで、捜索活動の困難や失踪をめぐる社会手続き上の負担、ならびに失踪宣告をめぐる葛藤といった問題が家族たちに生じていた。
著者
水谷 敦史 加藤 俊哉 中山 禎司 本城 裕美子 影山 富士人 森 弘樹 小澤 享史 吉野 篤人
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.75-79, 2013-01-01 (Released:2013-04-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2

重症の急性鉄中毒により死亡した稀有な症例を経験したので,考察を踏まえ報告する。症例は23歳,女性。鉄欠乏性貧血の既往があり,処方されていた鉄剤(クエン酸第一鉄ナトリウム)を意図的に過剰服用し,当院に救急搬送された(推定摂取量2,400 mg)。当院来院時の症状は傾眠・腹痛・嘔吐であり,非重症の鉄中毒症例と思われたが,その後進行性に悪化し意識障害が出現,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)となった。デフェロキサミン投与,輸血療法,血漿交換,持続的血液濾過透析などの集中治療を行ったが,最終的に肝不全とその合併症(DIC・脳浮腫)により死亡した。急性鉄中毒重症例では,肝不全が完成した後に集中治療を開始してもその効果は乏しく,肝不全の発症予防および重篤化防止が重要であると考えられる。そのために,治療開始初期から消化管除染・デフェロキサミン投与・急性期血液浄化法などの集中治療を行うことが必要であると考えられた。
著者
水谷 敦史 中山 禎司 森 弘樹 澤下 光二 加藤 俊哉 小澤 享史
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.124-128, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
8

脳空気塞栓症は比較的稀な病態であり,特に空気の流入経路が静脈逆行性である例は特に稀である.今回我々は画像所見・剖検所見から静脈逆行性の脳空気塞栓症と診断しえた症例を経験したので報告する.症例は80 歳代の男性で意識障害を主訴に救急搬送された.来院時から重度の意識障害,瞳孔不同が認められた.頭部CT にて右側頭葉・後頭葉および両側前頭頭頂葉の傍矢状洞部の脳実質内,横静脈洞・上矢状静脈洞に極めて多量の異所性ガス像が認められ,脳ヘルニアを呈していた.生命予後,機能予後の観点から積極的治療は断念して保存的に治療したが短時間で死亡した.病理解剖所見では,出血性壊死の範囲が静脈灌流域に一致しており,脳静脈内腔に多量の気泡が認められたことから静脈逆行性の脳空気塞栓症と診断した.空気の流入経路としては慢性肺疾患・気管支肺炎に伴い縦隔気腫を来し,ここから上大静脈に空気が流入して静脈内を逆流したと考えられた.

2 0 0 0 OA 乳頭乳輪再建

著者
森 弘樹 植村 法子 末貞 伸子 石井 義剛
出版者
一般社団法人 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会
雑誌
Oncoplastic Breast Surgery (ISSN:24324647)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-7, 2019-03-28 (Released:2019-03-30)
参考文献数
36

乳頭乳輪は乳房のイメージを決定する大きな要素であり, その位置とともに「形」と「色」の再建は重要である。本来の乳頭乳輪部は上皮成分が多くを占め, また平滑筋が存在し, 形の変化に寄与する。これを局所皮弁で再建する場合は皮膚成分の制限, 平滑筋が存在しないことから突出を維持することは簡単ではない。また, 一般的にアジア女性の乳頭は大きめで乳輪が小さいため, 皮弁の瘢痕を再建乳輪内に収めることがむずかしいことがある。われわれは, 形について局所皮弁での再建をおもに行い, Skate flapからC-V flapに変更した。その後, modified C-V flap, 軟骨移植を組み合わせた方法, そしてwheel steering flapを開発し, 突出を維持し, 瘢痕長径を短くする改善を加えてきた。一方, 色については薄くなることが避けられないが, 医療用刺青をおもに用いてきた。本稿では乳頭乳輪再建について, 自施設で用いてきた方法を中心に歴史的展望と現状を報告する。
著者
浜永 真由子 森 弘樹 植村 法子 岡崎 睦
出版者
一般社団法人 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会
雑誌
Oncoplastic Breast Surgery (ISSN:24324647)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.78-83, 2017-09-25 (Released:2017-09-29)
参考文献数
13

乳房インプラントの回転について, エキスパンダー・インプラントの選択との関連について検討した。2015年3月までにエキスパンダー・インプラント法による乳房再建を完了した148例153側を対象とした。使用したエキスパンダーはスムースラウンドタイプ, スムースアナトミカルタイプ, テクスチャードアナトミカルタイプに分類し, インプラントは Mentor社, Allergan社に分類した。経過観察期間は平均72.4ヵ月であった。153側中21側 (13.7%) でインプラントの回転が認められ, 判明までの期間は平均31.2ヵ月であった。回転症例は全例でスムースタイプエキスパンダーを使用しており, 最突出点が内側にくる方向に回転した。スムースタイプエキスパンダーと Mentor社インプラントの組み合わせは, スムースタイプエキスパンダーと Allergan社インプラントの組み合わせと比較して有意に回転を生じた。
著者
山内 健生 田原 研司 金森 弘樹 川端 寛樹 新井 智 片山 丘 藤田 博己 矢野 泰弘 高田 伸弘 板垣 朝夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.297-304, 2009
被引用文献数
8

島根県で唯一の日本紅斑熱汚染地域である弥山山地(島根半島の西端)とその周辺地域において,マダニ相の調査を実施した.旗ずり法では7,497個体が採集され,次の12種に分類された:タカサゴキララマダニ,タイワンカクマダニ,ツノチマダニ,キチマダニ,タカサゴチマダニ,ヤマアラシチマダニ,ヒゲナガチマダニ,フタトゲチマダニ,オオトゲチマダニ,タネガタマダニ,ヤマトマダニ,アカコッコマダニ.弥山山地ではヒゲナガチマダニとフタトゲチマダニがそれぞれ12〜4月と5〜8月に優占し,両種の採集頻度は弥山山地から離れるにつれておおむね低下した.弥山山地は島根県で唯一のニホンジカ生息地であるため,ニホンジカの体からもマダニ類を採集した.その結果,819個体が採集され,次の4種に分類された:フタトゲチマダニ,オオトゲチマダニ,ヤマトマダニ,タヌキマダニ.ニホンジカから4〜6月に採集された全マダニ個体数の87.6%をフタトゲチマダニが占めていたことから,弥山山地のニホンジカはフタトゲチマダニの主要な宿主であると考えられた.
著者
椙村 春彦 森 弘樹 奥寺 康司
出版者
浜松医科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

喫煙リスクの同定されている大腸癌、胃癌などで、喫煙歴を調整した症例対照DNA多型研究をおこなった。まず修復遺伝子MutYHのhaplotypeを構築し、約800対の中規模の相関関係研究で、大腸癌リスクを有意に上昇させるハプロタイプを見いだした。もっとも重要とおもわれる多型はプロモーター部位にみられた多型であったが、機能差を確認することはできなかった。胃癌についても、喫煙歴と食事歴を調整可能な150-300例の症例対照相関研究をおこなった。ひとつは、inconsistentなdataが続いていた、CDH1promoterの多型であるが、ハプロタイプ構築の結果、日本人の胃癌への寄与が確認された。これで、北欧のdataとあわせて、2集団で確認されたことになるが、ともに症例数、寄与度とも少ない。胃癌発生背景粘膜の炎症の活動度を病理学的に評価して、炎症が少ない(これは酸化的DNA障害が比較的少ないのではないかと予想した)にもかかわらず、DNA付加体である、80H guanineが、上皮細胞、リンパ球などに強染し、多くのDNA障害が存在するという症例を、200例以上の胃癌手術例より抽出した。これちは、酸化的DNA障害修復遺伝子になんらかの機能低下をおこすような多型あるいは変異があるのではないかと期待した。そこで、酸化的DNA障害修復遺伝子である、OGG1、MutYH、NTH1、MTH1の全エクソンの塩基配列を決め、異常な変異や多型が存在しないかどうか確認した。結果として、このような胃癌例に重大な結果を及ぼすような変異は見つからなかったが、いくつか、機能差の可能性のある多型候補が見いだされた。この点についてさらに検討を続けている。家族集積性のある胃癌の例のなかから,あらたなP53多型を発見した。試験管内での検討では、明白な機能差がみられるのであるが、発見された例における発症は60代でありpopulation studyが必要と考えられた。