- 著者
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加藤 常員
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.2, pp.341-350, 2018-02-15
地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は歴史研究の場で有効な研究ツールとして認識されつつある.歴史研究分野でのGISの利活用では旧国境,旧郡境,旧村境などの歴史的境界の空間データが不可欠である.歴史的境界は,時期や研究者の見解により異なる箇所やもともと判然としない箇所も多い.そのため近世以前の歴史的境界の空間データ化は進んでいない.歴史的境界線は地方史誌などに掲載されているが,それら地図の作成にあたっては現行の境界線や地形が参照されたと考えられ,現行の地勢図などが下図に使用されたと推定できる.本稿では,判然としない箇所を含む歴史的境界の空間データ化の手法を提案する.提案する手法は,求める境界にかかわる複数の領域(たとえば村)のおおよその形状データを与え,面を核とするボロノイ分割を活用して分割線を求める.求めた分割線に地勢図を参照して緯度・経度情報を付与し,空間データに仕立てる.提案手法は細密な境界線空間データの生成をめざすものではない.歴史的境界の特性をふまえた,大まかな境界線のデータ化をめざすものである.提案手法に従った歴史的境界線生成システムを試作し,境界線データの生成実験を行った結果を示す.