著者
北原 真冬
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.35-41, 2002-08-30 (Released:2017-08-31)

The present paper briefly reviews five areas of Japanese pitch accent research: phonological, phonetic, engineering, physiological, and psychological studies. Each area is assessed in terms of the contribution to the field of cognitive science. Problems in current research models and future directions are also discussed.
著者
北原 真冬
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.45-51, 2009

統計的手法を導入した最適性理論(OT)と調和度文法(HG)を中心に最近の研究動向を概観した。候補のセットから最適な形式を選ぶ文法モジュールと,文法の時間的変化を扱う学習アルゴリズムを切り離し,それぞれに確率分布を扱う計算機構を入れて考えると,範疇的でない変化の過程や自由変異に沿うような組み合わせは何かを様々に探求することができる。本稿では特にBoersma and Hayes(2001)の提案とそれに対する批判,そしてさらに批判を乗り越えた新たなモデルができていく過程を中心に扱った。しかし,時間的・確率的に変動する事象は音声学から音韻論,心理言語学にいたる広い範囲に様々な形で存在している。それらを扱うためにはランキングとその学習アルゴリズムだけでなく,ほかにも確率分布を扱える機構を組み込む可能性を検討する必要がある。制約に直接音声学的な機構を反映させる方法や,候補のセット全体を空間に見立てて,その振舞を確率的に扱う方法の一端も紹介した。
著者
北原 真冬 西川 賢哉 五十嵐 陽介 新谷 敬人 馬塚 れい子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.338, pp.133-136, 2008-12-02
参考文献数
11

理研母子会話コーパス,およびその収録に付随して行った読み上げ課題のデータを用いて,対乳児発話(IDS)と対成人発話(ADS)のピッチについて分析した.アクセントのピッチ,最高ピッチ,ピッチレンジなどにおいて,IDSはADSを上回る.また,アクセントの相対的位置が後方にずれる「おそさがり」の現象がIDSにおいてより大きいことが観察された.
著者
北原 真冬
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.63-69, 2008-04-30
著者
米山 聖子 北原 真冬
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.30-39, 2014-04-30

英語母音の持続時間が有声子音の前では無声子音の前よりも1.5倍ほど長いという現象は,一般に有声効果(voicing effect)と呼ばれ,英語特有の現象とされてきた。しかしながら,多くの実験結果から,有声効果は英語のみならず他言語にも見られることが明らかになってきた。例えば,有声効果は普遍的な音声メカニズムに起因するという考えがある一方で(Ko 2007),英語の1.5倍という効果の大きさには個別文法が関係しているという見方(House 1961)もある。本稿では,まず普遍的なメカニズムに起因するという仮説を検証するため,NTT乳幼児音声データベース(Amano,Kondo,Kato and Nakatani 2009)と日本語話し言葉コーパス(Maekawa 2003)を用いて幼児および成人の日本語話者における有声効果の有無を検証した。その上で,英語の大きな有声効果を日本人英語学習者が獲得可能であるかどうか,習熟度によって分けた2群の被験者の産出データから検討した。その結果,有声効果は普遍的・音声的な基盤を持ちながらも,言語個別の音韻特質によって抑制・促進されうる可能性が高いことを明らかにした。