著者
近藤 公久 神長 伸幸 馬塚 れい子 林 安紀子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.41-46, 2007-04-13
被引用文献数
1

本稿では,日本語の黙読過程におけるモーラ長の影響について検討するために行った眼球運動測定実験の結果を報告する.被験者が読んだ刺激文章は,それぞれ4行からなる24文章であった.刺激文章中に,解析対象とするターゲット語を各行の中央付近に配置した.ターゲット語は,2, 3, 4, 5モーラの漢字二文字単語であった.単語親密度,漢字の親密度や複雑度が,モーラ長条件間で均等となるようにターゲット語を選択した.各モーラ長のターゲット語が出現する行は刺激文間でカウンターバランスされた.被験者12名の読みの過程の眼球運動を記録した.その結果,モーラ長によるターゲット語を含む文節の初注視時間への有意な影響が確認された.また,ターゲット語(文節)のモーラ長は、ターゲット語の次の文節の初注視時間への有意な影響を与えていることが確認された.この結果は,音韻長や韻律的な特性が黙読時にも影響を及ぼしている証拠である.また,文の難易度および被験者の読みの速さによる違いについて考察した.
著者
窪薗 晴夫 田窪 行則 郡司 隆男 坂本 勉 久保 智之 馬塚 れい子 広瀬 友紀
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

主に日本語のプロソディー構造を特に統語構造・意味構造・情報構造とのインターフェースという観点から分析し、日本語諸方言におけるアクセントとイントネーションの構造、それらのプロソディー構造と統語構造、意味構造との関係を明らかにした。これらの成果は諸学会、研究会および年度末の公開ワークショップにて発表し、また研究成果報告書(冊子体およびPDF)に報告した。
著者
神長 伸幸 大石 衡聴 馬塚 れい子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.531-543, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

視覚文脈を見ながら文を理解する際の処理の逐次性を5歳・6歳児および成人を対象に検討した。実験では, 「緑の猫はどれ」のように形容詞と名詞の組み合わせを含む文を聴覚提示し, 視覚文脈から指示対象となる事物を選ぶよう被験者に教示した。視覚文脈は, 指示対象を形容詞または名詞の提示により特定できる場合があった。課題中の眼球運動測定データより指示対象となる事物の注視頻度と瞳孔径を求め, 視覚文脈と年齢群の効果を検討した。成人群では, 名詞で指示対象を特定できる場合より形容詞で特定できる場合で指示対象の注視頻度の上昇が早かった。しかし, 5・6歳児では, 視覚文脈の注視頻度への影響が統計的に有意でなかった。瞳孔径を指標とすると, 6歳児は名詞で指示対象を特定できる場合に比べて形容詞で特定できる場合に瞳孔径の拡張が早かった。成人では, 名詞で特定できる場合に形容詞で特定できる場合よりも瞳孔径の拡張が大きい傾向が見られた。5歳児は視覚文脈の効果が瞳孔径に現れなかった。これらの結果より, 少なくとも6歳以降は視覚文脈に合わせた形で指示対象を逐次的に特定できると考えられる。ただし, 幼児は眼球運動制御が未熟で, 注視頻度のみから文理解の逐次性を安定的に検出するのは難しく, 瞳孔径が補完的な指標となり得ることが示唆された。
著者
北原 真冬 西川 賢哉 五十嵐 陽介 新谷 敬人 馬塚 れい子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.338, pp.133-136, 2008-12-02
参考文献数
11

理研母子会話コーパス,およびその収録に付随して行った読み上げ課題のデータを用いて,対乳児発話(IDS)と対成人発話(ADS)のピッチについて分析した.アクセントのピッチ,最高ピッチ,ピッチレンジなどにおいて,IDSはADSを上回る.また,アクセントの相対的位置が後方にずれる「おそさがり」の現象がIDSにおいてより大きいことが観察された.
著者
神長 伸幸 大石 衡聴 馬塚 れい子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.531-543, 2016
被引用文献数
3

視覚文脈を見ながら文を理解する際の処理の逐次性を5歳・6歳児および成人を対象に検討した。実験では, 「緑の猫はどれ」のように形容詞と名詞の組み合わせを含む文を聴覚提示し, 視覚文脈から指示対象となる事物を選ぶよう被験者に教示した。視覚文脈は, 指示対象を形容詞または名詞の提示により特定できる場合があった。課題中の眼球運動測定データより指示対象となる事物の注視頻度と瞳孔径を求め, 視覚文脈と年齢群の効果を検討した。成人群では, 名詞で指示対象を特定できる場合より形容詞で特定できる場合で指示対象の注視頻度の上昇が早かった。しかし, 5・6歳児では, 視覚文脈の注視頻度への影響が統計的に有意でなかった。瞳孔径を指標とすると, 6歳児は名詞で指示対象を特定できる場合に比べて形容詞で特定できる場合に瞳孔径の拡張が早かった。成人では, 名詞で特定できる場合に形容詞で特定できる場合よりも瞳孔径の拡張が大きい傾向が見られた。5歳児は視覚文脈の効果が瞳孔径に現れなかった。これらの結果より, 少なくとも6歳以降は視覚文脈に合わせた形で指示対象を逐次的に特定できると考えられる。ただし, 幼児は眼球運動制御が未熟で, 注視頻度のみから文理解の逐次性を安定的に検出するのは難しく, 瞳孔径が補完的な指標となり得ることが示唆された。
著者
五十嵐 陽介 馬塚 れい子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.443, pp.31-35, 2006-12-14
被引用文献数
2

乳幼児は母親や周囲の人間の話し言葉を聞くことにより言語を獲得する。言語獲得の入力となるこのような話し言葉は、「マザリーズ」(motherese)あるいは"Infant-Directed Speech"(IDS)と呼ばれる。IDSは大人に向けて話される言葉と異なることが知られているが、言語発達の研究のためには、IDSの性質を理解することが不可欠となる。本講演では、我々が言語発達の研究目的で構築した『理研日本語母子会話コーパス』を紹介する。この音声データベースは、母親22人による自分の子供(17〜24ヶ月)に向けた発話、および大人に向けた発話を格納している。このコーパスは、約14時間の音声信号とともに、転記テキスト、分節音情報、形態論情報、韻律情報を検索可能な形で与えている。講演の最後では、コーパス使用法の例としてIDSの発話速度の分析結果を示す。