著者
塩川 幸子 北村 久美子 藤井 智子 上田 敏彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.705-714, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的 本研究は,青年期にある広汎性発達障害を持つ本人・家族の生活面の困難さに対する保健師の支援プロセスを明らかにすることを目的とした。方法 対象は,保健師経験年数10年以上で,青年期の広汎性発達障害を持つ本人・家族の継続支援に携わる保健所保健師とした。保健師の支援事例は青年期にあり,ICD–10 の F84 広汎性発達障害と精神科医に診断された事例(疑い含む)とした。半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M–GTA)を用いて分析した。結果 対象者は女性10人で保健師経験年数10~28年であり,保健師の支援事例は10事例,年齢22~37歳であった。分析の結果,38概念と14カテゴリーが生成された。青年期の広汎性発達障害を持つ本人・家族への保健師の支援プロセスは【困っていることに沿って一緒に考える】ことから始まっていた。【信用を生み出す】なかで,【生活面の困難さと本人の持つ特徴の影響を照らし合わせる】と同時に【本人の特徴理解】,【見立ての難しさと向き合う】ことを繰り返し【ふみこむタイミングや介入の判断】を行っていた。また,保健師は【地域の中でその人らしく生活できることを目指す】という目標に向かい,【わかりやすいコミュニケーションの工夫による対話の促進】を行いながら,【本人の特徴理解】をさらに深め,アセスメントと支援を連動していた。さらに,【自己理解の促し】から【自己決定・対処行動のサポート】へとつなげ,【地域資源の活用・開発】や【困っていることに沿った連携・調整】により支援を展開するとともに,【生活しやすい地域づくり】を目指し,継続支援を行っていた。結論 保健師は,支援プロセスにおいて,広汎性発達障害を持つ人の特徴を見極め,信頼関係を重視しながら,わかりやすいコミュニケーションを工夫した生活支援や,関係者と連携して生活しやすい地域づくりを継続的に行っていた。保健師の役割として,生活面の多様な問題に対し,その人の特徴に合わせた対応策を共に考えて工夫するとともに,ライフステージに応じた本人・家族を支えるネットワークや地域全体の支援体制づくりを推進するプロセス全体を動かしていくことの必要性が示唆された。
著者
吉田 純一 北村 久美子 箭内 公一 安河内 淑子 石内 愛美
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.69, 2016

<p>【はじめに】</p><p>日本においては、障がい者を取り巻く環境が急速に変化してきている。粕屋町では「障がい者が、安心して共に暮らせるやさしいまち」を基本理念とする障害者計画を策定しており、関係機関と行政が一体となって連携し、障害福祉計画推進協議会(以下、推進協)が中心となり計画内容を推進している。今回、地域住民の障がいや障がい者に対する理解を確認するためアンケートを実施した。アンケート結果から地域の方の声を聴き、今後の推進協の取り組みについて考察したので報告する。</p><p>【方法】</p><p>人権週間および障がい者週間である平成27年12月6日に開催された粕屋町介護福祉課主催障がい者啓発事業「人権を尊重する町民のつどい」にてアンケートを実施。参加者のうち244名よりアンケートの記載をいただいた。なお、アンケート実施に際し、趣旨、内容、結果の取り扱いについて書類を用いて説明し同意を得た。</p><p>【結果】</p><p>アンケート記載者244名(男性140名、女性99名、無回答5名)の年齢は、~20歳代11.1%、30~40歳代23.4%、50歳~60歳代47.1%、70歳~80歳代15.9%、無回答2.5%であった。設問1「日頃障がいをお持ちの方に接する機会はありますか?」に対し、はい50.8%、いいえ45.9%、無回答3.3%となった。設問2「粕屋町は障がい者が安心して共に暮らせるやさしいまちだと思いますか?」に対し、はい26.6%、いいえ11.1%、わからない59.8%、無回答2.5%という結果となった。設問3自由記載欄では、「町内の小学生と障害施設児童との交流の場を作り、子供たちの心を育てることもよいのでは」や「町民運動会等の町の行事で啓発をもっと行ってみては」など様々な意見をいただいた。</p><p>【考察】</p><p>年齢別でみると、参加者の約半数が50歳から60代で20歳代以下の参加状況が特に低い結果となった。このことから小・中学校等の教育機関と連携をとり、若い世代に対する啓発活動をより行っていく必要があると考えられる。設問1に対し障がい者と接する機会があると答えた方は全体の約半数であった。しかし、参加者には障害福祉関係の仕事に従事している方も多く、地域住民が障がい者と接している機会はより低いと考えられる。また、設問3自由記載欄の意見も踏まえると、障がい者の理解と交流の推進のためにも障がい者団体等と協力し、交流の場を確保していく必要があるといえる。設問2に対し「はい」と回答したのは全体の1/4程度の26.6%であった。この結果が示すように「障がい者が安心して共に暮らせるやさしいまち」とはまだ言い難い現状であり、推進協としても今後さらなる取り組みを行っていくべきであると考えられる。</p><p>【まとめ】</p><p>推進協の取り組みとしては、現在の問題点を把握した上で、教育機関や関連団体との連携が重要となってくるといえる。今後は、若い世代への啓発活動や障がい者との交流の場の充実など、より地域に密着した活動を行っていき、今よりも障がい者が安心して共に暮らせるやさしいまちを目指していきたいと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>アンケート実施に際し、趣旨、内容、結果の取り扱いについて書類を用いて説明し同意を得た。</p>
著者
野口 美和子 大湾 明美 石垣 和子 北村 久美子 山崎 不二子 植田 悠紀子
出版者
沖縄県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、島嶼環境を活かし「島嶼から学ぶ」島嶼看護学教育の看護学士課程への導入促進に資することであった。島嶼看護学教育の効果は、学生、教員、地域の専門職において"島嶼での理解の深まり""島嶼看護の魅力と理解""学習力・教育力の向上""看護実践力・地域力への貢献"があった。課題は、"島嶼での学びの意義"を多くの大学が挙げていた。その解決に向け島嶼看護学教育内容を体系化する必要性が提言された。