著者
入江 智也 横光 健吾 北田 隆義 中江 重孝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.163-174, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本報告は、抑うつ気分を訴え来院した32歳男性に対し、医療機関においてアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)に基づく介入を実施した症例報告である。過去の出来事に対する後悔や将来の悲観に伴い、機能的な活動が制限されていると考えられたため、マインドフルネスを中心としたトレーニングを行った。しかしながら、突発的なストレッサーに伴い、希死念慮を含む抑うつ症状の悪化が認められたため、薬物療法を含む希死念慮に対する介入を行った。このことから、不快な私的体験のコントロール・アジェンダが維持または強化されている可能性が考えられたため、改めて創造的絶望のプロセスを実施したうえで価値のワークの介入を行った。その結果、再就職をはじめとした活動レパートリの増加が認められ、結果として症状の緩和が認められた。本事例から、医療機関においてACTを適用するための必要条件について考察する。
著者
北田 隆
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.7-16, 1981-08-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究の主目的は, Deci (1975) とRoss (1976) の両仮説を検討することを通じて, 成績に基づく報酬が内発的動機づけに及ぼす効果に関する機制を明らかにすることにある.54名の女子大学生が, 2つの独立変数より成る6つの条件に, 各々9名ずつ無作為に割り当てられた. 独立変数は, 報酬 (成績に基づく報酬と無報酬条件) と成績 (高成績, 低成績, そして統制条件) であり, 2×3の要因配置の実験計画がとられた. 成績の水準は, 課題に対する被験者の能力に関する偽のフィードバックを与えることによって操作された.各被験者は, 上記6条件のいずれかの条件の下で, 課題として射撃ゲーム (T.V. ゲームの一種) を120回遂行した. 続いて, 従属変数として, 課題遂行に対する楽しさや興味等の評価と, 8分間の自由選択時間 (無報酬事態) に再びゲームに取り組まれる持続性とが測定された.主な実験結果は次のようであった.(a) 統制条件において, 報酬は内発的動機づけに影響を及ぼさなかった.(b) 高成績, 低成績の両条件において, 報酬は内発的動機づけの水準を低下させた.(c) 無報酬条件において, 高成績と低成績の両条件における内発的動機づけは, 統制条件のそれに比較して, 増大を示した.(d) 上記の効果は, 課題評価においてはみられず, 持続性においてのみみられた. また, 両従属変数の間には, 全く相関が認められなかった.(e) 更に, 上記の効果は, 実験試行時の疲労や飽和によるものでないことが明らかにされた.以上の結果に基づいて, 外因性報酬と成績が内発的動機づけに及ぼす効果に関する図式 (Fig. 1) が提案された. その図式は, 報酬が内発的動機づけに及ぼす効果を説明するのに際して, 成績の水準のみならず, その確実性をも重要な変数として考慮すべきことを主張するものである. 例えば, 克服不能な確実な失敗は, 内発的動機づけを損うが, 克服が期待される失敗は, むしろ, 内発的動機づけの水準を高めるであろう.
著者
北田 隆
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.104-112, 1974-02-15 (Released:2009-10-16)
参考文献数
3

スポンジゴムのセル構造に, その規則性を仮定することにより, その物理的な挙動の推察を試みた.また仮定したモデルのパラメータを実験によって推定し, スポンジの構造的な要素を知ろうと試みた.まず, そのモデルとしてスポンジのセルを球と考えたが, 実際の計算上ではそれを更に18面体とした.このモデルにおいて, 18面体の中央部に考えた正方形板6枚に, 圧縮荷重が作用した場合, 力方向に平行であるこの正方形板を圧縮すると, 板は四辺を横ぶれすることなく, 力方向にたわんで中央鶴が前後に曲って出てくる.この場合, 力方向に対し板の射影変位が生じる。このような仮定から正方形板の曲げは, 四辺単純支持による薄板の圧縮曲げに関する微分方程式を適用し, これを解いて応力を求めた.そして18面体の要素を採りいれた圧縮応力式を算出した.セル膜厚み等が均一なスポンジでは, 小変位のうちに座屈応力に達してしまうが, 現実のスポンジでは膜厚などの分布が広く存在しており, 弱い膜から座屈していき応力の軌跡が描かれる.