著者
山本 由弦 千代延 俊 神谷 奈々 濱田 洋平 斎藤 実篤
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.41-55, 2017-01-15 (Released:2017-04-18)
参考文献数
44
被引用文献数
2 1

三浦・房総半島では,世界的にも珍しい,ごく若く埋没深度の浅い付加体-被覆層システムが,後生の変成作用を経験しないまま陸上に露出している.本見学旅行では,房総半島に絞って見学する.沈み込み帯のごく浅部(1km程度)から中深部(2-4km)の付加体に発達するin-sequence thrust,付加体を不整合に覆う海溝斜面堆積物,これらを切るout-of-sequence thrust,それに前弧海盆堆積物を見学し,付加型沈み込み帯の基本システムを網羅する.
著者
佐藤 時幸 加藤 凌 千代延 俊
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.10, pp.621-633, 2021-10-15 (Released:2022-01-01)
参考文献数
43

新潟地域の石油坑井および地表から採取した七谷期試料の石灰質ナンノ化石調査結果は,中期中新世初期のNN5帯とNN6帯で新潟平野中央部が広大な非海域であったことを示唆する.NN5帯の石灰質ナンノ化石の産出量は,調査地域南東部から北東部の北蒲原に抜ける狭い海域の存在を示唆する.NN6帯では新潟平野中央部から東山一帯で海域が急激に縮小するが,東部の北蒲原へ抜ける海域は依然残る.しかし,寺泊期になるとこの海域も消滅し,新潟地域の古海洋環境がMid-Miocene Climatic Optimum後でNN5帯末の急激な寒冷化とそれによるユースタシー変動の影響を強く受けたことを示す.一方,中新世火山岩類を貯留岩とする油・ガス田の多くは石灰質ナンノ化石が産出せず,日本海形成時のリフティングと火山活動で形成された構造的高まりがそのまま油ガス田構造となったことを示す.
著者
寒河江 健一 ハンブレ マーク 小田原 啓 千代延 俊 佐藤 時幸 樺元 淳一 高柳 栄子 井龍 康文
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.117-136, 2012
被引用文献数
10

沖縄本島南部には,主に第四紀更新世のサンゴ礁複合体堆積物からなる琉球層群が広く分布する.本地域の琉球層群は,糸満層,那覇層,港川層よりなる.糸満層は本地域内に散点的に分布し,主に溶解・侵食を受け赤色化した現地性の皮殻状無節サンゴモに富む石灰岩からなり,層厚は2 mを超える.那覇層は糸満層と不整合ないし同時異相の関係にあり,その分布高度は約170 m,層厚は50 mに達する.本層は4つのユニットの累重体であり,ユニット1~3は浅海相であるサンゴ石灰岩から沖合相である石灰藻球・<i>Cycloclypeus-Operculina</i>・砕屑性石灰岩へと上方深海化する整合一連のシーケンスよりなり,ユニット4は沖合相のみから構成される.石灰質ナンノ化石生層序は,那覇層の堆積は1.392~1.706 Maに始まり,0.853 Ma以降まで継続したことを示す.港川層は港川と喜屋武岬西方に分布し,層厚は約20 mに及ぶが,分布標高は50mを超えない.本層の地質年代は不明である.
著者
小島 淳 北 逸郎 長谷川 英尚 千代延 俊 佐藤 時幸 林 辰弥
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.40, 2009

カリブ海バハマ沖の深海底コア(130万年-35万年前)の水銀含有量の測定を行った結果、その変動パターンはTOC量とともに下部透光帯種数の変動と相関することが明らかとなった。さらに、アラビア海オマーン沖の深海底コア(現在から50万年前)では、透光帯種数と比較して下部透光帯種数の割合が高い比較的成層化した期間において、湧昇強度が高い期間よりも堆積水銀量が高いことが明らかになった。このようなカリブ海バハマ沖とインド洋オマーン沖の深海底コアの水銀含有量変動のメカニズムと気候変動の関係等について報告する。
著者
松崎 哲也 小島 淳 北 逸郎 長谷川 英尚 千代延 俊 佐藤 時幸 林 辰弥
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.85, 2010

カリブ海バハマ沖と湧昇地域である東太平洋ペルー沖およびインド洋オマーン沖で掘削された第四紀堆積物コア中の石灰質ナンノ化石の上部透光帯種と下部透光帯種の相対量に連動した堆積有機物の窒素炭素同位体比及び水銀含有量の変動関係を検討した。バハマ沖では30‐130万年前の全期間で両同位体比と水銀含有量の変動領域に変化は見られない。一方、現在から50万年前までのペルー沖およびオマーン沖の堆積物からは、各々25万年前と20万年前を境に両同位体比と水銀含有量に明確な変化が観測された。これら両海域の結果は、25万年前と20万年前を境に透光帯の水塊構造変動を支配する海上風強度に大きな変化があったことを示唆している。このような堆積物コアの微化石量と同位体比および水銀量変動と気候変動との関係について発表する。
著者
佐藤 時幸 千代延 俊 ファリーダ メウティア
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.87-96, 2012
被引用文献数
1 6

第四紀の始まりの改定に関する諸問題を石灰質ナンノ化石層序の観点から総括した.微化石による地質年代決定精度の向上は,温暖化/寒冷化の問題を汎世界的な詳細な対比に基づいて議論することを可能にしたばかりでなく,寒冷化と第四紀の始まりに関する問題を極めて具体的に明らかにすることを可能にした.結果として,汎世界的な寒冷化は,その直前の温暖期に引き続く事件であり,いずれもパナマ地峡の成立による海洋システムの変化が"Climate Crash"を引き起こし,石灰質ナンノプランクトンや浮遊性有孔虫の地理分布の完成と現在の海洋システム,すなわち"Quaternary style Climate"が成立したことを示している.その観点からすると,第四紀の始まりを, Climate Crashに最も近いジェラシアン階基底で第四紀の始まりを定義することは,極めて妥当であると言える.