著者
小島 淳 北 逸郎 長谷川 英尚 千代延 俊 佐藤 時幸 林 辰弥
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.40, 2009

カリブ海バハマ沖の深海底コア(130万年-35万年前)の水銀含有量の測定を行った結果、その変動パターンはTOC量とともに下部透光帯種数の変動と相関することが明らかとなった。さらに、アラビア海オマーン沖の深海底コア(現在から50万年前)では、透光帯種数と比較して下部透光帯種数の割合が高い比較的成層化した期間において、湧昇強度が高い期間よりも堆積水銀量が高いことが明らかになった。このようなカリブ海バハマ沖とインド洋オマーン沖の深海底コアの水銀含有量変動のメカニズムと気候変動の関係等について報告する。
著者
南 浩紀 北 逸郎 長谷川 英尚 佐藤 時幸
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.64, 2007

湧昇流地域であるインド洋オマーン沖深海底コアの過去108万年間の有機窒素・炭素および無機炭素の同位体比を測定した。これらの同位体比と石灰質ナンノ化石量の変化には、共通した10万年の周期があることが明らかになった。これらの結果とすでに報告したバハマ沖など異なる湧昇流地域の深海底コアとの同様な同位体変動の関係を比較し、世界的な湧昇流地域の深海底コアから得られる古地球の環境変動について報告する。
著者
松崎 哲也 小島 淳 北 逸郎 長谷川 英尚 千代延 俊 佐藤 時幸 林 辰弥
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.85, 2010

カリブ海バハマ沖と湧昇地域である東太平洋ペルー沖およびインド洋オマーン沖で掘削された第四紀堆積物コア中の石灰質ナンノ化石の上部透光帯種と下部透光帯種の相対量に連動した堆積有機物の窒素炭素同位体比及び水銀含有量の変動関係を検討した。バハマ沖では30‐130万年前の全期間で両同位体比と水銀含有量の変動領域に変化は見られない。一方、現在から50万年前までのペルー沖およびオマーン沖の堆積物からは、各々25万年前と20万年前を境に両同位体比と水銀含有量に明確な変化が観測された。これら両海域の結果は、25万年前と20万年前を境に透光帯の水塊構造変動を支配する海上風強度に大きな変化があったことを示唆している。このような堆積物コアの微化石量と同位体比および水銀量変動と気候変動との関係について発表する。
著者
本多 朔郎 長尾 敬介 山元 正継 北 逸郎 高島 勲 秋林 智
出版者
秋田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

タイの地熱は、ヒマラヤ造山帯の後背地の安定地塊上に発達するもので、火山活動を伴っていない。しかし、高い地殻熱流量で特徴づけられ、沸騰泉を含む多数の温泉が認められる。そのような非火山性の地熱活動の熱源・湧出機構等を解明し、火山性地熱で発達した探査法の有効性を検証するため、以下のような項目の調査・研究を行い次のような成果を得た。(1)温泉・土壌ガスの分析ーー第1次の調査では、主要地熱地域について研究を行い、地熱貯留層に関連するとみられる断裂付近では、CO_2ガス中の^<13>C同位体の異常およびラドンガスの濃集が認められ、地下の高温を示すH_2ガスも一部の地域の温泉に伴ってみられるのみで、全体としては少なく、火山性地熱とは異なった傾向を示した。第2次の調査では、広域的なガス特性を求めるため、北部地域全体の約40ケ所の温泉付随ガスを採取し、He同位体比(^4He/^3He)を主体に検討した。分析は現在進行中であり、詳細な議論はできないが、深部断裂が発達する花崗岩体の周辺部でHe同位体比が高いことが確認され、同時にマントル物質の寄与の可能性が指摘された。(2)ガンマ-線による探査ーータイの地熱貯溜層を構成する花崗岩は放射性元素の含有量が高く、地熱流体の上昇通路となる断層の位置検出には最適である。また、典型的な岩相については、地下の地質を推定することもできた。(3)新期火山岩の解析ーー第四紀後期の玄武岩溶岩について、アルカリ元素等の分析を行い、マグマの形態、深さ等の情報の推定を行った。その結果、マグマは基本的に深部の独立したマガマ溜まりからもたらされており、熱源としての寄与はそれほど大きくないと推定された。しかし、層序的な解析から、年代値は既存の70万年(KーAr年代)より若く、年代的に熱の寄与を無視することはできないと思われる。(4)岩石中の放射性元素の分析ーー花崗岩を中心に約100個の試料を採取し、放射性元素(U,Th,K)の分析を行った。その結果、日本の花崗岩の5ー10倍という非常に高い含有量が記録され、その値から計算された発熱量として8ー18HGUが得られた。この値は、地下3ー5kmで300℃という高温を可能にするものである。(5)変質岩の年代測定ーー変質岩は石英脈、方解石脈を主体に年代測定を行い、現在の地熱徴侯地以外では数10ー100万年を超える古い年代が得られ、非火山性地熱が長期間継続することが確かめられた。(6)流体包有物の測定ーー年代測定を行ったのと同じ石英脈、方解石脈試料について測定を行い、ボ-リング・コアでは現在の地下温度とほぼ同じ値が得られた。(7)貯留層モデルの作成ーー最も開発の進んでいる地域について、坑井位置、水位、温度、圧力などのデ-タをもとに貯留層のコンピュ-タモデリングを行い、510,3510,8610年後の貯留層の状態を推定した。また、より広域的なモデル計算のため、可能な地下温度分布、岩石物性の変化等のデ-タを収集した。以上の結果および昭和63年度に実施した現地調査のデ-タを総括すれば、タイの地熱は主として放射性元素の崩壊熱による高温部を通過した水が熱の供給を受け、高温になったものと思われるが、He同位体や、若い玄武岩の存在から火成起源の熱の寄与もあるものと思われる。探査法については、非火山性地熱でも火山性地熱とほぼ同じ手法が利用できることが明らかとなったが、放射能探査が特に注目された。残された問題として、異常に高いHe同位体比の原因、流体包有物から予想される地下温度が地化学温度計で求められた温度より低いことなどがあるが、今回の調査が本研究の最後であり、今後の室内実験結果により最も適切な成因を提示したい。